第4話〜私のお嬢様②〜
今日の大学の講座が終わったのが2時前だろうか。
私は萌佳と別れた後、すぐさま北条院家に向かうことにした。ただし、移動手段は自転車である。
大学の駐輪所に止めたMy自転車の鍵を財布から取り出して、ロックを解除する。そして大学の門まで行くとしっかりと自転車のペダルにまたがる。
「よし!!」
顔をぺチンと叩くと、気持ちを切り替えて感情をオフモードに切り替える。
「時間まではあと1時間ほどですか。これなら余裕で間に合いますね」
口調も徹底して、丁寧語に切り替える。バイトとはいえ、名家に仕えるメイドなのだ。そこはしっかりとしなくてはならない。こういう気のゆるみがミスを招くのも知っている。
「それとこのモードでいかなくてはお嬢様への興奮を抑えきれず、人生をミスってしまいかねませんからね」
そういう二重の意味を込めてここまで徹底している。どうでもいいけど私も萌佳と同人活動やっている以上精神はオタクに染まっている。だから私はこのモードの事を中二病っぽく、『フリージング・ソウル』と勝手に名付けている。
「私はお嬢様に仕えるメイド。心を抑制し、主への手足となる者」
そう言って胸に手を置いて心を落ち着かせる。そして気合を再度入れなおすと、自転車のペダルに足を乗せる。今日に限ってロングスカートで来てしまったので、しっかりとスカートの裾を結んで丈を短くして固定する。
「いざ!!」
その掛け声と共に猛ダッシュで北条院家に向かった。
★★★★★★★★
北条家と大学は大体5kmほど。私なら20分以内にはつける距離である。到着すると時間は大体3時ちょうどであった。
私はすぐさまメイドの着替え部屋に向かって、メイド服を身に着ける。すでにクローゼットには他のメイドさんの着替えがハンガーにかかっている。すでにこの時間の担当のメイドさんが着ているようである。
ちなみに服装は本当にアニメや漫画で出てきそうな派手なもの。この格好はお嬢様の両親の計らいであり、少しでも堅苦しくなりがちのメイドを姿だけでも和らげたいと考えたようである。
まぁ、未祐お嬢様が求めているのはそこではないのはここにいるメイドたちは分かっている。本当に欲しいのは親の愛。お金持ちだが、ある種私の家庭とは対称的である。
「よし、着替えが終わりましたね。では始めますか!!」
そうして私はお屋敷の玄関へと向かう。玄関はまぁ見事なもので大きな玄関の扉を開けると、中央に美術品のような像が置かれており、それを囲うかのように上へと続く、二方向から登れる円上型の階段がある。
そして階段の先に各々の部屋がある。居間や書斎、料理人がいる大きな台所、自室。そして先ほどのようなメイドの着替え場所件休憩場所がある。
私の今の仕事はこの玄関部屋及び、その階段や部屋の前までの掃除である。他のメイドさんもちらほらと姿が見えて作業をこなしている。私も手に持っているコードレスの掃除機で床掃除を行っている。
せっかくなので、ここのメイドとしての働くタイムスケジュールでも教えましょう。
バイトとして雇われているメイドさんは大体平日の15時以降でシフトを組む。働く時間は15時から19時までで最長で20時まで働ける。その間に40分ほどの休憩も入り、19時から20時まではプラス500円の手当がつく。決まりとして週に二日以上は来る事と、15時に間に合わない場合の日はシフトを控える事になっている。
ちょうど大学も前期の中盤で6月になった。この時期の授業のスケジュールで取らなくてはいけない授業がいくつか存在する。そのため私は月水金しか来れていない。
無論、それ以外の日はお嬢様と会えないのである。心底悲しい。しかし今日は週の初めの月曜日で土日というお嬢様と会えない二日間を耐えたご褒美の日なのだ。
「ふふふ~ん!!」
いつも以上にテンションが上がってしまう。しかしながら今は『フリージング・ソウル』モードなので顔は無表情で声にもトーンがきいていない状態だ。はた目からはかなり怪しい。
というかいつも周りからひそひそと噂されるのは日常茶飯事である。
話はそれましたが次の説明をしましょう。
15時以降に来れない人がシフトを組めないのは訳がある。もちろんメイドとして規則を律するのが大事ということもあるが、ここに集まるバイトの子が多いのも一つである。
だってこのバイト一時間1100円なんだもの。高収入バイトなのだ。
もちろん審査が厳しいのはもちろんの事、服装の乱れや言葉遣い、作法などを徹底的に仕込まれる。などはあるのだが、ここにいるメイド長は非常に優しいのが評判でそれは我々学生の間でも噂されるほど。
だから人が集まるのである。ただお嬢様の態度のせいでやめてしまう人もいるらしい。やはりメイドに対する態度や言動が厳しいらしいのである。
ちょくちょく目を当てて泣いている姿も見ることがある。
その度に私は思うのである。
ドМでよかったと。
美少女に罵倒されるのがうれしく感じれるようになったのはほかでもないサブカルチャーを教えてくれた萌佳大先生のおかげだ。足を向いて寝られない。
また話題がそれてしまいました。
お嬢様の問題はあれどやはり、この収入に惹かれて来る人がいるので、しっかりと15時前には来れるという制約を設けて数を厳選してるわけである。
ちなみに、早朝に来てお嬢様の寝起きの準備や朝ご飯の支度をするバイトもある。時間は6時から9時でこれも手当てがプラス500円。月火木は朝の授業がなく、もちろん私はこのバイトにもついている。
これで毎日お嬢様と会えて、さらには月曜日の今日は二回会えるのだ。
前述した通り、お嬢様の態度のせいで直接かかわる機会が増えるこのバイトをやる人は少ない。だがその辛辣な態度プラスお嬢様のお眠りした姿を拝見できる貴重な瞬間を目の当たりにできるのである。
やらないわけがない。
ということで私は現在、月水金の夕方のバイトと月火木の朝のバイトをこの北条院家でこなしているのである。
夕方のバイトは基本的に掃除やお嬢様のお出迎えと書類の整理で、たまにご両親やお客様のお出迎えくらいでそう難しいことではない。
帰ってくるのが楽しみな私は待っているこの時間もとても楽しみ。お嬢様は部活動には入っていないので帰宅するのは大体、16時くらいである。
屋敷の時計を見ると、もう16時前になっていた。それに気が付いた途端である、大きな玄関の扉が開いた。
(あぁ❤ 来ました、私のお嬢様!!!!)
感情はしっかりと抑えて、その高鳴りはしっかりと押さえつける。
「ただいま……」
扉の先。そこにはまた一段とむすっとした表情の未祐お嬢様がいた。
さぁ、至高の時間の始まりです!!!
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