第二話 憧れの私になるの。【005】

005.

あれから10年の月日が流れた。

私は、16歳になる今日、この学校を卒業しなければならない。

16になる者は、この学校を卒業し、騎士を目指すなり、冒険者になるなり、必ず仕事に就かねばならない。

そして私は今日、遂に魔導士の準騎士の称号を手にすることができる。


この学校が始まって以来、準騎士として卒業ができた者は居ない。あれから私は、人の何倍も努力をした。常に体を鍛え上げ、勉学は勿論の如くトップ、実技でもトップを取った。


教官からは「常に戦いだと思え。トップ以外は取るな。二番手は最下位と同じだ。」と言われ続けていたため、常に努力をしてトップを取り続けた。


そのため、多くの人からは嫌われた。高慢な努力家で、真面目な優等生、という印象が大きかったためだと思う。しかし、それは全て、あの日のためにあった。

全てを失った日に、私を助けてくれたあの人たちのようになるために、私は死ぬほど努力をしたのだ。


そして、いよいよ卒業の時。


そこには多くの教官の姿があった。私たちの士官学校では、卒業と同時に叙勲式が執り行われるため、私は皆の前に、それも中央に、準騎士の叙勲を受けるために立っていたのであった。ハイネン教官は、私をこの要塞に招き入れてからだいぶ歳を取ったが、それがわからないほど鍛えていることが遠巻きにもわかった。



私は士官学校を10年ぶりに出て、士官学校の外の空気を吸い込む。


「エレナ。よくやったな。お前がここまで成長してくれて良かったよ。」

後ろからハイネン教官の声が聞こえ、私は振り向く。

私は振り返り、「ありがとうございます!ハイネン教官!」

と言って、敬礼をした。


「エレナ!戦え!何があろうと、お前は勝つ!いいな?」

「はい!」

そう言って教官は、私の背中を押してくれた。


背後では、教官が手を振ってくれていた。


私は泣きそうになった。


この10年間で私は強くなった。そして、私がこうなることができたのは、教官のお陰であることに間違いないのだ。


門を出ると、そこには私の憧れた彼らが立っていた。

「よく頑張ったね。はい、これが招待状。」

そう言って、初老のお爺さんが、私に便箋を渡す。

「国王様があなたのことを認めて、入れてくれるって仰ってくれたのよ。」

そう言って、女の人が私を見て笑う。

私は敬礼をして、「はい!ありがとうございます、皆さま方!お目に掛かれて光栄です!」と言った。

「完全に育て上げられたな。」

そう言って厳つい面持ちの男は笑う。

「ま、そう言うわけだからよろしく。明日にもう一人の新入りが来ると思うから、楽しみにしてな。」

その男ははにかむ。


私は、憧れの職に就くことができた喜びと、明日から始まる仕事の内容、そして何より、私の同期となる新人を楽しみにするのであった。


そうして私は、「モブ」という仕事に出会ったのである。

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