第一話 弱虫でヘタレな一番星【003,004】

003.

僕はその便箋を見る。そこには、


Dear Spica. Congratulations. (スピカ様へ。おめでとうございます。)


とだけ書いてあった。

僕は首を傾げながら、「何が『おめでとうございます』だ?」と言う。

「なんで僕の名前が書いてあるんだ」


僕はその便箋を机に置いた。


するとその便箋が、自分で勝手に開いた。


僕は驚き、思わず尻餅をつく。


その手紙を覗き込むと、簡単な地図と、×印が記載してあった。



明日の朝6時にこの場所に来てください。あなたをお待ちしております。

モブより



僕は「招待状の割に随分とぞんざいな書き方だなぁ」と漏らし、「どうしよう」と言ってベッドに体を投げ出した。



-------------------------------------------

004.

「でもしかし、これで行かないというのも失礼だよな。」

僕はその便箋から飛び出してきた手紙を眺める。

「本当になんだろう?しかも『モブ』って。」


殆ど家に引きこもっていた人間に、招待状が届く。これは非常に不可解な話である。

しかも、その「モブ」という職業など聞いたことすら無い。


この時期に招待状が届くということは、「モブ」というのは何かしらの仕事なのだろう。

しかし残念ながら、僕には選択権が無い。

特技も学も無い僕にとって、それがもし仕事だったのなら、その選択肢は蹴ることが出来ないものであるのだ。


「まあ、取り敢えず行ってみるか。」


そうして僕は、「モブ」という仕事に出会ったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る