チートでゲームに転生? 笑わせんなよ、BANしてやる。
ちびまるフォイ
垢バーンだYO!!
いつも同じ日常を送っているはずの俺だったが、
どこから現れたトラックに乗った通り魔に刺されて死んだ。
目を覚ますと親の顔より見たあの風景。
「あなたは死んでしまいました。
しかし、あまりに気の毒なので第二の人生を差し上げます」
「はいよろこんで!」
居酒屋のホールスタッフよりも元気な返事で転生に成功。
次に目を開けたときには、どこまでも広がるゲームの世界。
「ああ、ここは俺が無課金で1000時間やりこんだ
『UAcont オンライン』じゃないか!! 懐かしい!」
かつて廃人の勢いでやっていた俺は無課金でありながらも
熟練プレイヤーたちを超える腕前でランキングに名前をはせ、
一部の界隈では有名なプレイヤーとなっていた。
またこの世界にたどり着けるなんて。
『ただ転生させるだけではあきたらないので、
あなたには特別な力(チート)を授けましょう』
「おおお!? なんだこれ!?」
アイテム欄には見たこともない装備がたくさん入り、
自分のステータスは見たこともない数値と装備のオンパレード。
特殊なスキルが並び、この先どうあがいても幸福しか見えてこない。
「よーーし、これからゲームの世界で幸せになってやる!!」
夢にまで見たハーレム生活を確信し、拳を上に振り上げた。そのときだっった。
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チートツールが検出されました。
ゲームから切断されました。
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「あれ?」
眼の前にはさっきまでの広大な風景ではなく、
殺風景なログインIDとパスワード入力画面が広がっていた。
何度、体が覚えているログイン情報を入力し直しても戻らない。
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このアカウントは削除されています。
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このアカウントは削除されています。
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このアカウントは削除されています。
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ーーーーーーーーーーー
このアカウントは削除されてるゆーてるやろ。
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このアカウントは削除されました。終わりです。
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「うそ……? え、俺のハーレム生活は?
チートの力を使って、涼しい顔で悪役を叩き潰す快感は?」
ーーーーーーーーーーー
このアカウントは削除されています。
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「うそだぁぁぁ!! こんな、こんな仕打ちがあってたまるかぁぁ!!」
何度も何度も入力して、確かめても表示は変わらない。
冷たく血が通っていないような文面が変わらず表示される。
『この声が聞こえますか……』
「その声は女神様! 見ていてくれたんですね!」
『なにか追加で手違いがあったようですね。
別の身体を用意しました。こちらで転生しましょう』
視界が光に包まれると、ふたたび風景は広大なフィールドに切り替わる。
一時はどうなるかと思ったがこうして第二の人生が始められたので問題ない。
「はぁ、危なかったぁ。ずっとあのままかと思った……」
『もとはといえば、私の手違いであなたの命を散らせてしまいましたから
そのお詫びをなんらかの形で提供するのは当然です』
「やっぱり優しいんですね」
『ええ女神ですから。それにちゃんとさっきと同じデータも準備していますよ』
「え」
ーーーーーーーーーーー
チートツールが検出されました。
ゲームから切断されました。
ーーーーーーーーーーー
ふたたび画面は静止画に戻った。
「何やってんだーー!! 見てるって言ってたよね!?
俺のこと、見てるって言っててこれかよ!!」
思いつく限りの罵倒を女神にぶつけたが、
気まずくなったのかもう答えることはなかった。
「ど、どうしよう……」
この状態でできることなんてなにもない。
いくら女神にチートだの能力だのを授けられたところで、
そもそもそれを発揮できる世界にログインできなければ話にならない。
第二の人生をこのログイン画面の静止画を見続けるだけになるのか。
そんなのはあんまりすぎる。
なんとか脱出できないかと静止画を細かく眺めると、
地獄に垂らされた蜘蛛の糸のように1筋の希望がみえた。
【 運営へのお問い合わせ 】
「これだ!! これしかない!!
今の俺の状況を話してアカBANを解除してもらおう!」
情け容赦無くアカBANするような冷徹人間でも、
涙を流し故郷の母を思い出すように心を込めて運営への問い合わせを行った。
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はじまして。お世話になっております。
実はこの度、ゲームにログインできなくて大変困っています。
私は現実世界で命を落としまして、このゲームの世界で
現実で失われた充実感を取り戻そうとしていた矢先のことでございます。
神はどうして二度も私に試練を課すのでしょう。
両親に愛され、真面目に勉強し、人の悪口を言わず
日々を必死に生きていたうえに事故死の挙げ句にアカBAN。
私には新しい人生を歩むこともできないのでしょうか。
どうか、どうかアカウントを復旧いただけないでしょうか。
私にはいくつもの娘がフォルダの中にいます。
私がゲームの世界で生きていることを知ればきっと喜んでくれるでしょう。
人は人を助けることができます。
手と手を取り合うために、人間の手は2つあるものだと思います。
二度とチートなどは使いません。課金もします。
毎日運営様の会社の方角にお祈りも捧げます。
どうか、どうかアカウントを戻し奉ってくださいませ。
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「送信」
これを読んだらどんなに心が冷え切っている人間でも
きっと気の毒になって俺のアカウントを復旧してくれるはずだ。
連絡はすぐに帰ってきた。
『送信エラー』
「話す気もないのかよ!!!」
運営へのお問い合わせなどと窓口を作っておいて、
その実まったく意見など聞く気がないのか。
完全に八方塞がり。もう誰にも助けてもらえない。
「ああ、チートなんて手を出さなければよかったのに……」
動きのないログイン画面を見て言葉を失った。
追い詰められた頭は、だいぶ昔の記憶を引っ張り出す。
「そういえば……ずっと昔にサブ垢作ってたな……!!」
かつて、ゲーム内で好きになった異性にブロックされてしまい
それでも諦めきれずにストーカー用のアカウントを作った。
結局、異性アカはゲームに来なくなってしまったが
そのときに作っていた監視用裏アカウントがまだ残っていたはず。
当時のIDとパスワードを必死に思い出して入力する。
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IDが違います
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「くそ! もう一度だ!」
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パスワードが違います
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「なんのまだまだ!!」
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IDとパスワードが違います
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「こんなところで、諦めてたまるかぁぁぁ!!」
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認証完了。
ゲームにログインします。
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「や、やった……!! ついにやったぞ!!」
これでついに第二の人生がはじめられる。
チートもない作りたての初期アカウント。
それでも、また新しい人生が行えることの喜びを噛みしめる。
どんなに困難な人生だって、あの静止画画面で閉じ込められるよりずっと良い。
ロードが終わると、真っ白な画面が目の前に広がった。
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ご利用のみなさまへ。
サービス提供開始から日々努力してまいりましたが、
これ以上お客様に満足いただけるサービスが提供できないと判断し
本ゲームのサービスを終了させていただくこととなりました。
サービス終了に際してお問い合わせ等の対応はできかねます。
また、不正なツールでのログインなどはお控えください。
またのご利用と、運営の次回作にご期待下さい。
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チートでゲームに転生? 笑わせんなよ、BANしてやる。 ちびまるフォイ @firestorage
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