液状生物

 猫のような生物がみゃーと鳴くと、そいつは次の瞬間、水溜りになっていた。

「なんなんですか、あれは」

 驚きつつそう訊ねると、先輩はくつくつと笑って、そいつは液状猫、ウォーターキャットとも呼ばれるやつさ、と教えてくれた。あまりにもあんまりなネーミングセンスに、ああこれを名付けたのは先輩なのだろうな、と思った。

 先輩の研究所には、他にも色んな生き物がいた。

 液状になる犬や液状になる鳥、液状になる馬や液状になる牛なんかだ。どいつもこいつも液状である。液状生物しかいないのだろうか。

「こいつらは何を食べるんですか」

 訊くと、先輩は愉快げに、水だけさ、楽でいいだろう、と肩を揺らした。何がそんなに面白いのだろう。

「まあ何でもいいですけど、先輩、お腹が空きました。ご飯食べましょうよ」

 直後、わたしは液状になっていた。先輩はそんなわたしを見下ろして、液状生物はお腹が減ると、形を保てなくなるのさ、と笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る