第7話:婚約破棄宣言

 アリス18の時、最大の悲劇に見舞われる事となるのだが、本人は気づかずヴァカスから


「卒業パーティー当日はエスコート出来ない。従者にでもエスコートして貰え」


 と言われ不思議には思ったが、忙しいのだろうな・・・としか考えなかった。


 卒業パーティーで着用するドレスは自分で用意する事も叶わなかったが、機転を利かせてくれた祖父から贈り物として届けられて居た。


「お爺様・・・このような素敵なドレスを有難う御座います・・・」


 本人に聞こえはしないのだが、感謝を述べるしかなかった。


 本来なら着替えは1人で出来ず侍女が手伝うのだが、彼女を手伝う侍女などおらず、彼女の手伝いをしてくれたのは妖精たち。


 アリスらしく美しくも気高い、王女のように仕立てて行く。


 卒業式と言う事で馬車を出してくれる事となって居るようで、ルーカスにエスコートして貰いながら乗り込み王城へと向かった。



 * * * *


 今日、この日にヴァカスとの正式な婚約を結ぶ事となって居たのだが、到着すると何故かヴァカスがマデリーンと同じ色のタイを着用し、マデリーンはヴァカスの色を着用して居る。


 その意味を知って居るからこそ戸惑った。


何故、互いの色を身に付けて居るのだろう?同じ色を纏うのは婚約者もしくは恋人だと宣言して居るのと同じなのに・・・と言う事実。


「アリスフィーヌ・セレンティア!貴様との婚約を破棄しマデリーンと新たに婚姻を結ぶ事とした!」


「・・・理由を・・・お聞かせ下さいませ」


 周囲に居る在校生も同級生も「婚約破棄」の「理由」に心当たりなど無かった。


「貴様はマデリーンを陰でののしり、苛めて居たそうだな」


「身に覚えは御座いません」


「それだけでなく、彼女を階段から突き落としたそうではないか!貴様のように心根の汚い令嬢はに相応しくない。よって国外追放処分とし、魔の森へ捨て置く事とする。引き立てよ!!」


「「「はっ!」」」


 即座に掛けよった魔法師長の次男によって、魔法封じのかせを後ろ手に嵌められ、引きずられるように広間から連れ出されて行く。


「お待ち下さい!わたくしには何の事やら判り兼ねます!わたくしは無実で御座いますヴァカス様っ!!」


 他種族の王子や王女、皇女たちの抗議の声すら聞く事なく、アリスは騎士団団長の次男に指示を受けた騎士たちの手によって、アリスは王城から連れ出されて行った。


 王様や王妃様そして第一王子の到着を待たずに・・・断罪したのだ。


 いち早くアリスを救出すべく動いたのはウィル。


 他種族の王子や王女、皇女も彼が抜けた事を知られぬよう取り測ってくれる。


 真っ先にヴァカスへ詰め寄ったのは天族のマギー。


「ヴァカス様、正気ですの?」


「マデリーンとの婚約そして婚姻か?当然ではないか。あの女は愛しいマデリーンをさげすんでおったのだぞ?に相応しく無いのは判り切っておるでは無いか」


「馬鹿なのですか?!アリスフィーヌ様は苛めなどしておりませんし、階段から突き落とした事すら有りませんわよ?」


「何を言う。マデリーンが被害に遭って居ると訴えて来たのだ。愛しい者の訴えを聞くのが恋人の使命で有ろう」


 何とかウィルが抜け出す事の手助けが出来たと同時に、王様たちが広間に入って来て何事かが起きた事を知った

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