第32話 森崎さくら 8
大晦日。
今日は…なっちゃんが家にいる。
もらってたスケジュール表には仕事が入ってたのに、なっちゃんはそれを一存で断ったらしい。
「メンバーもみんな家に居たいって言ってたから、喜ばれた。」
って、なっちゃんは笑ってたけど…
…いいのかな?
二人で窓拭きをしたり、買い物に行ったりした。
寒くて腕にしがみつくと、なっちゃんが…すごく嬉しそうな顔をした。
…それが、あたしも嬉しかった。
うん…。
幸せって…やっぱり、笑ってないと…だよね。
「さくら。」
「ん?」
夜。
ベッドでテレビを見てると。
「…プロポーズ…どうしても受けてくれないのか?」
また…なっちゃんが結婚の話を持ち出した。
「……」
「さくらは、俺を縛りたくないって言ったけど…俺は、さくらになら縛られたいと思う。」
…結婚の話はウンザリだけど…
ここまで言ってくれる事は今までなかったから…
あたしは、天井を見つめたまま、なっちゃんの声に耳を傾ける。
「生まれて初めてだ。束縛されたい、独占されたいなんて思うのは…」
束縛とか、独占とか…
あたし、それはなっちゃんには似合わないと思うな…
そう思うけど…
それでも、なっちゃんは、あたしにそうされたいって言う…
「…でも…」
あたしは体を起こして。
「…でも、子供は…?」
小さな声で言った。
「え?」
子供が…欲しい。
あの人に負けたくない。
…だけど、今そんな事言ったら…
なっちゃんは、ますます苦しむよね…
「…ううん。なんでもない。」
あたしはなっちゃんの上に覆いかぶさると。
「……今より、もっと料理してくれる?」
なっちゃんを見つめて言った。
「…ああ。」
「今より、もっともっと好きって言ってくれる?」
「…ああ。」
「今より、もっともっともっと…」
あたしが次の言葉を言いかけると。
「さくら。」
なっちゃんは、あたしの腰を抱えて起き上がると。
両手で頬を包んだ。
「愛してる。これからも、今よりずっと愛してくから…」
「……」
「結婚して欲しい。俺の…妻になって欲しい。」
「……」
「ずっと…そばにいて欲しいんだ。」
「……」
もう…
もう、いいや。
急に、そう思えた。
なっちゃんの真剣な言葉と…泣いちゃいそうな顔に。
なっちゃんを笑顔にできるのは…あたしなんだ。
あたしはしばらく考え込んで。
パッと、なっちゃんの目の前に手を差し出した。
「ん?」
「…指輪。」
「……さくら…」
なっちゃんは…ふっと優しく笑って。
あたしの体を片手で支えて、体を伸ばしてサイドテーブルから指輪を取り出すと。
「…はめていいのか?」
遠慮がちに…言った。
「だって、なっちゃん…泣きそうなんだもん。」
「仕方なしかよ。」
「でもありがたいでしょ?」
あたしが少し偉そうに言うと。
「ああ…」
なっちゃんは…満面の笑み。
ゆっくりと…右手の薬指に指輪。
そっか。
これは婚約指輪か。
右手なんだ。
「…指輪なんて、初めて…」
何だろ…
心が軽くなった。
なっちゃん…これ選ぶのに、どれぐらい時間かけてくれたのかな。
「…さくら、ありがとう。」
なっちゃんが、あたしを抱きしめる。
あたしはなっちゃんの背中に手を回して…肩越しに、また指輪を見る。
キラキラ…
「なっちゃん。」
「ん?」
「大好き。」
チュッ。
あたしからキスすると。
「…こうしたまま、新年迎えるか。」
なっちゃんは、あたしをくるりとベッドに寝転ばせると…
長い長いキスをした…。
* * *
「じゃ、今日は16時にサイモンな。」
「分かったー。いってらっしゃい。」
「いってきます。」
年が明けて、またいつもの朝が来た。
今日はあたしは完全オフで。
夕方、なっちゃんの仕事が終わったらサイモンバーガーで待ち合わせの予定。
あたしが辞めた後、サイモンバーガーは長い期間をかけて改装したらしく。
その間、あたしと働いてた人達は転職したり、他のグループ店に異動になったり。
で…
結局、今ではほとんど知り合いはいない。
「ん~んんん~♪」
いつものように、Deep RedのCDを流しながら、あたしは片付けや掃除、洗濯を終えた。
ついでにアイロンがけもしようかな…って思ってると。
♪♪♪
電話だ。
「はーい。」
『もしもし、サクラ・モリサキさんですか?』
「どちらさまですか?」
『こちら、プレシズ実行委員会です。』
「プレシズ…?」
それは、音楽イベントへの出場を打診する電話だった。
「あたしが出てもいいんですか?」
『色々な方面から、推薦がありまして。』
「色々な方面…」
よく分からないけど…
どこかのホテルで歌えるみたいだし。
いっかな。
「わかりました。参加させて下さい。」
『では、近日中にホテル・ファレディナにお越しいただけますか?』
「今日でもいいですか?」
『え?』
「今日なら空いてるんで。」
『ああ…もちろんです。では、お待ちしております。』
何だかよく分からないけど…やった。
なっちゃんとの待ち合わせまでに行って来よう。
…待ち合わせなんてめったにないし…
それが例えサイモンでも!!
ワクワクしちゃうよー。
あたしは鏡の前に立って、数少ない服を色々着まわしてみた。
せっかくだから、オシャレしたいなあ…
あっ、そう言えば…ミシェルにもらった、花柄のAラインワンピースがあったっけ。
あたしには少し丈が長かったから、膝上まで切ってレースを縫い付けた。
コートは、なっちゃんが着なくなった物をもらって、一度ばらして全体的に細くして、切った部分でフードを作った物がある。
二階堂の人間は、裁縫はお手の物。
いつどこで変装しなきゃいけないか、分からないしね。
なっちゃんは、あたしに服を買いたがってくれるけど。
ある程度の物は作れちゃうし。
要らないんだよね。
ブーツを履いて、鏡の前でくるり。
うん。いい感じ。
右手の指輪も…いい感じ。
「行ってきまーす。」
誰がいるわけでもないのに、家の中でそう言ってドアを開けた。
目指すは、ホテル・ファレディナ。
「…わ。」
あたしは、そのホテル・ファレディナを見て口を開けた。
「大きーい。」
予想してたより、ずっと大きなホテルでビックリした。
でも、こんな所…めったに入れるわけでもないし。
ラッキーだな。
あたしは意気揚々とホテルに入って、フロントで名前を言うと、エレベーターで22階へと言われた。
振動すら感じさせないエレベーターで22階まで上がると、プレシズってプレートが埋め込んである部屋で、規約を読んでサインをした。
あっと言う間に用事が済んじゃったな…
とりあえず、ホテルの周りを散策してると…可愛い花屋さんを発見。
「わー…可愛い。」
自分の名前が『さくら』だからなのか…
あたしは、花が大好き。
以前、そんな話もしたからか、なっちゃんは時々花を買って帰ってくれる。
あたしの名前は『さくら』なのに。
なっちゃんは、あたしをピンクのチューリップみたいだって言う。
…そんなの言われたらさ…
自然と、ピンクのチューリップが大好きになっちゃうよ。
店先の花を一通り眺めて。
ガラスに映った自分の顔を見て。
下ろしたままにしてた髪の毛を、少し束ねてみた。
「……」
うん。
全部出しちゃえ。
あたしは伸ばした髪の毛を、がーっとまとめると。
持ってたゴムで括った。
額も出して、顔が丸出し。
ガラスに向かって、ニッと笑うと。
「いい笑顔だね。」
ガラス越しに、年輩の男の人が笑った。
「あ…あははっ。」
「こっちも元気になったよ。ありがとう。」
「……あたしこそ、ありがとう!!」
…もう、悩まない。
もっと笑顔でいよう。
もっともっと笑顔を、なっちゃんに見せよう。
さ。
サイモンへ行こーっと。
16時にサイモンに行くと、なっちゃんはすでにお店の前にいた。
「あっ、先に入ってて良かったのに。」
あたしが駆け寄ると。
「……」
なっちゃんは、優しい笑顔のまま…無言。
「…何?」
「いや…」
なっちゃんは、あたしの結んだ髪の毛を指にくるくると巻きつけて。
「可愛いな…と思ってさ…」
小さくそう言って、全開になってるあたしの額にキスをした。
「……」
「……照れてんのか?」
「…なっちゃんこそ…」
上目使いでなっちゃんを見て、唇を尖らせる。
そんな…そんな…
優しい顔で、可愛いなんて言われて、キスなんてされたらーーー!!
照れるに決まってるじゃん!!
「…さくら。」
「ん?」
「…呼んでみただけ。」
「何それ!!」
「ははっ…可愛いからさ…」
「も…もーっ!!おっさんのクセにっ!!」
「そのおっさんを好きなクセに?」
「う…」
なっちゃんは、すごく素敵な笑顔で…
あたしの肩を抱き寄せた。
商品を買って、外に向かったカウンターに並んで座る。
…世界のDeep Redのニッキーは、サイモンバーガーは食べないらしいけど。
『なっちゃん』は、大好きらしい。
ふふっ。
笑っちゃうなあ。
「あ、そうそう。」
あたしは思い出したように、なっちゃんに言う。
「ん?」
「あたしね、3月1日に、ホテル・ファレディナであるプレシズってイベントに出るの。」
「…え?」
「プレシズ。知ってる?」
あたしの言葉に、なっちゃんは数回瞬きをした。
「…プレシズに?」
この…なっちゃんの口調…
「信じられない」って言いたそうな目…
「うん…」
不安になって、小声になるあたし。
「……」
「…大丈夫かな…あたし…」
なっちゃんは無言だし…
急に不安になってしまって、サインした事を後悔し始めた時…
「やったなあ!!」
「えっ…きゃっ!!」
いきなり、なっちゃんが立ち上がって、あたしを強く抱きしめて。
そのまま、回った…‼︎
「えっえええ…なっ…なっちゃん…みんな見てるよ…」
ほんとに!!みんな見てるし!!
あたしは恥ずかしいばかりだったけど、なっちゃんは…
「あー…めちゃくちゃ嬉しい!!」
す…すごい…ハイテンション…
「…ビックリした…なっちゃん、あまり大声なんて出さないから…」
うん。
そうだよ。
ビックリ…
「世界中の人に一杯奢りたい気分だ。」
なっちゃんは椅子に座って、コーヒーを乾杯みたいにした。
それから、興奮がおさまらない様子だったなっちゃんは…
「今からカプリに行って、おまえの歌を聴かせてくれ。」
って…
今の時間はステージないよ!!って言ったのに。
オーナーに交渉までして。
これまた、オーナーが『プレシズに出る!?』って大騒ぎ。
…あたし…もしかして、とんでもない事引き受けちゃったかな…
そんなわけで、特別にディナータイムのステージ。
いつもと客層も人数も違うし…緊張しちゃうな…
だって…
なっちゃんが。
すっっっっごく食い入るような目で…
あそこに座ってるんだもん。
あたしは控室の前にある通路のカーテンを少し開けて、なっちゃんの位置を確認した。
…まだあたしがステージにいないのに、そこをじーっと見つめてる。
それより…何歌おうかな…
あたしは、ステージの周りに座ってる人達を見渡して。
「…よし。決めた。」
一度控室に戻って、ギターのチューニングをした。
『ランチステージで歌っている、我がカプリのシンガー、シェリーが!!なんと!!プレシズ出演が決定しました!!』
オーナーがステージであたしを紹介してくれた。
な…何だか恐縮だな…
『今夜は特別!!シェリーの歌を聴きながら、ディナーを楽しんでください!!』
温かい拍手を受けながら、あたしはステージに上がる。
ああ…ワクワクしちゃう。
あたしは小さく深呼吸すると、明るいナンバーから歌い始めた。
二階堂を離れて…なっちゃんと暮らし始めて…
なっちゃんに子供がいるって知った時は…本当、すごく苦しかったし、今も…あまり考えないようにしてる。
だけど、あたしが少しでも落ちた顔してると…なっちゃんには、それが分かっちゃうのかな。
すごく…気を使わせちゃってるな…って思う。
大好きな人を悲しませたくない。
これは、あたしだって一緒。
なっちゃんは…優しいから。
罪のない子供を想うのは当たり前だ。
…むしろ、素敵だよね。
うん。
あたしの好きな人は…本当に、素敵な人だ。
笑顔で五曲歌い終えた。
一曲は、働く人達に。
一曲は、頑張るお母さんに。
一曲は、近くの席の老夫婦に。
一曲は、幸せそうな家族連れに。
一曲は、恋人同士に。
客層を見て選んだ曲は、どれも正解だった。
客席は総立ち。
あたしは驚いた顔でお辞儀をして、ステージを降りた所で…
「アンコールに応えておいで。」
「えっ。」
「さ、もう一曲。」
オーナーに、背中を押された。
ア…アンコール…
ちらっとなっちゃんを見ると…すごく嬉しそうに、手を叩いてる。
『アンコールなんて…もったいないぐらい。嬉しいです。』
ギターをチューニングしながら、何を歌おうかな…なんて考えて…決めた。
『何がいいですかって聞こうと思ったけど、あたしの好きな曲を歌いますね。』
顔を上げて。
『あたしの、とても大切な人に…贈ります。』
少し離れた席に居る…なっちゃんを、見つめた。
なっちゃんが『え?』って顔をして、ちょっと笑いそうになる。
『…If it's Love』
あたしの誕生日に…なっちゃんが、あたしにプレゼントしてくれた曲。
あの時、本当に本当に…嬉しかった。
世界のDeep Redのニッキーが、じゃなくて。
高原夏希。
なっちゃんが。
あたしのために…
あたしのためだけに、作って、歌ってくれた曲。
聴いた時は、あたしの気持ちを歌ってるんだよね?って。
ビックリした。
すぐに覚えて、口ずさんだ。
時々、なっちゃんが一緒に歌ってくれて。
ああ…もしかして、あたし達ってさ。
すごくすごく、何もかもピッタリなのかなって思った。
あたしの気持ちなのに、なっちゃんの気持ちだなんてさ。
すごいよ。
こんな人に巡り合えるなんて…
あたし、すごくラッキーだよ。
世界で一番の、ラッキーな女の子だよ。
朝起きたらさ、あなたが隣に居るの。
おかしいな…これはリアルかな?って。
毎朝そんな気持ちになるなんて…夢みたいな幸せって事だよね。
もしあなたに悲しみが訪れたら、あたしがあなたを殺してあげる。
あなたを悲しませない。
あたしが苦しむとしても。
それは愛なの?って、誰もが言うんだけど。
あたしは笑顔で、全力で言うわ。
愛よ。
ううん。
愛以上よ。
愛以上なのよ。
もしあなたに苦しみが訪れたら、あたしがあなたを殺してあげる。
あなたを苦しませない。
あたしに罰が与えられるとしても。
それは愛なの?って、誰もが言うんだけど。
あたしは笑顔で、全力で言うわ。
愛よ。
ううん。
愛以上よ。
愛以上なのよ。
あたしが歌い終わると、客席のなっちゃんは…見た事もないほど号泣してた。
それを見て感極まったあたしは…
「…なっちゃん…っ。」
ギターを置いてステージを降りると、まっすぐになっちゃんに走って…抱きついた。
「…さくら…」
「愛してる…愛してる、以上よ。」
なっちゃんはあたしをギュッと抱きしめて。
「…ちくしょ…いい歌だな…」
耳元で…涙声のまま、言った。
「…愛があるからね…」
体を離して、涙を拭う。
泣き笑いしながら、なっちゃんにキスをすると、周りからは拍手と冷やかしの声。
「…行こう。」
「え?」
なっちゃんはあたしの手を引くと、ステージのギターを手にして…控室へ。
「なっちゃん…?」
なっちゃんは控室の鍵をしめて…
「さくら。」
あ…
いきなり…
「なっちゃ…」
首筋に、強く唇を押し当てられて…テーブルの上に、持ち上げられた。
「…俺は、おまえが悲しんでるのに…殺せなかったな…」
なっちゃんの唇が…熱い…
「まだ耐えられるって…思ったんじゃな…あ…」
「…俺に悲しい事があっても…殺さないでくれ。」
「…ずる…い…」
「これから…俺には悲しみは訪れない。」
「……」
「さくらがいてくれたら…悲しみも苦しみもない。」
「なっちゃん…」
「喜びだけだ。」
おまえに悲しみが訪れたら、俺がおまえを殺すから。
あの時…そう歌われて。
本当なら、何それ!!って…思うのかな?って思った。
だけどあたしはそれを、すんなりと…愛だ。と思った。
だけど…
「…喜びだけ…?」
「ああ。」
「…サイコーだね…」
「…ああ…」
控室だと言うのに…
あたし達は、かなり…かなり、盛り上がってしまった。
夜はステージ出演者はいないし。
少し離れた場所から聞こえてくる、オーダーや厨房の声も…すごく忙しそうで。
誰も、あたし達がこんなに熱くなってる事には、気付いてないのかな…
「あっ…あ…なっちゃ…」
…大丈夫なの?
いつも、ちゃんと避妊するのに…
今日…
何もないよ…
「さくら…」
いつもより、熱く感じる…
こんなに違うものなんだ…って、少し驚いた。
「…ごめんな。」
オーナーに挨拶をして、帰ってる途中。
手を握ったまま、なっちゃんが謝った。
「え…?何?」
「…抑えられなくて…」
「……」
「さくらが、あまりにも…愛しくて。」
「なっちゃん…」
立ち止まって、キス…
「…こんなのしてたら、いつ帰れるか分かんねーな…」
なっちゃんが、鼻を合わせて笑った。
「ほんとだよ…」
それから…
帰って…
「あっ…あ…ダメ…」
今度は。
シャワーを浴びながら。
うちのバスルームって、そんなに広くないのに!!
どうしたの!?ねえ、なっちゃん!!
「さくら…っ…」
なんだろ…
ここ数ヶ月、ずっと…優しいセックスだって思ってたけど…
今日は…
ケダモノだよーー‼︎
「…はあっ…」
クタクタになって、ベッドに倒れ込む。
「…悪いな。」
「……おっさんのクセに…」
「おまえのせいだ。」
「えーっ…なんでよ…」
起き上がって、ポカポカ殴るぐらいしたいけど…
とにかく…体力が、もう…
「…愛してる…」
えっ。
まさか。
また!?
驚いて、つい…寝たふりをしてしまった。
「……」
そんなあたしを見たなっちゃんは、あたしに布団をかけて、頭にキスをして…一人でシャワーに向かった。
…どうしたんだろ。
こんなに何度もって…
帰ってからは、あたしから避妊をお願いした。
着けずにするのは…確かに気持ち良かったけど。
…もし、子供ができたら。
って、冷静に考えてしまうあたしがいた。
もし、あたしにも子供が出来たら…
なっちゃん、きっと苦しむ。
『俺は母と二人暮らしでね。親父には本妻がいて、子供が二人いた。貧しくはなかったし、母と二人でも幸せだったけど…親父に本妻がいたのはショックだったな。』
…ヒトミちゃんに、自分と同じ想いをさせる。
あたしは…苦しむなっちゃんを見たくない。
苦しむのは…
あたしだけでいい。
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