満腹の怪物
食べ過ぎで膨らんだお腹を見せて、ほら先輩、私たちの子がこの中にいるんですよ、って言ったら、先輩はぎょっと目を見開いて跳び上がった。
ただの冗談なのに先輩は大げさですね、と笑う私に、先輩は食べた物を全部吐き出せと言う。
先輩は女の子の吐瀉物が好きなのだろうか。そう訊ねそうになったのだけれど、どうやら違ったらしい。
先輩が言うには、私は自分のお弁当と一緒に、人のお腹の中で成長する怪物の種を食べてしまったのだそうだ。わけがわからなかった。
けれど、それは本当のことらしい。お腹の中で、何かが蠢いていた。それを先輩に伝えると、怪物は半日で成長しきるのだと教えてくれた。下剤や、強い吐き気を与える薬を渡される。運がよければ、これで怪物を追い出せるかもしれないらしい。
しかし怪物は、嘔吐にも排泄にも耐えきった。時間だけがどんどん消費されていく。タイムオーバーだ。どうすることもできなかった。
先輩からローションを渡され、元に戻るといいなと言われる。最低だ。
生まれてきたそれを見せて、わたしたちの子ですよと言うと、先輩は頬を引き攣らせて、責任は取ると宣った。
後輩短編集 とらたぬ @tora_ta_nuuun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。後輩短編集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます