満腹の怪物

 食べ過ぎで膨らんだお腹を見せて、ほら先輩、私たちの子がこの中にいるんですよ、って言ったら、先輩はぎょっと目を見開いて跳び上がった。

 ただの冗談なのに先輩は大げさですね、と笑う私に、先輩は食べた物を全部吐き出せと言う。

 先輩は女の子の吐瀉物が好きなのだろうか。そう訊ねそうになったのだけれど、どうやら違ったらしい。

 先輩が言うには、私は自分のお弁当と一緒に、人のお腹の中で成長する怪物の種を食べてしまったのだそうだ。わけがわからなかった。

 けれど、それは本当のことらしい。お腹の中で、何かが蠢いていた。それを先輩に伝えると、怪物は半日で成長しきるのだと教えてくれた。下剤や、強い吐き気を与える薬を渡される。運がよければ、これで怪物を追い出せるかもしれないらしい。

 しかし怪物は、嘔吐にも排泄にも耐えきった。時間だけがどんどん消費されていく。タイムオーバーだ。どうすることもできなかった。

 先輩からローションを渡され、元に戻るといいなと言われる。最低だ。

 生まれてきたそれを見せて、わたしたちの子ですよと言うと、先輩は頬を引き攣らせて、責任は取ると宣った。

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後輩短編集 とらたぬ @tora_ta_nuuun

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