第18話:マシュー邸へ出立
獣人の王城より豪勢な馬車が出立したのは、アース国へと緊急の書状を魔法で送り届けるより少し前。
王城玄関前での出来事。
* * * *
「アリスフィーヌ嬢・・・いや、いずれ我が娘となる故、アリスと呼び捨てても良いだろうか?」
「勿論で御座いますアルフレット様」
「父上?私より先に呼び捨てにしないで欲しいのですが?」
「うぐ・・・」
クスクス・・・と悲壮感、漂って居たアリスに笑顔が戻り、仲睦まじい親子の会話を微笑ましく見て居る。
「アリスフィーヌ嬢、父上が先に呼んでしまいましたが、私も良いでしょう?」
「えぇ、ウィル様」
「ウィル、アリスを無事に祖父宅へと護衛し送り届け、婚約の許諾を貰って来るのだぞ?」
「はい」
キリっ…と気を引き締めたウィルは、愛馬に騎乗すると、馬車を先導する為に出立の合図を送る。
「ウィルソン邸へ出立!!」「はっ!!」
少数では有るが精鋭部隊とも言える第一騎馬隊は、ゆっくりと馬車をウィルソン邸が有る東へと向かい始めた。
アース国では犯しても無い罪で魔法封じの
それをアース以外の王族が協力し救い出してくれ、獣人の王城で保護して貰え、更にはアースに一泡、吹かせる為に動いてくれ救い出してくれた。
一泡吹かせる方法としてアリスを無事に保護した事、ウィルソン家の養女になる事、そして最大の残念劇はウィルとの婚約。
送り届けた書簡には婚約式はおろか、結婚式にすら呼ばれる事が無い事が記されて居る。
これまで交換留学を行って居たが、それすら拒絶する方向に舵を切った。
「ウィル様・・・」
ガタゴト揺れる馬車では無いので会話も可能、アリスは疑問に思った事をウィルに聞く事とした。
「どうしたアリス」
「その・・・わたくしがウィル様と婚約したとして、反対される獣人の方々もいらっしゃるのでは無いでしょうか?」
「居たとしても王家が決めた事柄だ。覆されてしまうだけの情報は入って来ないだろう。だが、一番の理由はヴァカス王子は残念な頭なのに婚約者の令嬢は容姿端麗、頭脳明晰だと獣人の間で噂されて居るんだよ?」
「そ、そんなっ…過大評価ですわ」
移動の最中も不安で仕方ないアリスでは有るが、祖父の屋敷が見えて来ると、ようやく安心したように肩の力を抜いた。
(お爺様・・・どれほど心配して下さって居たか判らないですわね)
原因不明で死んでしまった娘が残した、忘れ形見のアリス。
エヴァンスは葬儀も埋葬も参加せず、喪が明けきれぬ前に後妻を連れ屋敷に戻って来ただけでなく、その後妻が生んだ子だけを娘として溺愛した。
ありとあらゆる手続きを整えアリスを迎え入れる玄関先には見知った顔も居るのだが、アリスには未だ目に出来る位置には居ない。
「マシュー様も待って居るだろう」
「お爺様が、どれだけ心配なさって居たか計り知れませんわね」
「書面で君と婚姻したいとも申し出て居るから俺の方が緊張して居るだろうな」
苦笑を漏らしながらもマシュー邸の玄関先へと馬車を誘導し、アリスをエスコートする為に馬から降りた
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