本を手に取る時

 音楽の好みは中学生までに決まるというが、これは音楽に限らないだろう。今読んでいる小説や漫画も、中学生の頃ハマっていたものと同じ作者、とまでは言わないが、ジャンルであったり、根底のテーマが同じであったりと、どこか似通っている。

 特に熱心に追いかけていたのは、情熱のあった高校生の時か、余裕の出来た大学生の時であったが、その時期に手を出した色々な物は、すっかり抜け落ちてしまい、やはり中学生の時分に見つけた物が、残っている気がする。新たに手に取る時、どうしても見知ったものを選んでしまう。


 私は長い間、「好きな作家」というものが良く分からなかった。「好きな作品」は分かるが、一人の作家が生み出すものが、毎回好みという筈がない、というわけだ。だが今になって、少し理解できた気がする。要するに、あれこれ手を出すのが甚だ面倒になり、今までの経験から、まあ、この作者なら、六十点以下にはならないだろう、そのような気持ちから来ているのではないか。

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