第28話:理解し難い現象2

 届いた魔道具を設置すると再生をさせてみる。


 そこに映し出されて居る光景は、アリスですらだった。


「これは・・・一体・・・」


「アリスフィーヌでも理解し難い現象なのか?!」


「お爺様、その通りに御座います。わたくしとて魔法を極めた者として、ありとあらゆる事柄を熟知して参ったと自負できますわ。ですが、この現象は現象に御座います」


 映像では有るが魔法が行使されて居る塔に鑑定を掛けて見たものの、「これ」と言った回答は表示のだ。


 書かれて居た内容としては「マデリーン」「幽閉の塔」「聖なる魔法」と言う情報。


 ただアリスに取って「聖なる魔法」は未知の事柄だった為、見た事が無いと言ったのだ。


「この事をレンシル様に伝えるしか無いな」


 アリスでも判らない現象だった、と伝えるのは忍びないのだが「これだ」と言う回答が無い限り、そうするしか他ならない。


「ただ情報だけでも宜しいのでしたら、お伝えする事は可能ですわ」


「情報?」「えぇ。画像にはマデリーン、幽閉の塔、聖なる魔法と出ましたの」


「そうか。マデリーンと言う女性が聖なる魔法とやらを魔法封じの塔で発した。ならば対策せねば国の危機となろうぞ」


「そうですわね」


 聞いたことの無い魔法「聖なる魔法」。


 それが「危険」なのか「安全」なのかすら判らないからこそ「危機」なのだ。


 マデリーンとしては「王太子妃」となり「王妃」となりたいが為に、塔から脱出する手段として魔法を発動させただけ。


 そんな思惑など知る訳もない。


「レンシル様に魔法の塔に居るマデリーン嬢を問い詰めるべきだとお伝え致しましょう。結果如何いかんによっては断罪やむなしと判断して頂きませんと・・・」


「確かに危機的状況を打破するにはマデリーンと言う小娘が例え危険で無いと判って居ても、知らぬ魔法を行使できると判明すれば国すら滅ぼし兼ねぬ力となりる。それは避けねばならぬ」


 こくり・・・と頷いたアリスは風の精霊に


【魔法封じの塔に居るマデリーン様を問い詰め、聖なる魔法を使ったと白状した場合は、1週間以内に断罪するようにレンシル様に伝えて下さいますか?】


の願い、承った】


 精霊の王の声が聞こえアリスは「ぎょっ」としたが、それ程に危険な魔法なのかもしれないと気を引き締める。


「それにしても、何故、彼女が危険なこんな魔法を使ったのか判りませんわね」


「そうだな。危険とされて居る魅了の魔法すら所持しておった。そんな危険な魔法と判っておって使い王子や令息たちを誘惑して来た理由が判らぬな」


 彼女が転生者でゲーム世界だと思い込んで実行して居るなど誰が気づくだろうか。


 マデリーンがヒロインでアリスが悪役令嬢だと思って居るのは本人のみ。


 気付いて無いからこそ危険な魔法すら行使してしまったのだ

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