姫岡わこの場合


私の幼馴染は、双子だ。

しかも男の子二人だから、私は優しくされて育っていった。

お兄ちゃんの宗久むねひさ。弟の宗人しゅうと

産まれた時から一緒で、高校生になってからも離れることはなかった。


私の名前が姫岡わこだから、二人は私を『姫』と呼ぶ。

思春期には入ってもそのままで、周りの目が気になって止めてと言ったけど、変えてくれることはなかった。

だから今は、諦めて好きに呼ばせている。


二人は私が大好きで、私も二人が大好き。

それが変わることはなく、何があっても離れなかった。

同じ日に産まれた私達には、色々なエピソードがある。

病院も同じだったのだけれど、看護師さんが間違ったのかわざとなのか、二人の間に私のベッドが置かれた。

だから二人はいつも、私の方を向いていたらしい。

見る度に同じ格好をしていたから、二人の親は私がどんな子か気になって、そこから交流が始まった。

このきっかけがなかったら、もしかしたら仲良くなっていなかったと思うと、人生というのはささいなことで大きく変わるのだと感心してしまう。


他にも面白いのは、病院から退院して遊び始めてからだ。

親同士が仲良くなったから、それぞれの家に行く機会が多かった。

それは早いうちに同い年の子と触れ合って、幼稚園に行った時に困らないようにしようという考えからのものだった。

そういうわけで私達は、親の微笑ましい顔を向けられながら遊んでいたのだけれど。

不思議に思われるぐらい、変な遊び方をしていたらしい。

三人で集まっているのに、何故か一緒に遊ぶのは二人だけで。

私と宗久。私と宗人。

きっかり同じ時間遊んだら、交代する。

それを、ずっと繰り返すのだ。


見ていた親は、何度か三人で遊ぶように言ったらしい。

それでも遊び方を変えることはなく、そのままになってしまった。

だから私達は、今でも遊ぶ時は二人だけだ。

おかしいと感じたことはないし、当たり前になってしまったから三人でいる方が変な感じがする。

大きくなってから遊ぶ内容が変わっていったおかげで、それぞれと遊ぶのが退屈だと思うことはない。


宗久と遊ぶ時は、どちらかというと室内の方が多い。

性格が穏やかだから、ゲームをして遊んでいても私より上手なはずなのに、わざと負けてくれる。

あとは、宗久とは無言の空間でも耐えられる。

二人で特に話さず、並んで座り別々のことをしていても楽しいと思う。


宗人と遊ぶ時は、一転して外出することが多い。

新しく出来たテーマパークや、ゲームセンター、メジャー施設。

どうやって調べているのか、私が気に入りそうなところを目ざとく見つけて、連れていってくれる。

毎回楽しくて、私は一緒に遊ぶと時間が足りないと思ってしまうぐらいだ。


そういう感じで、二人は全く性格が違う。

宗久は冷静沈着で穏やか。

宗人は明るく元気。

そんな正反対の二人なのだけれど、仲は悪くなかった。

むしろ良い方で、たまに私を置いて楽しそうに話している時もある。

何を話していたのか聞いても教えてくれないから、私は仲間外れにされた気分で拗ねる。

そうすると、すぐに気づいて機嫌を取ってくれるから、本気で怒っていなくてもよくその手を使ってしまう。


私たち三人は奇数という人数であっても、こうして上手くやっていた。

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