第2話 目覚め
(目が……見える……)
まるで、長い間眠っていたかのようにしばらくの間、視界がぼやけていた。次第に目が慣れてきて何があるのか認識出来るようになってきた。そこから見えることができるのは眩しいくらいの白色の天井と壁。
(何か騒がしいな。周りを確認して……)
「目を覚ましました! 今すぐ癒衛術士長様を!」
目を開けて状況を整理しようとしたら誰かが叫んだ。
「その前に心拍数とAGの確認を!」
「心拍数は正常。AGは130と基準値よりは高いものの予想の範囲内です!」
状況を整理しきれていない自分をよそに周りが騒がしくなる。
(なんだ? さっきよりも騒がしくなったな。心拍数って俺はいま病院のなかにいるのか?でもAGって? 医療の専門用語かなにかか?)
「了解した。癒衛術士長様に伝令を送る」
白衣をかけた男が言った。
(さっきから聞こえる癒衛術士長様って一体だれなんだ?)
混乱する俺をよそに白衣の男が右手を胸の高さまであげた。
「
白衣の男がそう唱えると一筋の光が彼の手から放たれた。
「癒衛術士長様に伝令を伝えた。もうまもなくこちらに向かってくる。中央を空けておけ」
(おいおい、今なんか唱えて光が出ていかなかったか?『めっせんじゃー』って何だよ?どうにかしてこの体を動かして状況を……)
そうして、体を動かそうとしたその時だった。光が部屋中に広がった。その光が消えると部屋の中央には一人の男が立っていた。
(え! 何で、急に人が? 少し目を離した隙にいつの間に。ここは一体何処なんだよ……)
その男は彼の顔を覗き込んだ。白い髪。先ほど見た人達とは違うもっと品が良さそうな白衣。そして、銀色の眼鏡をかけていた。
「ようやく目を覚ましたか。私の予想よりも5時間程遅れたな」
(誰なんだ、こいつは一体……)
「どうだ、私の事が分かるか?」
(自分の事を知っているようだな)
「その様子を見るとやはり記憶を失くしているようだな。そうだな、お前の名はなんだ?」
(名前…名前…?)
そこで初めて記憶を失っていることに気づいた。しかし、微かながらにどこかでその顔を見た記憶があった。
そんな様子を見ていたその男は口を開いた。
「やはり、そうか。だが、問題ない。今すぐ記憶を復元しよう」
そう言うとそのユナラスの名の男は右手を俺の頭に当てた。何か嫌な予感がした。
(何をする気だ!? ちょっと待ってくれ!! くそ、なんでだ、声が出ない……!)
「安心しろ。なに、すぐに終わるさ」
『
その瞬間、男の手から青い光が俺の頭にめがけて飛んできた。
その眩しさに耐えられなくて俺は目をつぶってしまった。
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