幕間

01 ある夏の日に




 ――それは、遠い日のお話。

 大切な何かを取りこぼしてしまった、後悔の物語。



 その日、母親の手を振り切って、キミは走り出した。



 何かから逃げ出したのかもしれない。

 何かを、追いかけようとしたのかもしれない。


 その始まりは分からない。その過程はどうでもいい。


 ただ、キミがそこにたどり着いたことが全て。

 キミがここに来てくれた、それだけが全てだ。


 あの日の出逢いを憶えている。後悔の始まりを忘れない。


 ――忘れられない。


 あの日、世界ものがたりのすべてが始まったのだ。


 それは、別れの物語。

 それは、私たちの後悔――その小さな永遠とわの序章。



「あ、いや……ど、ドロボーじゃないんです!」



 少女アリスが迷い込んだのは、長い後悔へと続く迷宮ダンジョン



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