寝たふりで先輩を誘惑する後輩VSタオルケットをかけてあげる思春期の先輩②
2.寝たふりで先輩を誘惑する後輩の話
夏休みも終わりの足音が聞こえ始めた8月25日。
愛しき先輩の後輩であるところのわたしは、課題が終わらないという建前で先輩の家に上がりこんだ。
とある作戦を実行するためだ。
名付けて、「先輩の性的欲求大爆発作戦」である。ネーミングセンスについては触れないこととする。
何故このような計画を立てるに至ったか、それを語るには、4ヶ月前のとある出来事を知ってもらう必要がある。
それは入学式の日のことである。
わたしは高校入学を機に、そこそこの田舎からそこそこの都会へと引っ越し、予てより親交のあった先輩が一人暮らしをしているというアパートを訪れた。
ちょっとしたご挨拶と、義母さんからの預かりものを先輩に渡すためだ。あわよくば告白しようなんて考えもあった。
高校に受かったら告白しようと決めていたのだが、よくよく考えてみればそうする機会などあるわけもなく。
そのせいか、早くこの想いをブチまけたいと思うようになり、この日は、もしいい感じの雰囲気になったら告白してやるぞ、と意気込んでいた。
そしてその時は訪れた。
なんか、いけそう。そう感じたわたしは、先輩に想いを伝えた。その結果、わたしは先輩とお付き合いをすることになった。
しかし、このときのわたしは先輩を甘く見ていた。
先輩はおかしかった。
告白したときの余裕そうな態度から、そういう欲求が薄そうな気はしていた。だけどここまでとは思わなかった。
先輩はわたしに対して、全く性的な欲求をぶつけてくれないのだ!
「おかしいでしょう⁉︎ 普通、高校生の男なんて毎日凄まじい性欲を持て余して一人でもんもんとしながらしこしこしてる、そういうものですよね⁉︎ なんならちょっとアブノーマルなプレイを妄想したり‼︎ なのになぜ⁉︎ どうして先輩は何もしてこない上にシたそうな素振りも見せないの⁉︎」
先輩の枯れっぷりは、わたしが思わずそう叫んだほどである。無論
ともかく、先輩はかなり枯れていた。
そんなわけで、わたしはこの『先輩の性的欲求大爆発作戦』を開始した。
作戦の第一段階として、わたしはまず、先輩の家の冷蔵庫に、精力剤を混ぜたアイスコーヒーを仕込んだ。
次に、事あるごとに欠伸をし、遅々として課題が進まない様子と併せて、さも眠気のせいで勉強が進まないかのように演出した。
そして今。三時間ほど経ち、作戦は第三段階へと移る。
「せんぱい、喉乾きませんか?」
わたしは課題に取り組みながら、眠そうな声を意識して、遠回しな要求をする。
ついでに瞼も落ちそうな風にして、眠気を演出。ここからが山場なので、まだまだ気が抜けない。
先輩はわたしを一瞥してため息を吐くと、キッチンに向かった。
その後ろ姿を薄目で眺めながら、わたしはカーペットの上に寝転がった。そして目を瞑る。
空寝。嘘寝。狸寝入り。言い方はいくつかあるが、ようは寝たふりである。
そして、この作戦においては、寝たふりが最も重要な要素となる。
作戦の名称は「先輩の性的欲求大爆発作戦」、その全容は名の通り、無防備に寝た──ふりをしている──わたしを、むらむらしてしまった先輩が襲うというもの。
もし寝たふりが下手だと、先輩に気づかれてしまい、手を出してくれないだろうから、なかなか難しい。
そうこうしていると足音が近づいてきた。
(きたっ!)
わたしは小さな寝息を立てながら眠っている演技をしつつ、先輩を待った。
たぶん5分くらい待った。しかし先輩は何もしてこない。チクタクと時計の針の音だけが、静かな空間に響く。
それから更に5分。未だ先輩は動かない。
しかし、視線だけは感じるのだ。
舐め回すような、そんな視線。
嬉しいやら緊張するやらで、汗や汁が出る。
(やっぱり先輩も男ですね!)
勝った、と。
この分なら作戦は上手くいくだろう、と。
そう、思った。
だが甘かった。わたしは先輩を舐めていた。
先輩があまりにも何もしてこないので、寝返りを打つふりや、暑そうにして服を脱ごうとするふりをし始めたころだ。
先輩は音がするほどの勢いでブンブンと首を左右に振り、立ち上がったかと思えば、その足で部屋を出ていった。
(え……?)
思わず顔を上げて、開け放たれたドアを眺めた。ドアの先には先輩の寝室と、トイレ、それから浴室しかない。
まさか一人で抜く気だろうか。
(……こうなったら)
足音が戻ってくる。
わたしは元の体勢に戻りながら、とある決心をした。自ら脱いでいく決心である。
先輩がわたしの隣に立ったタイミングを見計らい、暑いし苦しかった風を装って、ホットパンツ のボタンを外した。
恐らく先輩は、あらかじめ開けておいたファスナーの隙間から見えるショーツに、目が釘付けになっていることだろう。
先輩の反応を妄想していると、立て続けにティッシュを出す音がした。
(それ以外に音がなかったから……鼻血ですか?)
顔を真っ赤にして鼻血を流す先輩の姿を想像すると、かわいくて、わたしまで鼻血を噴きそうになる。
先輩の視線が、ふとももへと移る。
それから胸へ、そして肩へ。
先輩の舐め回すような視線は、わたしを捉えて離さない。
「ひもっ⁉︎」
突然、先輩が消えそうな声で叫んだ。
少し驚いたけれど、想定内だ。
今頃になって気づいたのであろう。わたしがノーブラであるということに!
実は、ここへ来て最初にトイレを借り、ブラを外しておいたのだ。
先輩の視線が再び胸に戻る。
(ふふ、いいんですよ)
さあさあ触るが良い、こちらは準備万端である。
そんな気持ちで待ちつつ、わたしは薄目で先輩を眺めた。
膝立ちになった先輩は股間を膨らませ、その手を少しずつわたしの胸はと近づけていく。
(さあ来てください!)
先輩を押し倒したい気持ちを我慢し、ひたすら待つ。
(さあ!)
あと1センチ、それだけで指がわたしの胸の頂点に触れようかというところで、先輩は動きを止めた。
更に、床をごろごろと転がり回り始める。
(え、ちょ、なんでそこで止めちゃうんですか⁉︎)
困惑するわたしをよそに、先輩はぴたっと動きを止め、ある一点のみを凝視した。
方向からして、先輩が見ているのはわたしのバッグだ。確信的な推測は、恐らく正しい。
そこには、コンドームがあるはずで、先輩がしっかりと避妊をしてくれるように、敢えて見えやすくしておいたのだ。
先輩が立ち上がる。コンドームを取りに行くのだろう。
そう推測し、しかし、次の瞬間信じられないことが起こった。
ふぁさと、優しくタオルケットがかけられた。
意味がわからない。
わざと見えないようにして行為に及ぶのかとも思ったが、そうではなかった。
先輩はすぐ隣のソファーに横になった。
なぜ、なぜ、なぜ⁉︎ 頭の中をなぜが埋め尽くす。
それから10分ほど待っても先輩は何もしてこない。
わたしはおそるおそる起き上がり、涙を流しながら眠る先輩を見て、頭を抱えた。
どうしてなんですか、先輩……。
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