最終話

「かぁ様、かあ様、早く早く!」「お母様はやく!」


「そんなに急がなくても風は逃げたりしませんよ」


 賑やかな獣人王城の庭に響いて居るのはウィルとアリスの間に生まれた双子の王子と姫。


 王子はアリスの容姿を受け継ぎ美しい顔立ちでは有るが、優しさと強さをウィルから受け継いで居る。


 髪色はウィル、瞳の色はアリスを受け継いだ王子、一方の姫はウィルの瞳にアリスの髪色を受け継いだ可愛らしくもお転婆。


 今日はマシューの家に向かう事となって居るのだが、その前に遊びたいと言う我がままを聞いてあげて居るのだ。


「まったく、お転婆な姫と王子だな」「本当に」


「「とう様?かあ様?」」


「二人とも、お爺様が待って居るのですから、そんなに遊んでしまったら寝てお爺様に逢えなくなってしまうわよ?」


「「やだ~、じぃじに起きてあう~」」


 毎回、遊びすぎてマシューとの面会は「寝ぼけ眼」状態。


 今度こそは起きて・・・と思って居ても遊びたい欲には勝てず遊びまくって寝てしまう・・・その繰り返しだった。


「ほらほら、2人とも。かあ様の傍にいらっしゃいな。お爺様の屋敷に飛びますよ?」


「「は~い!」」


 アリスの転移魔法で移動する・・・これも習慣となってしまって居るが、警備の都合を考えれば楽では有る。


 命を狙われるとすれば移動中で、馬車に乗って居る時だろう。


 それを避けられ直接、屋敷の中から王城へ・・・と移動を繰り返されてしまえば、魔術を持って居るとしても難しいのは確実だった。



 * * * *


「「おじいさま~こんにちわ!」」


 今日は元気よく挨拶が出来てニコニコ顔のアリスとウィル。


 2人の可愛らしい曾孫が揺り椅子に座るマシューに抱き着いて行く。


「おやおや、今日は起きてくれて居たのだね?元気だのう」


「お義父とう様、お加減は如何いかがです?」


 最近は体調を崩す事も多くなったマシューは王家からの医者を派遣して居るものの、歩く事が難しいくらいに足が弱くなって居ると報告を受けて居た。


「あぁ、こんな可愛い曾孫を見れるとは思って居なかったからのう。長生きはするものだな」


 あれから5年・・・結婚して直ぐに双子を出産したアリスは、3人目を宿して居ると判明したばかり。


 双子のどちらかに魔術の才能が有るか・・・までは判明して居ないのだが、やはり2人の良い所を受け継いで居る王子と姫。


 王子は獣人の次代王となるべく学ぶ事となるのだが、姫は誰かに嫁いで行くのは決定して居る。


「アリス、姫にセレンティアを名乗らせるつもりなのか?」


 本来ならセレンティアを残す為に婿を取る予定では有った。


 だが、王家からの打診を反故になど、出来る筈もなくヴァカスとの婚約が成立してしまった。


 セレンティアが残らない形となってしまった事をアリスは気にして居たのだ。


「ウィルとも話し合いをしましたが、やはり娘にセレンティアを名乗って貰うつもりです。アイザック様も認めて下さいました」


 何とも心の広い王だろうか、と思うマシュー。


 成長したひまごの姿を見る事は叶わないと悟っては居るが、セレンティアが残る・・・そう思うだけでも嬉しかった。


「ありがとう・・・アリス」


 アリスとウィルの物語は次世代で有る姫と王子へと託され、何時までも幸福な時間を過ごして行ったのだった


~Fin

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