01st. Blackout/White doubt

intro

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「誰?」


 そう尋ねると、その人は優しく微笑んだ。

 とてもとても悲しそうな眼で、優しく微笑んでいた。


   ***


 美しさとは、全く以て罪である。


「ねえ、欲しい物が出来たの」


 豪勢なソファに寝そべった侭、そう言って美しい魔女は玩具に微笑を向けた。裸体の上から直接羽織ったバスローブがはだけ、柔らかな白に薄紅を浮かべ始めた水蜜桃の如し豊満な乳房が零れかけているが、気に留める様子はまるで無い。


「ソレはね、どの少女よりも可憐で、どの少年よりも凛々しくて。どんな構築式プログラムよりも無駄なく聡明、どんな宝石よりも煌めいていたわ。一目見たら忘れられない、血も凍る美しさ。ソレを“永遠”にして手に入れるの。ああ、なんて素敵なのかしら」


 血が滴りそうな程赤い唇から漏れる恍惚の溜息。魔女は「だから、」と言の葉を紡ぎながら緩慢と立ち上がり、玩具の左頬に右手を添える。そして視線を合わせ、美麗にも残虐に言葉を続けた。


「手に入れて、くれるわよね?」


 慈しむ様に頬を数度撫でた後、白く繊細な指先を頸動脈迄滑らせて爪を立てる。

「拒否しようったって、無駄よ? がある限り貴方は私から逃げられない。どんなに逃げても捕まえてあげる」


 穏やかな口調も艶やかな微笑みも、最早玩具に恐怖を与える要素でしかない。魔女は指の爪先から伝わる早鐘に酔いしれた侭、玩具の眼を覗き込み、


「それに、貴方が拒否した場合――解っているでしょう? だから、手に入れてくれる?」


 幼子を諭す様なその声に、震えながらも頷いた玩具のまなこが恐怖色に支配されたことを確認すると、魔女は――。


 その価値にして三百万円の首を持つ女は、満足そうに嗤った。

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