第15話 『自決公社』その2

 『そもそも、不幸にして、現在若者である人たちが、老人に関してなにを、感じていると、あなた、思いますか? そりゃ、ぼくは、マスコミ界にいた。放送できないコメントは、山ほど来ていた。いや、ほとんどが、そうだった。彼らは、老人のために、自分達の稼ぎが、ほんの一部でも、回るなんて、許す気はない。むかしは、反論する哲学があり、多少の余裕が無いわけでもなかった。いまは、違う。多数決したら、60歳以上は、みな、死刑だ。言葉が悪ければ、安楽死かな。そうして、ついに、政府の中枢に彼らが入って来た。結果は、最初から明らかだったんですよ。だからね、あなたの、説明に驚いてはいないですよ。当然の帰結だからね。しかし、………』


『やはり、しかし、ですか?』


『あたりまえです。やすやす、殺られる気はないです。四国が、死国になってることは、ぼくには、想像がつきました。でも、やりかたは、さすがに、わからなかったです。まだ、わからないですが。途中で、降りたかたは、遺憾ながら、もう、生きてはいないのではないですか。他の人も、近く、そうなる?』


『確認はしておりませんが、そうだと、思います。ほかのかたも、半年は持たないです。』


『あなたは、反対派の、リーダーか、それに、準じるかたですか?』


『じつは、わたくしが、リーダーです。秘密です。』


『もちろん。で、あなたがたは、人間性とか、人道上、許せないから、ぼくを、引き入れたいのかな? それとも、自分達の主義のためですか。あなたは、まだ、若い。自分が、国を率いたい?』


『ぜんぶ、違うとは、言えないです。でも、 明らかに、人の道というものがあるなら、あると、思いますが、つまり、人間ならば、正しくないです。現在の政府は、あきらかに、間違っています。』


『そう。なら、協力しますよ。いま、人類が生き残るために、最善の方法は、老人を切り捨てることです。でないと、若い人たちも、生き残れないでしょう。そこからしたら、彼らは、まだ、不徹底であり、なまぬるいようだ。そこが、ぼくらの、狙い目ですよ。』


『つまり、……… 』


『方法は、ひとつしかないです。戦争です。四国の独立を宣言し、同時に、宣戦布告も、します。』


『それでは、皆殺しでしょう?』


『そうそう。しかし、ぼくは、ある、確かな情報を持っています。いや、実物を。四国内には、カメリカ国が隠した、核がある。この国から、一時撤退するときに、密かに、四国山脈の奥地に、隠したのです。弾頭の数もわかってます。10発です。メガトン級の、移動発射できる、ICBMが、3発あります。あと、小型の実用型が3発です。残り4発が、問題です。たぶん、中性子爆弾だとは、おもいますが。まあ、いくらか、はったりしても、無駄ではないかも。もしかしたら、おまけが、付いてるかもです。おそらく、いや、まず確実に、大型のコバルト爆弾が、複数、あると思います。隠した連中は、カルデラ爆発の餌食になったようですから、詳しくは、わからなかったんですよ。コバルト爆弾は、映画のように、地球が溶けたりはしないでしょうけど、ひどい汚染が長く続きます。ちょっと、確認が必要ですが。これで、戦います。もちろん、そんなもん、使いたくなんか、ないですよ。旧世代の遺物だし、非人道的の頂点だもの。使わずに、済ませたい。でも、やむを得ないかも。』


『あなたは、優しい、おかおして、実は、おそろしや。・・・・・』


『ははは。まあ、連中の出方にもよりますが、たぶん、そんなことになれば、決着は、短時間で、ついてしまうかも。あきらかな、あやまちですよ。許されざる行為だ。神にも、あらゆる、生き物にたいしても、罪ですから。』


『それは、どこに、あるのですか?どうやって、起爆させるのですか?』


『はあはははは。まだ、秘密。でも、ぼくは、一人じゃない。ちょっと、準備は、してきました。ぼくは、爆弾の専門家じゃないですからね。じぶんだけ、では、出来ない。』


『なかまが、いるのですね。』


『そう。意外なね。で、やりますか?最終戦争には、ならないかもしれないが、この国だけなら、破壊できる。まあ、やるなら、そのつもりでないとね。』


『仲間と、相談しないと。』


『できれば、そうして、ほしくないですよ。2発だけは、ぼくが、すぐに、使用できます。ここ、すぐ、目標に、できます。』


『信用しろというほうが、無理ですよ。老人性誇大妄想かもしれない。まず、見せてください。実物を。』


『あなたが、リーダーなら、あなたと、あと、信用できる副官だけです。お互い、信用できないとね?』


『わかりました。しばらく、待っていてください。考えます。』


『いいですよ、まあ、ぼくは、勝手に終わらせてもいいので。なんだか、ひどく、疲れましたよ。』




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