133・わたしが結婚して上げる

 大学全部不合格!?

 どういうことよ?!

 なんで不合格なの!?

 試験の結果が悪すぎる?!

 だからなによ!?

 世界一可愛いわたしが入ってあげるって言ってるのよ!?

 それを落とすなんてなに考えてるの!?

 ま、いいわ。

 このわたしを落とすような大学だもん。

 三流ってことよね。

 一流企業に入ってわたしが社長に出世したら潰してやるわ。



 全部不採用!?

 どういうことよ?!?!

 なんで不採用なのよ!?

 入社試験も面接態度も悪すぎる!?

 だからなによ!?

 世界一可愛いわたしが入社してあげるって言ってるのよ!

 それを落とすなんてなに考えてるのよ!?

 ま、いいわ。

 このわたしを落とすような会社だもん。

 三流ってことよね。

 お父さんの会社に入れてもらお。

 見てなさい。

 バシバシ契約取って儲けさせて上げるから。



 なんで契約を受けないのよ!?

 こんな良い話し他にないわよ!

 それを断るなんてなに考えてるのよ!

 ずさんでいいかげんで態度が悪いですって!

 どこがよ!

 わたしちゃんとやったわよ!

 は!?

 わたしの会社はもう信用できない!

 なんでよ!?

 わたしのせいだっていうの!?

 強引で押しつけがましいってなによ!?

 わたしは良い話持って来てやってるのよ!

 それなのになんでよ!?



 あの同期の男の人、中々いい感じね。

 将来有望だって話だし、わたしが彼女にあげるわ。

 ねえ、お話しましょ。

「あの、仕事してるんで、邪魔しないでもらえますか」

 うん、分かった。

 恋人のために我慢するなんて、わたしってばホントいい女。



 ねえ、わたしたちそろそろ結婚してもいいんじゃないかしら。

「え? いつの間に付き合ってることになってたんですか?」

 もう、なに言ってるのよ。

 わたしが結婚って言ってるのよ。

 早くしてね。

 わたし待ってるから。



 なんで結婚しないのよ!?

 わたしが結婚って言ってるのよ!

 いつになったら結婚の準備するのよ!?

 お父さんに言わなくっちゃ。



「社長に何言ったんですか!? 閑職に回されたんですよ!」

 わかった。

 お父さんにわたしから言ってあげる。

「やめてください! 状況がますます悪化します!」

 いいからいいから。

 わたしがうまくやってあげるから。

 だから早く結婚の準備してね。



 は?

 あの人、クビになった?

 なにやってるのよ?!

 わたしがお父さんに言ってあげたのになにクビになってるのよ。

 ま、いいわ。

 これで結婚する気になったでしょ。

 わたしと結婚すれば会社に戻れるんだから。



 おかしいわねー。

 いつまでたっても連絡ないじゃない。

 ちょっと興信所に調べて貰おう。



 え?

 女と一緒にマンガを描いてる?

 付き合ってる女がマンガ家になりたくて、その手伝いをしてるですって!

 オタクと付き合ってるの!?

 じゃあ彼もオタク!?

 なんてこと。

 彼、オタクだったんだわ!

 オタクだから結婚を考えられないのよ!

 空想と現実の区別が付いてないのね!

 マンガのキャラに恋して、マンガのキャラに似た女と付き合って、コスプレなんかとかして喜んでるんだわ!

 大変!

 わたしがオタクを治してあげなくちゃ!



 あなたのオタクを治してあげる。

 まずわたしのことを調べて。

 そうすれば結婚して上げるから。

「なんの話だ?!」

 わたしねあなたのこといっぱい調べたの。

 あなたのこといっぱい知ってるのよ。

 ね、分かったでしょ。

 わたしはあなたのことを色々知ってるんだから調べてくれるわよね。

 じゃあ早く調べてね。

「なに言ってる!? おまえのせいで俺は会社を解雇されたんだぞ!」

 いいから調べて!

 そうすればわかるから!



 は?

 警察?

 あの人、わたしを警察にストーカーだって訴えたの!?

 なに考えてるのよ?!

 わたしはオタクを治そうとして上げてるのよ!



 彼、オタクなんです。

 あの女のせいで気持ち悪いオタクになっちゃったんです。

 わたしはオタクを治そうとしてるんです。

「そうか! オタクだったのか!」

「とんでもないやつだ!」

 彼、このままだと幼女殺害だとかとんでもないことするにちがいありません。

 テレビとかでオタクがまた犯罪をしたってよく流れてますよね。

 ゲームだとかアニメの影響で人を殺したって。

 わたし、ああいう報道を観るたびに、彼もこのままだとそういうことをするんだって心配なんです。

「そのとおりだ。このままだと犯罪者になるに違いない」

「ああ、犯罪を防止しないとな」

 わたしが結婚すればオタクが治るんです。

「そのとおりだ。君のような可愛い現実の女性と結婚すれば、妄想と現実の区別がつくようになるだろう」



 警察があの人を連行して取り調べてる。

 わたしはそれを見学させてもらった。

「おまえのオタクを治してやろうと言ってんだぞ! 良いから結婚しろ! そうすればおまえのオタクは治るんだ!」



 さらに警察は、男の恋人の経歴なども調べてくれて、それを私に教えてくれた。

 わたしは男性の恋人の部屋に行ってやった。

 彼はね、私と結婚することが決まったの。

 貴女はただの遊び。

 あなたマンガ家になりたいんですって?

 もう無理よ。

 絶対なれないわ。

 警察が出版社に圧力かけたから、あなたのマンガはもうどこにも相手にされないの。

 あなたは一生マンガ家になれないのよ。

 あーあ、カワイそ。

 無駄な時間使っちゃって。

 アハハハ。



 女が自殺した?

 やった!

 やったわ!

 あの女はいなくなったわ。

 これで空想と現実の区別がつくようになったでしょ。

 さ、わたしが結婚して上げる。

 結婚、結婚。結婚、結婚。

「おまえが彼女を死なせたのか!」

 きゃ!

 わたしを殴った!

「とうとうやりやがったな!」

「逮捕する!」

 警察?



 男は暴行傷害として現行犯逮捕され、裁判で実刑判決になった。

 あの女の自殺もこの男の原因になった。

 ま、当たり前よね。

 わたしを殴ったオタクなんだから。



 面会に来てあげた。

 どお? 刑務所の中は?

 わたしと結婚してくれたら幸せにしてあげたわ。

 それなのに他の女と付き合って。

 わたしと結婚すればオタクを治してあげたのに。

 あの女だってアニメのキャラと似てたから付き合ってたんでしょ。

 あーあ、カワイソ。

 オタクは空想と現実の区別がついてないから自殺したのよ。

 アハハハ。

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