第33話 決着

 一方、そのころ、アドルフと由歩はすさまじい戦いを繰り広げていた。

 アドルフはヘッケラー&コッホG3、由歩はAK47カラシニコフをフルオートで撃ちまくり、瞬く間に2人とも弾を撃ち尽くし、次はアドルフはシュマイザー、由歩はシュパーギンMP41を連射した。

 2人の撃ち合いは続いたが、アドルフも由歩も一歩も引かず、弾は命中せず、2人のサブマシンガンは沈黙した。

「クソ、勝負」

 由歩はMP41を捨てると拳銃、ロシア製バイカルMP444パギーラを取り出した。

「行くぞ」

 由歩が拳銃を抜くとアドルフもヘッケラー&コッホUSPを抜き、森から飛び出した。

 アドルフの姿を確認すると由歩はすぐにパギーラを発砲し、アドルフもUSPを発砲し、すぐに撃ち合いとなった。

 撃ち合いはすぐに終わり、弾倉を付け替えた由歩が相手がアドルフだと気づくと驚愕した。

「デ、デクスターさん、な、なぜあなたが」

 アドルフは静かに答えた。

「ああ、俺だよ。驚いたか、俺はお前たちが目の敵にしてる鴨川たちと組んでるんだ。俺がきたのは情報収集とトラップを仕掛けるためだ。お前たちがガンロッカーから出したアサルトライフルとショットガンが爆発したのは俺が爆薬を詰めた弾とすり替えておいたからだ。お前たちはまんまと罠にかかったというわけだ。」

「く、クソ、鴨川たちと組んでいたなんて、絶対許せない」

 由歩は鬼のような形相になりながらいった。

「ああ、そうかい、あ、もう1つ言っておこうか、俺の名前はデクスターなんて名前じゃない。これは偽名だ。俺の名前はアドルフ、アドルフ・リュッツォーだ。どういうことかわかるよな?」

 アドルフが言うと由歩はすぐに気づいて言った。

「アドルフ、そ、それはヒトラーと同じ、まさか」

「そうだ。俺はイギリス人でもない。俺はドイツ人だ。お前が尊敬する極悪人が毛嫌いしてるな。言っておくが本当の悪人はあの人じゃない。お前が尊敬してるお前の名前の由来にもなったあの男だ。奴のせいで死んだり、地獄を見た人は何人いたと思ってるんだ?それを棚に上げて偉そうにするんじゃない。お前は俺を許さないみたいだが、俺もお前を生かしておけるか、奴と同じ思考回路の人間は生きてる資格なしだ。覚悟しろ」

 アドルフは殺気に満ちた口調で言った。

「く、クソ、死ねえええ」

 由歩はアドルフが言い終えると罵声を発して襲い掛かってきた。

「お前がな」

 アドルフもすぐさま反撃する。

 2人は拳銃を撃ち合い、最後の1発がアドルフの左胸と由歩の右腕に命中した。

「ぐ」

「うわああ」

 アドルフは倒れ、USPを落とした。由歩も右手が使えなくなり、パギーラを落とした。

 由歩は何とか体勢を立て直すと脇に逃げ、左手でもう1丁の拳銃、俺との戦いでも使用したトカレフを必死で抜こうとした。

 一方、アドルフもすぐに起き上がり、ルガーP08を引き抜いた。アドルフは防弾チョッキを着ていたのでダメージはほとんどなかった。

「くらえ」

「くたばれ」

 アドルフと由歩はルガーとトカレフを同時に発砲した。攻撃は外れたが、由歩は再び発砲しようとした。しかし

「な、何」

 由歩の拳銃からは弾丸が発砲されなかった。

 由歩の銃は薬莢が詰まって使用不能になっていたんだ。

「う、う」

 アドルフはルガーP08を由歩に向けた。

「どうやら詰まったらしいな。まあ、当然か、そのトカレフは本物じゃなくて中国のコピーだろ?中国製は信頼性に劣る。本物とは全然違うぜ、俺のはドイツが作った本物だ。どうやら、昔の日本軍が手に入れて大切にしてたやつらしいな。」

 アドルフは言った。そう、由歩のトカレフは本物ではなく中国のノリンコ製、ノリンコT54だったんだ。俺の予想通りだったわけだな。ちなみにアドルフのルガーP08は昔の日本軍が手に入れて使っていたドイツ製の本物だ。本物とコピー、日本と中国の差がここで出たわけだ。

「あばよ」

 アドルフはルガーP08を発砲した。

 由歩は左目を撃ち抜かれ、絶叫した。さらにのどに弾を受け、血しぶきとともに崩れ落ちた。戦いはアドルフの勝利で終わった。

「お前の負けだ。」

 アドルフは勝利宣言をした。アドルフはUSPを拾い、桜の部下の持っていた銃から弾薬を回収するとシュマイザーに補弾し、俺たちと合流するため、走り出した。

 一方、森に逃げ込んだ桜と厚は拳銃、桜はイギリス製スピットファイアマークⅡ、厚は韓国製デーウーDP51を手にビクビクしながらあたりを見渡していた。

「何とか逃げ切れたな。これからどうする?」

 厚が汗まみれになりながら聞いた。

「そ、そうね。何とか、山を下りて新発田市のスラバさんのところに何とか逃げ込みましょう。お金は口座にだいぶあるし、それで何とか」

 桜が答えた。しかし、厚はもちろん、桜もどうすれば逃げ切れるか見当もつかなかった。ただ、桜はその時、由歩が自分たちを助けるために向かっていると信じていたので何とか助かるだろうと思っていた。それに小倉たちもおそらく逃げ切れたはずだから何とか合流できるはずだと信じていた。(実際は由歩はもちろん、小倉たちも全員仕留められ、生き残っているのは自分たち2人と又一だけだったんだが、桜も厚も全く気づいていなかった。)

「そ、そうだな。何とか逃げ切って鴨川たちに逆襲しよう。俺たちの力を見せてやるぜ」

「ええ、そうよ」

 2人は強がりを言うとあてもなく歩き出した。そのとき

「ハアハア、あ、あれ」

 と言って1人の女が2人の前に現れた。

「鷹森、あんた、何してるのよ」

 桜が一応、威厳を保ちながら言った。そう、その女は沙織だったんだ。

「ああ、桜さん、私、怖くて森の中を逃げ回ってたんです。何とか逃げ切ったんですけど、見つかったらどうしようかと思って怖かったんです。会えてよかったです。」

「ふん、そう、あんたでもいないよりマシだわ、私たちが無事逃げられるようにガードして」

「おう、そうだ。鴨川たちがきたら自殺覚悟で戦えよ。」

 桜と厚は俺たちに攻撃されたら沙織をおとりにしようと考えながら言った。

「はい、もちろんです。」

 沙織は桜と厚の考えに気づいていたが気づかないふりをしながら答えた。

「じゃあ、あんたは後ろよ。ついてきなさい」

「はい」

 桜と厚はあたりを見まわしながら歩き出した。

 沙織も歩き出したが、そのとき

「ふふ、桜を始末するチャンスだわ」

 と思い、沙織はほくそ笑んだ。沙織も桜が大嫌いだからいまが復讐のチャンスだと思ったんだ。

「すみませんね。中村さんに絹子さん、私がこいつら殺しちゃいます。」

 沙織はワルサーPPを桜たちに向けて叫んだ。

「動くな」

「な!」

「へ?」

 桜と厚は後ろを向いて沙織が銃を構えているのに気づいて驚愕した。

「た、鷹森、何の真似なの」

 桜はうめいた。

「ふふ、何ってあんたたちを殺すつもりに決まってるでしょ、よくも今まで私をバカにしてくれたわね。思い知らせてやるわ」

 沙織は勝ち誇ったように言った。

「く、クソ、ちょっと待て、まさかお前」

 厚はようやく気付いて言った。

「ええ、そうよ。あんたの思った通りよ。私、中村さんの指示で動いてたのよ。中村さんたちがあんたたちをうまく倒せるようにサポートしてたの、まさか、こんなチャンスが舞い込んでくるなんて思わなかったわ、さあ、地獄に落ちなさい」

 沙織はワルサーPPの引き金を引こうとした。

「それはどうかな?」

 沙織の背中に銃口が突き付けられた。

「ひいい」

 沙織は悲鳴を上げた。

「又一さん」

 桜が笑顔で言った。そう、沙織に銃を突きつけたのは又一だったんだ。

「ええ、俺ですよ。桜さん、鷹森、お前も年貢の納め時だな。とりあえず、銃を捨てろ」

「は、はい」

 沙織はワルサーPPを捨てた。

 桜は凶暴な顔つきになると沙織を地面に倒した。

「きゃあ」

 沙織は地面に這いつくばった。

「ああ、助けて」

 沙織は哀れっぽく助けを求めた。

「ふん、誰も助けに来ないわよ。よくもさっきは思い知らせてやる。」

 桜はそういうと沙織のスカートと下着をはぎ取り、沙織の臀部を露出させた。

「いやああ、な、何をするんですか?」

 沙織は恐怖で発狂しそうになりながら聞いた。

「何って、あんたのお尻に弾丸を撃ち込んでやるのよ。痛いわよ。あんたは散々地獄を味わいながら死ぬのよ。人間のクズにふさわしい最後よ。」

 桜は下品な笑いを浮かべながら言った。

「いやだ。助けて」

 沙織は逃げようとしたがスカートと下着が足に絡まって無様に這いつくばった。

「ああ」

「死になさい」

「へへ、くたばれ」

「あばよ」

 桜たちは沙織に銃を発砲しようとした。しかし、その時、4発の銃声が聞こえ、又一に3発が命中、1発は厚の顔をかすめた。

「ひい」

「な、何なの」

 桜と厚が銃声がした方を見ると淳一たちが拳銃を片手に桜たちの方に向かってくるのが見えた。

「ま、マズイ退却よ。」

「あ、ああ」

 2人は一目散に逃げだした。

「クソ、待て」

 哲磨は厚めがけて、2発発砲したが、木に当たってしまい、命中しなかった。

「クソ、また逃がしたか」

 淳一は顔をゆがめた。

「まったくね。あ、それより、この人を助けましょう」

 彩夏が臀部をむき出しにされてうつぶせになっている沙織を見ていった。

「うん、そうだね。」

 拓斗が沙織を助け起こした。

「あ、ありがとうございます。み、みなさん、中村さんの仲間ですよね。助かりました。」

 沙織は頭を下げた。

「ふふ、いいってことよ」

 彩夏は沙織の丸見えになった臀部を見ながら言った。

「ああ、それより、あんた、さっさとパンツくらい穿いたらどうだ?こいつがじっくり見てるぞ」

 哲磨が彩夏を指しながら言った。

「き、きゃあ、そ、そうでした。す、すみません」

 沙織は慌てて下着を上げてスカートを穿いた。

「よし、じゃあ、俺たちは桜たちを追う、あんたはどこかに隠れてればいい」

「はい」

 淳一たちは桜たちの後を追った。

「はあ」

沙織はワルサーPPを拾い、息をついた。そして、何気なく又一の方を見ると、又一は右肩と左わき腹、右胸に弾を受けていたが、まだ息があることに気づいた。

「う、うごお」

 又一は血を吐きながら倒れた時に落としたデーウーDH380を拾おうとした。

 沙織はデーウーDH380に発砲し、銃を破壊した。そしてワルサーPPを又一の顔面に向けた。

「どうやら、私の勝ちみたいね。くたばれ」

 沙織は又一の顔面に4発を撃ち込み、又一を始末した。

「私の勝ちよ」

 沙織はかっこよく言った。

 そのころ、俺と浩香は桜と厚を探していた。

 俺は銃声が聞こえた方向に浩香と向かっていた。桜たちと淳一たちが戦っているのだと思ったからだ。

 俺と浩香が銃声のした方に向かうと女の罵声と男の悲痛な声が聞こえてきた。俺と浩香にはその声の主が桜と厚だとすぐに分かった。

「来たぞ、桜だ。間違いない」

「ええ、厚に違いないわ」

 俺たちは声のした方向からどこに来るか予想し、木の陰に隠れて2人を待った。すると少しして桜と厚が走ってきた。

 俺たちはすぐに発砲したが、桜たちが転倒したので狙いは外れ、弾は背後の木に当たった。

「だ、誰なの」

 桜はすぐに跳ね起きるとスピットファイアーマークⅡを乱射した。厚も跳ね起きるとデーウーDP51を発砲する。

「だ、誰なの、鴨川」

「く、クソ、誰だ。絹子か」

 桜と厚は震えながら喚いた。

 俺たちはこう答えた。

「ああ、俺だ。だが、桜、俺は鴨川じゃないぜ」

「ええ、そうよ。でも、厚、私は絹子じゃないわよ。」

「な、ど、どういうこと?」

「は、なんだそれ?」

 2人はわけがわからないようだった。

「俺だぞ、忘れたのか?」

「私よ」

 俺たちは2人の前に出た。

 俺たちを見て2人は驚愕した。

「せ、聖夜、な、何であんたが」

「ひ、浩香、お前がどうして」

 俺はこう答えた。

「ああ、教えてやろうか、鴨川と中村の正体は俺だ。お前が浩香を殺そうとしてると知って絶対許せないと思って、お前と戦うことにしたんだ。お前がバカげた理由で俺を苦しめていたのも許せないが、お前はバカげた理由で浩香を殺そうとした。万死に値する。覚悟しろ」

「な、なんですって、ふざけんじゃないわよ。死ぬのはあんたよ。死になさい」

「くたばれ」

 桜と厚は俺たちに向けて発砲してきたが2人の腕は破滅的に悪くすべて外れた。

 俺たちは木の陰に隠れて攻撃を防ぎ、チャンスを待った。

 桜と厚は弾倉を付け替えながら発砲を続けたが、すぐに弾は尽き、罵声を発しながら銃を捨てると予備の拳銃、桜は日本警察に採用されているS&WM360Jサクラ、厚はイギリス製のスターリングリボルバーを取り出した。桜の銃は恐らく買収してあった警察の幹部から横流ししてもらったもので桜がこれを選んだのは名前に「サクラ」という字が入っていたからだろう

「うわああ」

「くらえ」

 2人は銃を発砲したが、すぐに弾は尽き、カチカチという音がした。

 俺たちはその瞬間を見逃さなかった。

 俺は3発、浩香は4発をすぐに発砲、俺の弾は桜の両足に2発、浩香の弾は厚の下腹部に命中した。

「ぎゃああ」

 2人は倒れ、悶絶する。

 悶絶する2人に俺はモーゼルHSC、浩香はS&WM29を抜くとゆっくり近づいた。

「うわああ、やめろ、やめてくれ」

 厚は発狂しそうになりながら喚いた。

「ふん、やめるわけないでしょ。私があんたを許すとでも思ってるの、思う存分、「苦しめてあげるわ」

 浩香は邪悪な笑いを浮かべて言った。

「やめてええ、死にたくない。仕方ないのよ。あんたが私に何かするかもしれないと思って怖くて仕方なかったのよ。だから、正人たちや小野沢先生に頼んであんたに嫌がらせしてたのよ。わ、私、瓢湖でインフルエンザに感染しちゃって危うく死ぬところだったの、インフルエンザはカモに感染して日本に入ってくるっていうじゃない?その日は私、カモにエサをあげてたからその時インフルエンザに感染したのね。それでカモを見ると怖くて仕方なくなって、カモが名前に入ってるあんたも怖くて仕方なくなったのよ」

 桜は言い訳がましく言ったが、浩香はあきれ顔で言った。

「なるほど、あんたが聖夜に嫌がらせさせてたのはインフルエンザで死にかけたからなのね。だけど、1つ言っておくわ、あんたが保育園の時、インフルエンザに感染した時、瓢湖でインフルエンザに感染したカモは1羽も見つかってないのよ。」

 浩香が言うと、桜は発狂しそうになった。

「な、なんですって」

 桜は叫んだ。

「何でって、あんたがインフルエンザに感染した原因はカモじゃないってことよ。あんたがインフルエンザになった時は新潟県でもインフルエンザが流行ってて学級閉鎖になったところも多かったけど、別にカモが原因だったわけじゃないわ、おそらくあんたは瓢湖じゃなくてほかの人混みが多いところに行ってそこでウイルスを持っていた人に移されたんじゃないの?少なくてもあんたはカモからウイルスを移されたんじゃないはずよ」

 浩香は言った。

「そ、そういえば、あの後、安田の遊園地に行って、そこで熱が出て具合が悪いって言ってた人がいたわ、ま、まさか」

 桜はようやく真実に気づいて言った。

「ええ、そうね。間違いないわ、遊園地は人が多いところでいろんな人が来るわ、その時、インフルエンザに感染した人がいてその人のせきやくしゃみでウイルスがまき散らされてそれであんたはインフルエンザになったわけよ。つまり、カモが犯人じゃなかったわけよ。まして聖夜は全く関係ないでしょ?」

 浩香はため息交じりに言った。

「そ、そんな」

 桜はうなだれた。俺も桜を見て「何だよ」と思っていた。見当はずれな理由で俺を苦しめやがって

「で、でもよ。さ、桜から聞いたんだが、インフルエンザはカモに感染して日本に来るみたいじゃないか、実際、鳥からインフルエンザを移された人もいたらしいし、桜が勘違いするのも仕方ないだろ?」

 厚が言ったが、浩香は即座に反論した。

「何言ってんのよ。インフルエンザウイルスに感染するのは人間とカモだけじゃないわよ。鳥で言えばカモ以外のすべての鳥に感染するわ、その証拠に佐渡のトキ保護センターだけじゃなくて今では石川県や東京でもトキが分散されて飼育されてるでしょ。この理由は1か所だけで飼育されているとそこで伝染病が蔓延したりして一気にトキが全滅するのを防ぐためだけど、トキが感染するかもしれない病気の1つがインフルエンザなのよ。それにインフルエンザに感染したことで殺処分されてるニワトリたちのニュースは見たことないの?それだけでもインフルエンザに感染する鳥はカモだけじゃないって分かるでしょ。なんでカモだけを悪者にしなければいけないのよ。」

 浩香はうんざりした表情で言い終えた。

「そ、そういや、ニワトリが殺されてるのをテレビで見たけど、あれってインフルエンザだったのか?」

 厚はそのとき、ようやく事実を知って唖然となっていた。俺はあきれ果てていた。「その通りだ。テレビの字幕とかで出てたし、アナウンサーやコメンテーターもそういってただろ?何言ってんだ今更」

 桜と厚は真実を知って言葉を失っていたが、少ししてこう言いだした。

「し、仕方ないでしょ。わ、私はその時、保育園児だったし、そんなことわかるわけないじゃない。あんた、男でしょ、つべこべ言うんじゃないわよ。」

「そ、そうだ。俺だって遊びのつもりだったんだ。悪意がないんだから俺は無罪だ。」

 2人は言い訳がましく喚いたが、もちろん、俺たちは許す気はない

「何を言っている。保育園児だから何をやっても許されるわけじゃないぞ、ましてお前はもう保育園児じゃない。少しは考えろ」

「そうよ。悪意がなければ何でも許されるわけじゃないわよ。善意でも間違ってるものは間違ってるのよ。あんたは有罪よ。」

 俺たちはモーゼルHSCとS&WM29を発砲した。

「ぎゃああ」

 桜と厚は俺たちから弾丸を受け、絶叫した。厚は浩香からまず5発を受け、瀕死の状態になった後、頭に1発を受け、絶命した。

 桜も俺から6発を体中に撃ち込まれ、悶絶し、最後は口に撃ち込んで息の根を止めた。

「お前の負けだ。」

「あんたの負けよ。」

 俺たちは勝利を宣言した。宣言後は晴れ晴れとした気分だった。

 その時、淳一たちも合流した。

「聖夜、浩香、やったな。俺たちの勝ちだ。」

 淳一が笑顔で言った。

「ざまあみなさい」

 彩夏は桜と厚の死体を見ながら言った。

「まったくだ。」

 哲磨も厚の死体に蹴りを入れていった。

「うん、帰ろう」

「ああ」

 俺は拓斗に返事をし、俺たちはまず、桜たちの車の方に戻った。

 そこではアドルフと沙織がいてアドルフは俺たちとつながりがあるものがないか調べてすべて始末し、桜たちが持って逃げる予定だった8億円も回収し終えていた。

 それと沙織が投げ捨てたワルサーPPK/Sも回収し、念のため持ってきておいた予備の撃鉄もつけて沙織に返していた。

「聖夜、やったな。」

 アドルフは笑顔で俺をたたえてくれた。

「ああ、俺は負けなかった。」

 俺は力強く答えた。

「そうですか、やりましたね。あ、中村さんじゃなくて本当は鴨下さんだったんですね。私はあなたが勝つって思ってました。桜もおしまいですね。」

 沙織は俺に言った。

「ああ、そうだ。これで作戦は終了だ。退却するぞ」

「ええ、そうね。」

 浩香が答えた。

 俺たちは脱出用に用意した車、トヨタ・マジェスタと日産・スカイライン、ホンダ・シビックに乗り込み、脱出した。俺たちは証拠隠滅のため、用意しておいたガソリンを桜の家にまき、盗聴器や俺たちとつながる可能性のあるものを回収してから自動発火装置を仕掛けて脱出した。

 俺と浩香はマジェスタ、淳一たちはスカイライン、アドルフと沙織はシビックに乗って脱出した。俺たちは桜の部下たちから回収した弾薬をサブマシンガンや拳銃に補充していつでも使える状態で用意し、警察の検問があった場合はそれを使って反撃するつもりだったが、検問はなくあっさりと脱出することができた。桜が警察署の署長や幹部を買収していたのが俺たちに有利に働いたということだ。ちなみに署長や幹部たちはその日、温泉旅館でどんちゃん騒ぎをしていて俺たちと桜たちの戦いのことで通報が入ったらしいが、受付はもっともらしい理由でうまくごまかしていたらしい。

 俺たちは無事に逃げ切り、俺と浩香は五泉市に借りておいた借家に淳一たちは秋葉区に借りておいた借家、アドルフと沙織は沙織が借りておいたアパートに着くことができた。

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