ながされる

貴方の誘いを

私はいつも断れずに受けてしまう。


理由は分かっている。


サビシイカラ……。


彼を失った悲しみに私の心がついていっていないのだもの。


だから、彼が抜けた穴を埋める何かが欲しい。


そんなもの見つかるはずはないのに。


彼の抜けた穴は、彼でしか埋められない。


解っていた。

そんなこと、解っているのに。


たかが失恋と人は言う。


けれど私には世界が終わったんじゃないかというほどの衝撃だった。


貴方と逢っていても

私の心を頭を占めるのは、彼のことばかり。


ーあぁ ここは彼と来た場所

ーあぁ ここで彼と話をしたな


この街には、そこらじゅうに彼の香りがあふれていて

私は知らず涙をこぼしてしまう。


今はそれでもいいと貴方は言ってくれる。


今はまだ彼の思い出に浸っていたいなんて

私のわがままを受け入れてくれる。


眼前に広がる一面のリコリス達が

それでも大丈夫だよなんて言ってくれてると思うのは


私の願望なのかもしれない……。


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