第十八話 これからの僕たちは。【006】
006.
「さてと。二人が居なくなったところで作戦会議をするか。」
私はそう言って、机に手を置く。
私には国王様から依頼された仕事がまだまだあるのだ。
「なんであの二人にしたんですか?」
茜音ちゃんが僕の方を向いて質問をする。
「うーん。やっぱり可能性かな。あの二人ならやってくれる感じがするんだよ。」
「それって私たちには可能性が無いってことですか?」
「ネビルくん。そんなことは言ってないから、落ち着いて落ち着いて。」
私はそう言って笑う。
実際、ここにいる皆、可能性はある。しかしながら、僕には国王様からの命令があるのだ。
「スピカを成長させろ」
僕は彼を成長させなければならない。
今までは僕たちが彼に助言を与えることで、助けることで成長を手助けしてきた。
しかし彼に今足りないのは、踏ん張る力だ。
自ら逆境に立ち向かっていく力。
辛くてもそれに向かって反抗する力。
それが起爆剤となって彼らは変われる。
「僕たちがこれから立ち向かわなければならないのは、魔王だ。そして国王様は、僕に全ての意思決定権を委ねてくれた。」
今の状況、即ちアルドーフに目を付けられている状態でモブは動くことが出来ない。
そこで、表向きはドラフ暗殺計画に失敗したと見せかけ、そのせいで解散させる。
その代わり国王は身の安全のため一度避難をし、僕がこのモブ職の指揮権を執る。
これはたった一つ、「僕たちの自由にしろ」という命令なのだ。
それは裏を返せば僕たちの自己責任だということでもあるのだが。
「だからこれからは、僕が指揮を執る。ただし、僕は基本的に皆の意見を吸い上げようと思うから、意見は出してほしい。」
すると皆、僕の方を向いて頷いてくれる。
「まずは、魔王幹部を斃す。恐らくスピカたちは、はじまりの町に行くだろう。あそこは安全だからね。そしてそこで準備を重ねて恐らく砂漠の国に行くと思う。」
僕は地図を広げる。
「そしてアルドーフは今この国に居るが、魔王と接触するため、魔王城の方へ行くと思われる。その情報は恐らく、スピカたちも手に入れるだろうから、近くに向かうだろうね。」
「なるほど。でも、スピカたちが二人だけでアルドーフを斃すのは厳しいと思うが……」
「そうだね。だからまずは砂漠の国に向かわせたいと思う。」
「じゃあ私が情報操作に行きますね。」
「ありがとう、茜音ちゃん。アルドーフを斃すためには、恐らく僕たちの生まれ育ったあの街での協力が必須だと思うから、なるべく彼をオエドに誘導したい。」
「何故ですか?」
「僕たちのオエドにはタナカ家の子孫が居る。タナカさんはそもそも勇者であったわけだから、その子孫に会うことができる。その人たちの知恵が、もしかすれば彼の魔道具作成に役立つかもしれないんだ、ネビルくん。」
僕はそう言って、国王から貰った資料を机の上に広げる。
「これが国王様から預かった極秘の資料だ。ここには魔王幹部の情報が載っている。そしてこれによると魔王幹部は合計六人。そして僕たちは既に、ドラフを斃しているので残りは五人。そのうち、アルドーフだけ異常に強力な力を持っている。砂漠の国にいる魔王幹部はスピカ君が斃すとして、残りの三人は僕たちで斃さないと魔王の襲撃に間に合わない。」
「魔王幹部を三人も?」
「そうだね。そうなってしまう。まあただ、その為の対抗手段は既に確立されていて、国王様の指揮の元にある魔導工学士が対抗手段を準備してくれているんだ。」
僕がそう言うと、皆が僕を心配そうに見る。
「ってことは、一番危険な任務をスピカ君が……」
「そういうことだ。だから、もしものためにまずは準備を行う。ネビル君と茜音ちゃんは魔王幹部を斃しに行ってもらって、僕とルドルフ君でスピカ君の補助と勇者の誘導をする。」
「結局、勇者は殺すんですか?」
「いいや。彼を殺してしまえば本当にこの世界は助からない。これはスピカ君の言った通りだよ。だから、彼を表向きに殺す。そして、裏で僕たち二人が接触を行って魔王城まで誘導する。いつものような方法だと多分勇者は魔王城まで辿り着けずに、街が襲撃を受けることになる。そこで、表向きに殺したという情報を流して、民衆を煽る。そこでアルドーフに意図的に嘘の情報を流して、魔王に伝えさせる。その後僕たちは彼を鍛えて魔王に立ち向かうことができるようにする。」
僕はそう言って、皆の顔を見る。
「いいんじゃないか?俺は良いと思うぞ。」
「私もそう思います。」
「じゃあ、みんなそう言う形で頼む。とても危険だと思うが、皆ならきっとやれると信じているよ。じゃあ、それぞれ任務に就こう。」
僕たちはそう言って、円陣を組むのであった。
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