第18話 『自決公社』 その5
大山先生がここにいるに違いない、というのには、ちゃんと理由がある。
たいへん、低次元で、失礼なお話しなのだが、ぼくはインタビューした際に、こっそり大山先生の大きなバッグの裏に、小さな発信機を付けた。
そんなもん、すぐみつかるだろうと思ったが、一方で先生ご自身が、あえては、剥がさないかもしれないと思った。
移動経路を記憶して、現在地を報告するだけのものである。
ぼくの親機が作動しない限り、送信はしない。
だから、電源は長持ちする。
ただ、あまり遠いと、もちろん逆に受信できないが、そこは予定の範囲である。
それで、3年くらいは作動するはずだ。
あまり、遠くには、届かない。
その信号が、ジャスト、『ここを』示している。
だから、先生がここににいるか、カバンだけがあるか、発信機だけがあるかの、どれかに違いない。
もっとも、可能性が高いのは、先生がここにいる、と言うことだ。
ただ、その示している位置は、どうやら外から見る限り『山』である。
洞窟にでも入って、すっかり籠っていて、修行生活なのかもしれないが、まあ、なんらかの収容施設があると考える方が自然だ。
ただ、問題はもちろん、ある。
ぼくが、先に『処理』されるという事態が起こると、お終いである。
それも、計算はしていた。
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新しい施設長は、到着し次第、全幹部を集めて、ミーティングを始めた。
彼女は(もとは、彼だったらしいが、今の社会はそこらあたりは気にしない。)、すでに全収容者のリストを確認していた。
『私は、この施設の動向を詳細に確認してきています。あまりに、動きが遅い。この先、大量の収容者を適切に扱わなければなりません。そこで、これから示す全員と、直に面談します。それで、その処遇に関する意見をあなた方に勧告します。絶対に従う必要はないが、十分考慮し、二日以内に結論を出しなさい。
なお、それ以外の収容者に関する指針も、再検討します。さっそく実行しなさい。
なお、諸君の勤務評定も見直しますが、その詳細は、後日発表します。』
幹部たちは、ざわついた。
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『大山先生も入ってるわね。』
リーダーは『企画室』の、小さな会議室に戻ってから言った。
『一切、手抜き、聖域なしですな。彼も入ってます。しかし、健康に入所して、一か月以内の処置はありえない。』
『いやあ、やる気ね。あいつの経歴、確認できた?』
『それが、謎が多いです。おそらく、『情報調査庁』の出身でしょう。ただ、そこも、後からなら、経歴だけは分かるはずですが、なあにも出て来ないところをみると、同じ『調査庁』でも、恐らく『第7科』でしょう。』
『存在しないはずの係か。』
『ええ。≪イヌのあな≫です。まあ、われわれも、大きく言えば、同じですがね。』
『品のない呼び方ね。』
『そりゃあ、やられる側からの呼び方だものですな。実際の呼称さえ、公開されないし。』
『存在しないのだもの。『幽霊機関』というのが、準公式名ね。』
『それも、あだ名ですよ。』
『まね。でも、もね、どうする積りなんだろう。ここを、廃止する気かな。』
『マネモネ・・・・ある程度、統合したい意向はありそうですな。しかも、秘密裏に。』
『ふうん・・・やっぱ、核が絡んでるかな。』
『それは、間違いなしですな。まあ、しかし、せいぜい10発くらいの核で、世界制覇は出来ないでしょう。』
『まあね。ただ、持ってる中身の問題がある。どやら、『コバルト爆弾』どころではない、真の『最終爆弾』があるのではないかとか。うそみたいな噂もある。それに、ほんとに、カメリカの再起が、遠からず来るのか。武力付きで。』
『そんなもん、役に立たへんでしょう。まあ、どうやらアジア連合も、動き始めてます。まだ、『気配』ですがね。核弾頭は、大方埋まってしまって、潜水艦は沈んで、みな、使えないとは言いますが。実際はどうなのか。わからないです。一方で伝説のネーモー提督の『海底王国』が、実在するとかも、あながち、嘘でもなさそうな。』
『つまり、政府は、とにかっく、なぜか、急いでるんだ。急ぐ理由がある。』
『ふん・・・大山先生がカギですね。なんとか、こっちに、はっきり、つけないと。』
『そうね。『悪も善もひとつなり。』だからな。』
『我らが、『偉大な首領』って、いるんですかね。やはり、大山先生では?』
『さあて。一部、宗教化し始めてるみたい。分断するかもしれない。それは、避けたいんだけどなあ。まあ、真のトップが誰かわからない組織なんて、我々、くらいよね。『連絡員』も、ほんとの姿は現さないし。』
『幽霊そのものなんですよ。』
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