サンタさんの正体に関する考察

秋田健次郎

サンタさんの正体に関する考察

今日は12月24日、クリスマスイブである。例年通り私はサンタさんへのお願いを書いた紙を靴下の中に入れ、枕元に置いている。物心ついた頃から何の疑いもなくサンタさんからのプレゼントというイベントを受け入れてきた。

しかし、子供のみが一切の代金を支払うことなく、指定した物品を手に入れることが出来るという事実の不自然さに気が付いたのは去年のことである。ただ「これが欲しい! 」という旨を紙に書けば、それが翌日枕元にセットされているとは一体どういうプロセスであるのだろうか?私は3つの仮設を立てた。


1つ目は企業説だ。サンタさん事業を行っている会社が最新技術を用い、子供たちが欲しいものを書いている紙の内容を読み取る。事前に契約していた各玩具メーカー等から物品を受け取り顧客の枕元にセットする。

この仮説が正しければ、私が2年前にお願いした10万円近くするヘッドセットが届かなかったことにも説明が付く。おそらく、その会社はオーディオメーカーとは契約しておらず手に入れられなかったのだろう。また、2日前に母親が

「サンタさんのプレゼントもうちょっと違う方がいいんちゃう?」

と言っていたのも企業が入手できない可能性を考慮していたからだろう。


2つ目は町内会説である。毎年、町内会の会員が近所の子供がお願いするものを把握しておき事前に購入、当日の夜に家に侵入してプレゼントを枕元にセットする。プレゼントを購入する際の資金源は町内会の会員が出し合うことで負担が軽くなり、また子供の欲しいものを事前に把握することも容易であることからかなり可能性が高いと考えている。2年前に近所のおばちゃんから

「サンタさんのプレゼント、安い方がええで。サンタさんかわいそうやろ。」

と言われた際も当時は何も考えていなかったが、お金を出したくないが故の発言であったと考えるとつじつまが合う。


3つ目は自然現象説である。12月24日に子供が欲しいものを紙に書き、それを靴下の中に入れて枕元に置いておくことで翌日それが現れるという自然現象が古来より発生しており、その現象にサンタさんという概念を当てはめたという説である。

まあ、非現実的であることは理解している。


とにかく、サンタさんの正体を突き止めるために今夜は確固たる意志を持って眠らないと心に決めている。そして、ただただ眠らないよう意識を強く持ち続け、ちらっと時計を見てみるともう深夜の1時を回っていた。いつもならとっくに深い眠りについている時間だ。そろそろ来るはずだと耳を澄ませていると、ゆっくりと階段を上がってくる音が聞こえた。私の部屋の前でその音がやむとゆっくりと扉が開き、その様子を薄目でじっと見つめていた。

そこにいたのは赤い服と赤い帽子をかぶった見知らぬ男だった。これは職員か?だとするなら仮説1が正しいということだろうか。私はそう考えたが男が近づくにつれてそうではないことが分かってきた。男は手にプレゼントではなくナイフのような刃物を持っており、服と帽子の赤さはどこか血のように見えた。まずい、と思い逃げようとした時にはもう遅く男は駆け寄ってきて私の腹にその刃物を突き刺した。


その瞬間に私は飛び起きた。瞬時に私が寝てしまっていたこととさっきまでの光景が夢であったことを理解した。私は心の底から安堵すると共に、目の前にいるプレゼントを持ったよく知る2人と目が合い3つの仮説全てが外れていたことと来年からサンタさんのプレゼントがなくなるであろうことも同時に理解した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サンタさんの正体に関する考察 秋田健次郎 @akitakenzirou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ