21 クローズ




                   ■




 どん! ……と。

 真代ましろは背中から地面に落ちる。


(いったぁ……っ)


 モンスターの〝核〟はどうなったのか、これで本当に倒せたのか――様々な懸念が、その痛みで頭から吹っ飛んだ。


 ……正直、確証はなかった。

 モンスターには〝核〟があり、それがマナを集めて留めることでその形を保っている。

 だとしたらその〝外側〟だけを壊しても意味がないのではないか。またマナを集めて形状を保つのでは?

 仮に腹を突き破って運よく核を抉り抜けたとしても、万が一、複数の核を持っていたら……この巨体だ、それを維持するのに核が一つで足りるとは思えない――


(だけど、もし……)


 その巨体を水風船にたとえるなら、その〝外側〟は――


 現実は「そうである」か「そうじゃない」かの二択だ。

 一か八か、真代は賭けに出たのである。


 一番の懸念は、熊者クマモンがビンを割れるかどうかだったが、


(結果上手くいったから良かったけど――)


 あれが熊者の〝実力〟なら驚きだが、真代が推測するに、その拳の威力にはからくりがある。


(あの〝着ぐるみ〟自体がマナのエンチャントされた〝全身装備〟なんだ。それでダンジョンに長時間こもったり、気配を消して〝狩り〟をしてんだろうな。謎パワーが出せても不思議じゃない)


 こんな場所で着ぐるみを着る理由としても理に適っている。


(敵には回したくないところだけど……)


 巨大クマをぶん殴った勢いで通路の方に転がっていたのだろう、熊者がのっそりと立ち上がる。


「くっくっく、昨日の友は今日の敵、くま!」


 ――特異種という危機が去って、状況は元通りだ。


(さっきより酷い――)


 特異種を倒したことで緊張が解けたのか、強い脱力感に襲われている。地面に仰向けに倒れたまま、起き上がれる気がしない。

 モンスターの方は一進一退、美緒川みおかわがうまく立ち回り翻弄し、川内せんだいがゴブリンに対処しているようだが、それだっていつまでもは続かない――


「でもな……」


 真代はジャージのポケットから端末を取り出す。

 表示された地図アプリは――



「おや、もしかしてお困りかな――マシロ?」



 最強の救援――その到着を告げていた。



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