裏切り

彼女と過ごす一時の鮮やかで甘い妄執ゆめ


グラジオラスよりも紅い石のネックレスが彼女の胸元を飾る、それが僕たちの秘密の合図。


こんなこといつまでも続かない。

続けられるわけがない。

そう解っているのに……。


君と逢う度に喉に絡む言葉……。


ーホカニ スキナヒトガ デキタンダ。


けれどいつも告げることもできずに、僕は君を抱きしめながら視界の端で、紅い合図を探してしまう。

紅い合図に惹かれてしまう。


ズルイ。

ズルイね。

ズルイよ。

ズルイんだ、僕は。


僕は彼女も君もほしい。

彼女は君に惹かれている僕が振り向けば満足。


まるでこどもだ。

君との想い合いにはまったく届かない、こどものわがまま。


けれど僕はつい願ってしまう。

このまま時間ときが止まればいい、と。


僕の心が君から離れたと、君に解ってしまわないように、と。

このまま、何もかもこのまま時間ときが過ぎればいい、と。


僕はなんて、……、なんて弱くてズルイ男なんだ……。

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