第43話:穏やかに過ぎる午後
ヴァカスから不当に国外追放されてしまってから2か月・・・。
断罪直後には考えられなかった穏やかな日差しがアリスを優しく包む。
「お嬢様、お茶になさいませ」
獣人の国へと嫁ぐ為に必要な事柄を文献で知識として取り入れ、王城に出向いては王妃教育を受ける忙しいアリスに、ルーカスが休むよう声を掛けた。
「そんなに時間が経過して居たのですね・・・ありがとうルーカス」
ふわり・・・と微笑む顔に悲壮感は綺麗に消え、信じられない程の幸福に包まれて嬉しそうだ。
「・・・
「ルーカス・・・。そうね、あの時ヴァカスさ・・・いえ、かの王子から断罪を言い渡され何が何だか判らぬまま、魔法封じの
マデリーンの魅了魔法に影響されたと言えど、アリスが国外追放されたと言う事への謝罪は、現時点で通達は無い。
だが、彼女が冤罪で有ったと言う事はウィルたちによって周知され「ヴァカスは馬鹿な事をしでかした」と知れ渡って居る。
勿論、王家の汚点とも言えるギルヴィアの暴走は伏せられた。
「ウィル様たちが動いて下さり、お嬢様を助けられたからこそ、マシュー様の養女となられ、ウィル様との婚約も成立・・・怒涛の2か月で御座いました」
ウィルたち王族が動いて居なければ後ろ手に枷をされたまま、魔物に襲われ食われて居たかも知れない。
例え逃げおおせても森の奥地へと間違って向かってしまえば、更なる危険が待って居た可能性すら有る。
可能性の全てをウィルたちによって防がれたとも言えるのだ。
「ふふふ・・・そうね。ウィル様たちには感謝してもし足りませんわ」
「アリス・・・」
マシューが寂しそうでは有るが、嬉しそうな顔で彼女に声を掛けた。
「お爺様、そんな寂しそうな顔をしては嫁ぐ事など出来ませんわ」
「判っておる・・・判っておるが、やはり寂しいのは仕方なかろう?我が娘は原因不明の病でアリスを残して死んでしまったのだ。その原因が、もしかしたらマデリーンがエヴァンスをけしかけた事による計画的殺害だった可能性が出て来たのだぞ」
「・・・お爺様・・・」
「今となっては後悔しか無いが、そなたが幸せに過ごせるのなら、この寂しさすら愛おしいわい」
マシューも自分の妻を病気で失い、アイリスだけが残され、侯爵だった身分は娘に託し伯爵として余生を過ごす筈だった。
アイリスとエヴァンスの間にアリスが生まれ、それはそれは嬉しかった。
だが、生まれて1週間もしないうちにエヴァンスは自宅に寄り着く事なく、外に愛人を囲った。
それだけでなく、娘すら生まれ溺愛して居ると噂が有った。
その娘に誘導されたと言えど、婚姻を結んだアイリスを亡き者にするなど、許せる筈もなく侯爵家から除籍し平民として追い出した。
今は愛人と何処に行ったのかすら判らないが、アリスの不幸さえ断ち切れるのなら、それで良かったと思って居るのだ。
「
ふわりと笑うマシューだが、曾孫と言われアリスは顔を真っ赤に染め、言葉を返す事は出来なかった
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