第六話 僕の持ってる、光るモノ【001,002】
001.
無事僕たちは全ての仕事を終え、先ほどまでいた野営場所へ向かう。
空はすっかり夕焼け色に染まり、木々や鳥もどこか寂し気に鳴いていた。
エレナさんはあの後、怒って先に帰ってしまい結局僕と茜音さんで帰路に就いていた。
そして僕と茜音さんは、僕たちの初めての仕事について語らいながら歩いているのであった。
「スピカ君、魔法屋のお婆さんのとこ、どうだった?」
僕は魔法屋での出来事を思い出す。今まで見たことの無いような物、魔法の数々、そして何より、認めてもらったことに対する嬉しさ、そんな感情が渦巻いて、なんとも言えない嬉しさに浸りながら話す。
「自分が今まで見たことのないような、不思議な魔道具を見ることができて、すごく楽しかったです。でもそれ以上に……」
「それ以上に?」
「久しぶりに自分が出せたような気がします。」
すると茜音さんは「よかった。」と言ってにっこりと微笑む。
僕は、久しぶりに味わう達成感と嬉しさで溢れていた。今まで誰にも認められなかった自分の努力が、誰かに認められること。それがとてもかけがえの無いことに思えて、僕は少しニヤけた。
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002.
「おおーいお前ら!こっちだ!」
そう僕と茜音さんに手を振ってきたのはルドルフさんだった。その隣で、エレナさんが不機嫌そうに座っている。
「二人とも、お疲れ様。今日は疲れを取って、おいしいご飯を食べて、明日に備えようか。」
そう秋月さんは言い、僕たちを労ってくれた。
「よおーし。そうと決まれば風呂だ!風呂行く人?」
ルドルフさんはそう言って僕たちを見渡す。僕はもちろんのことそんな面倒なことには巻き込まれたくなかったため、目を背ける。
「おい坊主、何目逸らしてんだ。風呂、行くぞ。」
「ちょっ、ルドルフさん!何するんですか?首根っこ掴まないでって、ぎゃあぁぁぁぁ~!」
そうして僕はルドルフさんにまた誘拐されて、お風呂へ向かうことになったのである。
「彼、連れていかれちゃったね。」
「秋月さんも行かなくていいんですか?」
「僕はいいかな。それより茜音ちゃん、エレナちゃん、何か美味しいもの、食べに行かない?」
「秋月さん、いいんですか?」
「もちろんだよ。今日は初の後輩指導だったもんね、茜音ちゃん。お疲れさん。」
「ありがとうございます!」
「エレナちゃんは?」
「私は、いいです。勉強があるので。」
「そう……じゃ、茜音ちゃん、行こうか。僕たちもたくさん美味しいもの食べて、後でルドルフ君に後悔させなきゃね。」
「はい!」
そうして茜音と秋月という異色のコンビは、温泉街に並ぶ様々な美味しい料理を食べに出かけ、エレナは魔術書を読み耽ることになったのである。
一方ネビルはというと、仕事先でルドルフとはぐれ、はじまりの町の噴水前に立ち尽くしていた。
「ルドルフさんどこ行っちゃったんだろう。はぁ。」
そしてすっかり日が暮れた「はじまりの町」で、ネビルは立ち尽くしていたのであった。
「いや、流石に気づいて迎えに来いよ。噴水前に集合だったろ……」
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