第3話:ヒロイン

 アタシは家名の無い、ただのマデリーンとしてかあさまととうさまの間に生まれたが生活が楽では無かった。


 平民として生活して居たからでは有るが、とうさまは侯爵(らしい)。


 そこで思い出したのが前世の記憶・・・ここがアタシがヤリ込んで居た乙女ゲームの世界だと言う事。


 ならば、と手始めに父の本妻・・・つまりは悪役令嬢として描かれて居るアリスフィーヌの母を亡き者にと考え、父に食事の中に毒を盛る事を提案し、実行してくれたと知ったのはアタシが12の時だった。


 迎える準備をしてくれた父が、アタシと母を侯爵家に迎え入れてくれ、悪役令嬢が生活して居た場所へと追いやる事に成功。


 彼女の私物はアタシ用に作り替えられ贅沢三昧な日々が始まった。


(あと残されて居るイベントは・・・学園への入学そして、王子様との出会いね!)


 学園に入学できるのは13から17に掛けて。


 後1年、待たなければならないが今までの生活に苦労して来た分、今の生活を楽しむ余裕が有るのだと良い方向へと考えを変えた。


 ヒロインが使える魅了の魔法は、どんな鑑定士も見破れないようになって居た(勿論ゲーム内での話)。


 まさか、本当に見破れないと知ったのはアリスフィーヌが鑑定魔法をと気づいた時だった。


(ん?今・・・悪役令嬢から鑑定されたみたいだけど・・・気付かれてないみたい。って事は、ゲームそのまま見破る事が出来ない仕組みになってるのか!やりぃ!!)


 見破れないと判ってからは、積極的に魅了の魔法を使って行く事に決めた。


 父さんは完全に支配下に置く事が出来て居るだけでなく、本気で母さんにようだった。


 だからこそ、それほど掛ける必要は無かった。


 ただ1人、アタシの魔法が利かない人物が居るのはしゃくさわった。


 それが悪役令嬢付きの従者、ルーカスだ。


 何度も魅了を掛けても跳ね返されてしまい、支配下に置く事が出来なかった。


(何でだろ・・・。私の魔法が利かないのは、もしかして心底、疑って居る人には掛けられないって事かな?)


 最終的にそう判断を下すしかなかった。


「お父さん、アタシ新しいドレスが欲しいのぉ」


「おお!マデリーンはカワイイからな。沢山、似合うドレスが有るだろうな。早速、見積もろう」


「ありがとう!お父さん!!」


 ドレスを望めば侯爵が買えるギリギリのドレスが何着もクローゼットに並べられて行く。


 満足なんて出来る訳が無い。


 全てを自分の物にしなければ・・・とアリスの私物も恋人をも狙われる事になろうとは、この時、アリスは気づいて居なかった。


 彼女の味方は従者と王族。彼らの信頼は、マデリーンの魔法ですら看破できないのだ

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