第14話 やられた……

「ゲームを始める前にカードに細工がないか確認させてください」

「とてもいい心がけだね。満足するまで調べればいいよ」

 ノアからカードを受け取ると、しげしげと調べるかのように念入りにカードを眺めて見せる。

 カードの模様のわずかな差で数字を判別するテクニックがあるらしい。

 でもぱっと見わからないからこそ、イカサマに使われるのであって、私がぱっと見たくらいでは私にはわかりっこないこともわかっている。

 でも、私にはこのカードに仕掛けがないか知る方法があるのだ。

「このカードに細工などありませんよね」

「あぁ、ごく普通のその辺で売られているカードだよ」

 加護を使うことでノアの言葉が浮かび上がり彼のいっていることが本当だと確信を得る。

 カードへの細工がないことを確信した私は、適当にカードを調べるふりをしてカードをテーブルの中央に置く。



 普通のハイ&ローだと、めくられたカードの次の手札が大か小かを賭けるものだ。

 でも、そのルールでプレイするのでは私の加護の力が使えない。

 運任せとなってしまう。


 だから、ゲーム自体を私に有利になるように返るのだ。

「通常のゲームのやり方では、ゲームをやりなれているヴィスコッティ様に勝てませんから、少しゲーム内容をかえてもかまいませんか?」

「かまわないよ」

 ノアはよほど自信があるのだろう、ルール変更をあっさりと承諾したのだ。

「普通に次のカードが大きいか小さいか当てるのではなく、カードを引いて数字をみる。次のカードの数字を相手がみる。その上で話術で相手が持っている次のカードの数字は自分が持っている数字より大きいか小さいか当てるというのはどうでしょう。

 いくつか質問して、もちろん質問の答えはウソでも本当でもかまいません」



「なるほど、質問して相手の表情から読み当てるということだね。かまわないよ。ただ、私からもひとついいかい?」

「えぇ、何かによりますが……」

 私の要求を飲んでもらったことでなんだかノアの要求を断りにくい。



「暑さにだいぶまいってしまったようでね。そのやり方だと1ゲーム行うのに時間がかかるだろう? だから3ゲーム先取したほうが勝ちではなく、1ゲームで白黒つけたい」

 炎天下にいさせたことがあだとなった。

 このままでは熱中症になるかもしれないし、その怖さは畑の水やりに駆り出される私には十分わかっている。

「大変、早く室内に移動して何か飲み物を」

「折角おもしろいところなんだ。移動して勝負に水をさしたくない。どうだろう?」

「それでかまいません。では、私が最初にカードを引いて、次のカードをヴィスコッティ様が引く。そして、私がいくつか質問をいたします。それで、私の持っている数字は大きい数字か小さい数字か当てるでよろしいですね? あっ、これは表情などから推測するので、私の質問に対して沈黙はなしでお願いしますね」

「もちろん」

 ノアは具合が悪いのか、返事はよかったが表情はすぐれない。

 早く終わらせなければ。



 今回のゲームは明らかに私のほうが有利なはずだった。



 質問に対して沈黙はなしとした。

 だから、ノアは私の質問に答えなければいけない。

 沈黙されてはコールドリーディングが使えないから。


 私の引いたカードはQ《クィーン》、これより大きな数字はK《キング》とA《エース》しかない。

 確率的にも、ノアが私より小さい数を持っている可能性が高い。

 でも、念をいれて私は加護を使う。



「私のカードはQ《クィーン》、ヴィスコッティ様の引いたカードは私のカードより小さな数字ですか?」

「先ほど引いたカードは君のカードより大きな数字だよ」

 ノアはウソを顔に出さないようにするのが上手い。動揺が見てとれないし、彼はウソをつきなれているのだと思う。

 こんな相手には、コールドリーディングは通用しない。

 でも、私の加護は違う。



 ノアの言葉がぼんやりと宙に浮かぶ。

『先ほど引いたカードは君のカードより大きな数字だよ』ウソ、ウソ、ウソ。

 やはり、ウソか。

 相手が悪かったのよ、普通の人であればノアが動揺もみせずに平然と答えれば、迷いが出る。

 確率的には、小さな数字を引いていても何らおかしくない。

 もう知りたいことは知った。だからこそ、これ以上無理にゲームを長引かせる理由もない。


 占い師のことはこれで、綺麗さっぱりと諦めるといいわ、ノア・ヴィスコッティ。



「もう、結構です」

「まだ、質問は一つしかしてないが」

「我が領で、ヴィスコティ様が倒れられては困りますもの」

 もっともな理由を告げる。



「それはすまない。でもゲームが早く終わるのは助かるよ。それで、マクミラン姫君の答えは?」

「ヴィスコッティ様の持っているカードは私の持っているQ《クィーン》よりも低い数字」

「どうしてそう思う?」

「確立ですよ。表情からは読みとけなかったので、ならば普通は確率の高いほうにかけるかと……」

「なるほど」





 ノアはそういうと、カードの数字を見えるようにテーブルの上に置いた。



 カードオープン前から私には結果がわかっていた。

 だから、カードは見る必要もないはずだった。


「私の勝ちだ」

 ノアがそういったのだ。

 慌てて、テーブルの上にあるカードに目をやると、そこには信じられないことに

A《エース》があった。

「嘘よ、イカサマだわ」

 間違いなくノアの引いたカードは私のカードよりも低い数字のはずだ。となると、考えられることはただ一つ。

 ノアが何の迷いもなく、私相手に手段を選ばずイカサマをやってのけたのだ。

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