第59話 『工場』 その2


 我々は、工場の奥に向かって進んだ。


 まるで、無限のような、無機質な廊下が続く。


 明かりは十分だが、窓は一切ないし、扉も見当たらない。


 『まあまあ、うっとうしい場所ですね。』


 我がボスが、嘆いた。


 『まさに。設計した人の顔が見たいものでしょう。』


 『建設産業省の担当者ですかな。』


 ぼくが尋ねた。


 だいたい、こうしたものは、そこで設計されるものだ。


 『まあ、実際は、例のひとです。間もなく会えますよ。』


 となりのボスが答えた。


 『この、壁の向こうはなんですか。』


 『工場の一部で、出荷前の最終チェック場とか、事務系の部屋とか。でも、中央の廊下からは入れないんです。必ず、入退場管理コーナーを通るようになってます。この道は、そこに行くだけが目的。』


 と、その時に、ぼくの通信機に連絡が来た。


 『空母「あおかぜ」が、瀬戸内に入った。大型輸送機2機もタカマツ空港に向かった。閉鎖指令を杖出首相に頼んで良いですか?』


 『もちろん。言わなくてもやると思うけどね。』


 となりのボスにも、同様の連絡が入ったようだ。


 『潰しにかかってきましたな。空港は閉鎖されるでしょうが、兵員はどこからでも揚がってきます。まだ、なんとか使える港は残ってますからな。多勢に無勢にはなるが、最終的には、ここを破壊できれば上出来ですか。』


 『いやいや、あなた、あまく見てもらっちゃ困る。ロボット兵を見たでしょう。あれが、サンプル。兵員は一万。しかも、毎日、50体は供給できる。教育は不要。武器も大量に、確保しましたよ。そのために、あたしがいたんだから。』


 宝田氏が自慢げに話した。


 『あなたの、潜水艦もいるんでしょうに。』


 と、追加したが。


 『まあ、いますよ。はっきり言って、現在世界にある潜水艦の中でも、最高のものです。』


 ぼくは、答えた。


 『おいくらでしたか? あ、そりゃ、秘密ですな。』


 『ぼくは、払ってないですよ。大山さんが作ってくれたから。』


 『なるほど。そこに、出てきましたか。』


 宝田氏が、感心したようにうなずいた。



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