第14話 『自決公社』 その1
ぼくは、保田さんと再会した。
といっても、少ししか経っていないが。
「ごいっしょできればよかったのですが、怪しまれてもまずいし、いろいろお仕事もありましたから。」
「ここは、どこですか?」
「自決公社の宿泊棟です。」
「じじじ、じけつ・・・・なんですか、それは?」
この、超秘密社会の中にあって、ぼくは、マスコミの仕事をしていたおかげで、一般よりは情報を得やすい立場にはあった。
公表すべきと思ったことは、可能な限り発表してきた。
もつとも、検閲の壁はきつく、肝心なことは、あまり出せていなかったことも事実である。
結果的に、あの、おろかな首相連中の宣伝マンになっていたかもしれない。
国民のガス抜き担当者に陥っていたかもしれない。
しかし、『自決公社』というものは、聞いたことがない。
「まあ、一種の秘密結社です。しかも、国家に守られている。」
「そりゃあ、秘密結社じゃないでしょうに。」
「まあね。表向きは、民間の団体で、『体力増進健康推進機構』と呼ばれています。しかし、その最も重要な仕事は、口減らしですから。そうして、この、四国地区の老人収容所とは表裏一体の関係にあります。一度ここに入ったら、生きて出られるということは、ありません。」
「そりゃあ困る。」
「はい。しかし、コケツニイラズンバ・・・・。ということわざもありますように、最大の盲点でもあります。当面、あなたは自決の対象にはならないはずです。」
「ちょっと待って。自決と言うのは、自ら進んで行動するものだ。なんか、強制みたいな香りがする。」
「ご明察。強制ですわ。ほぼ、ね。だれも、その道を踏み外せない。そうなるように、誘導されます。薬剤も、カウンセリングも、その方向で使用し、行いますから。あなたの担当カウンセラーは、あたくしになりました。よろしくね。」
「それは、こあ~~~~~!」
「まあ、失敗したら、二人ともアウト。ここをぶっ潰すのです。協力していただけますか?」
「そりゃあ・・・いいけど。もっと、情報が欲しい。」
「もちろん。しかし、注意は必要です。周りは体制側ばかりです。」
「ふう~~~ん。あなたは信用できると?」
「おまかせします。情報を見たうえで、判断してください。」
「いいでしょう。おもしろい。なんか、うずうずする。」
「ほほほ。これは、普通の市販されていた、液晶テレビです。見ためはね。でも、あなたの網膜と、環境を考慮し、安全だと判断したら、情報の受信を始めます。まあ、ばれないとは思いますよ。よほどの技術がないと、解析は出来ませんからね。いま、この国には、そんな技術や施設は、ほとんどない。それもまた、大災害の爪痕ですから。」
「監視されてないの?」
「そおんな、余裕はありませんわ。意味もない。ここから脱走したって、まず、生きては行けない。それこそ、自殺行為です。施設外には、危険がいっぱい。巨大ごきさんに、集団で襲われるのがおちです。」
「いるのか?」
「います。まあ、用心深いから、人の施設には入って来ないですが。でも、それも、いつまでかは、わからないです。ごきさんの気持ちは、わからないから。」
「そりゃあ、そうですな。でも、それなら、施設なんかいらないのでは?」
「そこです。そこなんですよ。『ソイレント・グリーン』という映画はご存知じ?」
「知ってますよ。食料危機に陥った人間が、弱い立場の人間・・・老人たちを、食料に加工するお話だ。」
「そう、そのとおりのことが、起こってるわけです。ここ四国地区は、本土に対する、食料供給が、最大の使命ですもの。じゃ、情報の、取り出し方をお話しましょう。」
************ ************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます