第31話:真実を知る3

 ここがゲーム世界では無い?信じられないと言いたそうな顔になるマデリーン。


「では問おう。君の言う『ゲーム世界』に出て来る人物の名を全員言って」


「え、えっとぉ・・・ヴァカス様、レンシル様、悪・・・アリスフィーヌ、ウィル、アイザックそれとルーカスです」


「はぁ・・・。ではジャン様、アイザック様、アルフレット王、アメリア様、マギー様、アイリス様、マシュー様の名前出て来ない?」


「出て・・・来ない・・・のに存在・・・する?どうして・・・」


「それは恐らくとしか言えぬが、ここは君の言う所のゲーム世界では無く、現実世界だからだと思う」


「現実・・・世界・・・?」


「食事は?怪我をした時に血は出なかった?君はアリスフィーヌ嬢からいじめを受け階段から落とされて居るのだろう?その時に痛みは?」


 言われてみて初めて気づいた。


 朝起きれば当然のように食事をした、寒さ熱さも感じて居る。


 針で指先を突いてしまった時に血も出た。


 階段から落とされる事は無く、落とされたと言ったのは、シナリオに描かれて居たから言っただけで、実際は落とされもして居ない。


「あ・・・あっ・・・ああっ!!ああ~~~~~っ!!」


 大混乱をきたしたのだろう。狂ったように叫び始めた。


「母上、ご覧のようにマデリーン嬢は別の記憶を持ち合わせて居たようです」


「ゲームと言ってましたか。彼女にはゲームと言う品か行事か判りませんが、そのような事がまかり通って居た場所から我が国に生誕した・・・と言う事かしら」


「恐らくなのでしょう。マギー様たちの名を出しませんでしたから、知識は別の世界から得ただけ。周辺地域や周辺人物を考えず行動した、と言う事なのでしょう」


「あの光の正体は・・・」


「彼女が言う『シナリオ通り』と言う事なのでしょう。魔法を発した事で断罪をまぬかれヴァカスと婚姻できる・・・とでも考えた故なのでしょうね」


「アリスフィーヌ様からの忠告通り、マデリーン嬢を断罪するしか有りませんわね」


「えぇ。彼女の知識が国をも潰す可能性を否定できません。それだけでは無く、思い出して居ない魔法すら有るでしょう」


 脱力してしまったマデリーンを厳重に魔法が封じられて居る牢へと連れて行く事にした。


「罪人となったマデリーンを魔法封じの牢屋へ連れて行って欲しい」


「「はっ」」


「国民への通達は・・・」


「しない方が良いかも知れません。不安をあおる真似など出来ないですから・・・」


 通達を出したとして誰が信じるだろう。


 1人の女性が過去の記憶を持ち、その知識を利用して王家に取り入り、王妃の座を狙ったなど、信じる訳が無い、レンシルの判断は正しいとしか言いようが無いだろう。


「それにしてもアリスフィーヌ様には感謝しなければならないですが、国外追放されて居るが故、直接的には感謝を伝えられません」


「風の精霊様が助力して下さったのは・・・」


ひとえに我が国が滅ばぬよう助力を惜しまなかった故かと存じます」


 対策を練らねば・・・と王妃とレンシルは話し合いを始めたが、危機的状況の回避に成功した事は間違いない

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