第6話:崩れ行く日常


 * * * *


 アリスの生活が一変して1年・・・更なる悲劇の序章となったのは、義妹となったマデリーンが特別編入して来てからだ。


 魔法の才能が有ると言うで編入して来た彼女は、宰相の次男に媚びを売り、彼と婚約者の仲を引き裂いた。


 それだけに留まらず騎士団団長の次男も婚約破棄へと追い込み、魔法師長の次男すらも恋人の座を射止めた。


「ヴァカス様ぁ~!一緒にお昼しましょ♪」


 とうとう王子にも手を出しに掛かったか、と言うのが大半の生徒が抱いた感情。


 なびく訳が無い…と誰もが思って居た。


 だがマデリーンは違う、彼女はで主役だと居る為、恋愛に発展するフラグが立たないなら立てる・・・と言った具合に物語をハッピーエンドへと向かわせて居るのだ。


「アリスフィーヌ様、宜しいの?ヴァカス様はアリスフィーヌ様のご婚約者ですのに・・・」


「何度か説明したのですが、彼女は聞く耳を持って居ないようですわ」


「まぁ、鳥頭のような可哀そうな方でしたのね・・・」


 冷めた目つきで義妹となったマデリーンの背中を見つめるアリス。


 この行動が後に大打撃を生む事となろうとは、思っても居なかった。



 * * * *


「ヴァカス様、王都で流行りのスイーツを食べに行きませんか?」


「いい加減にしてくれ。何度も言うが私は・・・」


 その時、マデリーンの瞳がキラリと輝き「魅了の魔法」が王子に掛けられた事を告げる。


(よっしゃぁ!油断してくれたから掛ける事に成功したわ!)


「ヴァカス様・・・?」


 うるうる、と見上げる瞳を「愛おしい」と思ってしまうヴァカスは、かの如く、ぷっくりした唇に目を奪われる。


「あ、ああマデリーン・・・何と美しいのだろう」


(ふふふ・・・シナリオ通り。ヴァカス様はアタシを好きになる)


「まぁ、嘘でも嬉しいわ」


「う、そ・・・では・・・ない。事実、だ」


「でしたら一緒に街へ行きましょう?」


「そうだな・・・行こう」


 ヴァカスはマデリーンの支配下となってしまい、徐々に浸食されて行く。


「ヴァカス様、ヴァカス様の婚約者は・・・お姉さま・・・ですよね?」


「そうだが、どうしたのだ?」


「私、ヴァカス様を好きになってしまったの」


 ストーリー通り告白してみると、驚きの表情となった。


「・・・どうしたのだろうか、私もマデリーン嬢の事が気になって仕方ないのだ」


(魅了の魔法・・・最高っ!!これでヴァカス様との恋愛度がマックスになれば婚姻そしてアタシは王妃だわ!!)


「ヴァカス様・・・どうぞマデリーンと呼んで下さい」


「マデ、リーン」


 呼ぶつもりは毛頭ない筈なのに呼んでしまう自分の状態が信じられないのだが、目の前に居る女性がアリス以上に美しく見えて居る。


 拒絶できないからこそ魅了の魔法は危険な魔術とされた。


 それを容易く操れるマデリーンはゲーム世界では聖女とされて居る。


 ヴァカスは操られマデリーンの事信用しなくなって行くのだった。


 そう物語の進行とおりに・・・

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