第36話:暴走の果て1

 父親が暴走し、結婚を望んで居たマデリーンが処分される事になった、としか知らされて居ないヴァカスは、自室で自問自答を繰り返して居た。


「何故マデリーンが処分される事になったのだ?マデリーンがアリスフィーヌに苛められて居た、と言うのは筈。それなのに私との婚姻は消え失せ、マデリーンは断罪。どうして・・・そうか!アリスフィーヌが魔術を使いのだな?!」


 とんでもない勘違いをして居るが、事実は「そうではない」。


 そもそもの原因はマデリーンが魅了の魔法で心を支配し、アリスが悪者で有ると「思い込まされた事」で有り、彼女アリスが何かをしたから断罪された訳では無い。


 歪んだ思いが変な方向へと向かい始めた事に、闇の精霊王は危機感を抱いた。


【(このまま放置してしまえば再びが断罪されかねぬ。こうなれば獣人の王子に残念劇を発動して貰う必要が出て来たな)】


 ヴァカスが暴走し、アリスを傷つける事を懸念して、風の精霊王へ念話を使い伝えた。


【(風の王よ、ヴァカスは我らの姫に再び断罪する可能性が出て来た)】


【(何とも愚かな王子だな。ならばウィル王子に最大級の残念劇を決行して貰うとしよう)】


 闇の精霊王から風の精霊王に伝えられた事柄は、アリスを通じてウィルへ・・・ウィルから人族を除いた全ての王族へと伝えられ、即座に動く事となり、当初の予定以上の「ざまぁ」が発動される事となった。



 * * * *


「誰かおるか?」


「ヴァカス様、何でしょうか」


「アリスフィーヌ嬢にの書状を送りたいのだ。便箋とペンを頼みたい」


「・・・お言葉では有りますがヴァカス様が国外追放と言う断罪を下されておられますが、それ以上の断罪をと望まれるのですか?」


 ヴァカスの部屋を守護する者知らせは届いて居なかった。


 あのパーティーでの出来事で止まって居るからこその言葉。


「我がを断罪へと追い詰めたのは間違いなくアリスフィーヌの仕業だ。愛しい者との婚姻を結べなくしたアリスフィーヌに断罪を下さねば気がすまぬ」


「・・・少々お待ち下さい」


 彼が持ち場を離れるように仕向けたヴァカスは、まんまと自室から抜け出す事に成功し、アリスフィーヌが何処に居るかも知らないまま行動しようとする。


 そこへアリスに断罪が下される可能性が有ると聞いた王子や王女たちが、ヴァカスが謹慎を受けて居る部屋へと通じる廊下に集結。


「・・・ヴァカス王子、何処へ行くのかな?君はを断罪した事で謹慎処分の真っ最中の筈だが?」


 アイザックが怒りを纏い、何時でも魔法で拘束できるよう全員が身構え、通路に立ちふさがって居た。


「アイザック王子、アリスフィーヌ嬢のは発見したと通告は有っただろうか」


 アリスがウィルたちに助け出されたと言う事伝えられて居ない。


 だからこそ、絶対零度の雰囲気を保ったまま対峙する事が出来ると言えよう

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