第2話:別邸に追いやられたアリス
* * * *
翌日からアリスの生活は一変した。
寝起きするのは物置小屋として作られた別邸。
窓も少なく埃っぽい。荷物の移動が中心となってしまって居たので掃除は未だ。
「・・・これは掃除から始めなければならないわね・・・」
盛大に溜息を吐き出し、先ずは汚れない為の服を作らなければ・・・と使って居ない部屋からカーテンを引き剥がし簡易的に自分の体に合わせた簡素な服を縫って行く事にした。
そう。彼女の服はマデリーンの服として作り直され使われてしまい、ドレスは別宅へと追いやられた時に着用して居た1着だけなのだ。
「服を縫うのは後にしないと、動く度に
軽く
アリスは魔術を得意とする令嬢なのだ。
「換気も必要よね」
少ない窓を開け放って行き淀んだ空気を入れ替えて行く。
カーテンを服の形に切断し、ちくちく・・・と針を進めて行き、簡素な服(ワンピース風の服)に仕上げて行く。
控えめなノックが訪問者を知らせる。
コンコン・・・
「はい」
「お嬢様、お昼は
「・・・もしかしなくても、お父様は食事すら用意するおつもりが無いのですか?」
「その通りに・・・御座います」
「仕方ありませんわね。森の妖精に恵みを探して貰えないか頼んでみましょう」
彼女は魔術師で有りながらも妖精と契約をして居た。
森、風、闇、光、炎・・・あらゆる精霊や妖精が彼女の魔力に導かれ「お願い」と言う形で契約を結んだ。
【森の妖精よ私の願いを聞いてくれますか?】
【姫様の願いならば育てた花の蜜を下さるなら叶えますわ】
【では食せる森の恵みを集めて下さいますか?】
【お任せ下さい姫様】
妖精たちは何故かアリスのことを姫と呼び、敬意を表して居た。
「ルーカス、花の蜜をお願い」
「畏まりました」
部屋から出てしまえば何を言われるか判らない状態となってしまい、自分の育てた花々が咲く温室にさえ行く事が出来なくなった。
その為、ルーカスが所用をして居るように「見せかけて」温室の世話と花の調達を担ってくれる。
「少し様子を探るしかないかしら・・・」
急激に
【闇の精霊様、私の父を調べてくれませんか?】
とお願いしたのだ。
【任せて貰おう。対価は、そなたの
【えぇ。倒れない程度なら構わないわ】
彼女が持つ魔力は精霊たちに取って「万能薬」と言っても過言では無い程に濃いのだ。
室内の明かり対策も考えなければならないな・・・と思ったアリスは、ここが物置なら有る筈と探して見る事にしたのだ。
「2階の奥から確認して行って、生活に役立つ何かが有ると良いのだけれど・・・」
私物は父たち家族に全て奪われた。
ならば別館に有る品なら自由に使っても良い筈・・・そう考えてアリスはカンテラ(明かりの道具)やティーカップなどを探し、母と過ごした頃よりは不便になってしまうが、生活をする基盤を作りたいと動き始めたのだ
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