名称未設定フォルダ
@fukikoshi
願い
「そこの少女。願い事、1つなら叶えてあげれるよ?」
突然空から舞い降りた悪魔は言う。
「でもそういうのってさ、代償が必要なんでしょ?嫌だなそういうの」
そう言うと悪魔はため息をついて、
「それステレオタイプだよ。わたしは代償を要求しない。ただ願い事を叶えた人を観察するのが好きなの」
そんなお人好し悪魔がいるのだろうか。
疑問は拭えなかったが、「なにもないなら他の人のとこ行くからね」と急かしてくるのでわたしは望みを答えた。
「じゃあさ、わたしの好きな人と両想いにさせて。恋人同士になりたいの。」
悪魔はニヤリと笑う。
「そんなのでいいんだ。じゃあ叶えたから、バイバイ」
わたしが別れの言葉を言う暇も与えず、悪魔は飛び去ってしまった。
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翌日、わたしは好きな人から告白された。
どうやら願いを叶えたのは本当だったらしい。
もちろんわたしは二つ返事で了承し、彼と恋人同士の関係が始まった。
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2週間後、わたしたちは別れた。相手から別れ話を切り出したのではない。わたしが別れたいと言ったのだ。
すると再び悪魔がわたしに会いに来た。
「どうして別れちゃったの?自分が両想いにさせてって言ったのに」
わたしは答えた。
「彼の愛は偽りの愛情だったから。本当の愛情じゃないんだって、その考えがずっと頭を離れなかった。自分の願いっていうのは、誰かに叶えてもらうのではなくて、自分で叶えなくちゃいけなかったの」
そうだね。そんなことは分かってたよ。と悪魔は言う。
「わたしが願いを叶えてあげた人間は、ほとんど同じ結末を辿ってる。自分の願いっていうのはさ、人に与えられても意味がないんだよね。自分が叶えないと実感がない。なんの苦労もなしに叶っちゃうと、すぐに捨てちゃうんだ」
じゃ、これわたしのLINEIDだからと英数字が綴ってある紙を渡してきた。
「またなんか叶えたいことあったら呼んでよ」
そう言って、飛び立ってしまった。
身をもってこんな体験をさせてくれるなんて、変わった悪魔だ。
わたしはスマホを取り出し、渡してもらったLINEIDを入力した。
画面に映った悪魔のLINEアイコンを見て、少し笑う。
「あぁ、そのタイプの人ね」
悪魔は幼少期のころの自分の写真をアイコンするタイプだった。
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