第60話 『工場』 3
工場の中心部。
むかし、『ソイレントグリーン』という映画があった。
自然を破壊しつくし、食糧危機に陥った人類は、限られた権力者以外は、ソイレントグリーンという、固形食糧で、やっと命をつないでいた。
その、原料は、人間である。
やましんのこんな話より、ずっと面白い。
要は、つまり、基本は変わらないのだ。
ここは、表向きの老人ホームと、食糧製造施設、さらに、改造兵士製造施設が併設されている。
自ら最後を選んだ老人たちは(そうなるように仕組まれてはいるが。)、新鮮なまま、食糧になるか、人間ロボットになるかを、コンピューターに選別される。
ただし、この工場の、歪んだ支配者が、敢えて別の結論を出せば、話は変わることもあるらしい。
歪んだ支配者が行う、歪んだ復讐だ。
コースが決まれば、食糧コースは、またまたコンピューターさまにより、適したメニューに選別される。
缶詰か、様々な味付けしたレトルト加工食品か。
人間ロボットの仕様も、各種あるらしい。
それは、すでに、正常なあり方ではないが、ここでは、ひたすら、あたり前に進む。
いまは、その作業が中断されている。
ここの、マスターシェフが、拘束されたからだ。
副首相は、ぼくの横に立った。
『さっきの、電話ですが、首相が、あなた方を拘束し、料理するように、と、指示してきたのです。』
『ほう。』
『もちろん、仰せのままにとは、答えました。』
『で、しょうな。』
『しかし、補佐官と話し合いましたが、二人とも、気が向かない。』
『そりゃ、普通、気が向かないでしょう。』
『そう。だから、わたしは、寝返る。別に、何の要求もいたしません。わたしの選択は、誤りばかりだった。最後に、多少、修正したい。しかし、問題がある。首相は、あの、マッド・科学者に、連絡できないと、たぶん、気がつくでしょう。普段は任せきりなのに、そうした、タイミングは、外さない。だから、首相なわなけですな。いま、気がついたあたりだ。すると、どうするか。さっきのことがあるから、核弾頭をまた、撃ち込んでくるか? いや、たぶん、違う。首相は、改造終了した人間ロボットを、官邸からコントロール可能だと思います。
ほら。来た。』
まだまだ、長い長い廊下の向こうから、人間だとは、ちょっと思いにくいくらいに改造された、いかにも危なそうな兵士たちが、たくさん現れた。
『この、気の毒な兵士たちが、我々を捉えて、ラインに流すか、ぼくたちが、彼らを打ち据えるか。』
すると、わがボスが後ろに立っていた。
『わたくしたち、武器は持ってないですよ。たぶん、あなた以外は。』
『しかし、ここを攻撃させるのは、さすがに気が引けます。』
すると、宝田氏が、ちょっと気味が悪い感じで言った。
『ほほほ。みなさん、我らが首相の兵士たちを忘れてはなりません。ほら、来ました。』
そう、宝田氏が言うように、ぼくたちが入ってきた道筋を通って、洞窟内で見た、あのロボットたちが進撃してきていた。
『なるほど。そうなんですね。しかし、一時間以内に、結果がでない場合は、首相は、ここを、また、核弾頭で攻撃させるでしょう。こんどは、爆撃機かもしれないが、秘密兵器があるんだ、とか言っていましたから、なにか、すごいのが来るかもしれない。』
『爆撃機であれば、まだ、やり易いですよ。潜水艦から撃墜します。そんなこと、したくは、ないけど。』
『思いますに、それは、とても良くないです。泥沼化します。』
我がボスが意見を表明した。
しかし、そんなことは、お構いなしに、兵士たちは戦いを始めてしまった。
すると、
『こっちに。』
と、隣のボスが、見えていなかった扉を開けたので、ぼくらは、その場から、逃げた。
・・・・・・
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