第二話 憧れの私になるの。【002,003】
002.
「ここまでくれば大丈夫か。」
そう言って、その男は立ち止まり、私を地面に下す。
「お父さんやお母さん、残念だったな。助けられなくて、すまない。」
そう言って、その男は謝る。
焚き火がパチパチと弾ける音を聞きながら、私はそこにいる人々を見る。
そこには、その厳つい男の他に、背が低い初老のおじいさんや背広を着た男性が座っていた。
「おじさんたちは誰なの?」
私はそう言って、自分の周りに座る人を見る。
初老のおじいさんが私を見て言う。
「すまないねぇ。それは言っちゃいけないことになってるんだ。でも、僕たちはお譲さんの味方だということだけは伝えておこう。」
私は怯えながら、「おじさんたちについて行ってもいい?」
と言った。
「それはいけませんよ。お嬢さん。私たちは危険なところを行き来しているんです。あなたのような幼い子供を連れていく訳にはいかないんですよ。」
そう言って背広を着た男が肩を竦める。
「おいおい。そりゃあんまりじゃねぇか。こんな子供、放り出したらそれこそすぐ奴隷行きだ。」
そう言って厳つい顔をした男が首を撥ねる真似をしておどける。
「それはそうですけど。」
その背広の男は口惜しそうに言う。
「まあ、あと一週間くらいは見てあげてもいいんじゃないかな。その間にこの子を引き取ってくれる施設を探そうよ。」
初老のお爺さんが場を取り持つように言った。
「仕方ないですね。その代わり、世話はあなたがしてくださいね。」
その背広の男は厳つい男にぼやく。
そうして私は、その男たちのところで暫く面倒を見てもらう運びとなったのであった。
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003.
それから私は、一週間ほどその人々によって面倒を見てもらった。
私はその人たちと共に様々な村に行き、様々な仕事をしているところを見た。彼らは村に訪れては挨拶をして回ったり、世間話をしたり、何をしているのかよく分からなかったけれど、彼らのする行動一つ一つが私にとってかっこよいと思えた。
そして仕事が終わると必ずお風呂に行って美味しいものを食べて、笑い合う。
そんな他愛もない日々を1週間過ごした。
普通の人間からすれば、その生活は普通なのかもしれない。しかしその生活は、家の中で箱入り娘として育てられてきた私にとって新鮮な世界であった。
一週間が経つ最後の日、彼らは私をある街にある大きな建物に案内してくれた。
「ここが、お前がこれから暮らすところだ。国が運営している施設で、将来有望な騎士を育てるための学校だ。学校に通っていないお前にとっては良い経験になるだろうし、生きる術を身に着けるにはピッタリの場所だ。まあ、金もかかんねぇしな。」
そう言って、その厳つい男は笑う。
「ねえ、おじさん。あたしもここに行ったらおじさんたちみたいになれる?」
するとその男は私の目を見て、
「あと、お前がこの学校をトップで卒業したら、俺たちの仲間に入れてやる。その時を楽しみにしてるぜ。」
と言い、私の頭を撫でた。
そして私は彼らと別れを告げた。
それと同時に、私は絶対にその中で一番になると決めたのであった。
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