第16話 ライフル
「何」
「本当」
「誰だろう」
淳一たちも拳銃を抜くと明かりとして上から吊ってあった懐中電灯を消して部屋を暗くすると物陰に隠れた。
すると玄関から人が入ってくるのが見えた。どうやら4人組らしく、淳一たちがいる部屋に入ってきた。
4人組は全員、ライトを持っていたのでどういう連中かすぐに分かった。
4人組は男3人と女1人の4人組で全員、18歳か19歳くらいで手には拳銃を持っていた。
4人組はすぐに幸子たちの死体を見つけ、死体を見て驚愕していた。
「おい、この人は厚が言ってた早出先生だよな。死んでるぞ」
リーダー格らしい水泳選手のような印象の男がうめいた。
「ああ、こっちは井出先生か滅多刺しにされてる。ひでえ有様だ。」
「こっちは早出先生の息子さんね。彼もひどい殺され方をしてるわ、誰なのこんなことをしたのは」
仲間の登山家風の男とテニス選手風の女も震え声で言った。
「そりゃ、桜ちゃんの命を狙ってる鴨川か中村って奴だろう。この二人以外いないじゃねえんか、こんなことをするのはよ。」
4人目のライフセーバー風の男が言った。
「ああ、間違いない。鴨川か中村だ。奴らどこにいやがる。逃げたのか」
「いや、この家を見張っていたが、誰も外に出ていない。早出先生たちは殺されて時間が経ってないみたいだからまだ、中にいるんじゃないのか?」
「ああ、そうかもしれない。探すぞ」
リーダー格の男が言った。
その時、淳一たちは4人に発砲した。もちろん、クッションを被せて銃声を押さえる工夫をしてだ。
「うぎゃああ」
4人は被弾し、なすすべもなく倒れていった。3人が首筋や心臓に被弾し即死したが、ライフセーバー風の男は腹を撃たれて床で悶絶していた。
淳一たちはすぐに隠れていた場所から出て4人に近づき落ちていた拳銃を取り上げた。
4人組の拳銃はリーダー格の男がロシア製バイカルMP445バリヤグ、登山家風の男が中国製ノリンコNP42、テニス選手風の女がイギリス製、スピットファイアマークⅡ、ライフセーバー風の男が韓国製デーウーDP51でどの拳銃も回収する気になれなかったが、どれも九ミリパラベラムを使用するので淳一たちの銃にすべて使用できる。なので淳一たちは弾丸を抜いてポケットに移した。
そのあと、呻いている男を蹴って仰向けにするとこう切り出した。
「動くな。大人しくしろ、お前らは尾崎桜の部下か」
淳一はシグザウエルP226の銃口を向けながら言った。
「そ、そうだ。俺たちは桜ちゃんの部下だ。桜ちゃんと知り合いの厚ってやつから桜ちゃんを殺そうとしてる鴨川と中村ってやつのことを聞いて早出先生か井出先生を殺して情報を聞き出そうとするかもしれないと思って2人を見張ってたんだ。それで、鴨川や中村らしい男は現れなかったけど、早出先生が夜中に出かけたから不思議に思ってつけてきたらこの家に入っていっておかしいと思ったから、確かめようと思って中に入ったんだ。あ、あんたたちは鴨川か中村の仲間なのか?」
男は激痛に苦しみながら聞いた。
「いや、俺たちは鴨川って人は知らない。ただ、中村さんとは知り合いでね。彼はお前らのボスの桜に怒りを抱いてる。必ず始末するって言ってた。俺たちも桜のことは許せなくてね。中村さんとは別に桜を探してたんだ。桜は今、どこにいるんだ。正直に話したら見逃してやってもいいぜ」
淳一が言うと、男は必死の表情で話し出した。
「わ、分かった。俺は死にたくねえ、正直に言う。俺たちは桜ちゃんがどこにいるか教えられてないんだ。携帯の番号しか教えてもらってない。それで任務の時は連絡がきて桜ちゃんと会って説明を受けて仕事をするだけなんだ。桜ちゃんがどこにいるかは側近しか知らない。だから、俺は桜ちゃんの居場所を知らないんだ。」
「本当か?桜の命と自分の命はどっちが大事なんだ。」
哲磨は鋭い目つきになってナイフを振り上げようとした。
「うわああ、ほ、本当だ。知らないんだ。」
男は発狂しそうになった。
「なるほど、ウソはついてないみたいね。じゃあ、何か手掛かりになりそうなことも知らないの?」
「さ、さあ、あ、そ、そういえば桜ちゃんは鴨川に狙われるようになってから基本的に家にこもってて鴨川と中村を始末するまでは外に出ないとか言ってたけど、よく田上町に自然観察で出かけてたって言ってたな。」
「田上町だね。」
「あ、ああ、小学生の頃から山登りや野鳥観察で連れてきてもらってたらしい。もしかすると俺が気付いてないだけで今も時々来てるのかもしれない。」
「そうか、よくわかった。ほかには何か知ってるのか?」
「そ、そうだな・・・」
男が言いかけたその時だった。
突然、外で銃声がして窓が割れて弾丸が飛び込んできた。
「逃げろ」
反射的に哲磨が叫び、淳一たちは攻撃をかわした。発砲されたのはライフルで何発もの弾丸が襲いかかかり、男にも命中し、身体を貫いて床まで貫通した。
「ぎゃああ」
男は絶叫と血しぶきとともに絶命した。そのあとも弾丸が家の中に撃ち込まれ、弾丸は部屋の中を暴れまわった。
「クソ、マズいぞ、ライフルを撃ち込んできやがった。」
淳一はクローゼットの陰に隠れながら歯ぎしりした。
「ええ、何とかしないと、どうするのよ。」
「とりあえず、攻撃をしのがないと」
「ああ、動くな」
4人は物陰に隠れて身を縮めて攻撃をしのいだ。敵の腕はあまり良くないらしくでたらめに撃ち込んでいるらしいことが4人にも分かった。
銃撃は途切れることなく続いた。そのとき、彩夏があることを思いつき
「きゃあああ」
という悲鳴をわざと上げた。
そのとき、銃声が止み、外から人影が4人入ってきた。
「やったのか?」
リーダー格の20代前半くらいの筋肉質の男が言った。
「さあ、悲鳴が聞こえましたからやったと思いますけど」
「ええ、相当撃ち込みましたよ。たぶん、やったと思います。」
「きっとそうです。探しましょう」
「ああ、そうだな。念のため、弾を補給しておこう」
「ええ」
4人は持っていたライフルに弾を装填しようとした。
その時、淳一たちは拳銃を発砲した。奴らが派手に銃声を立てたから銃声を押さえる必要はないのでそのまま発砲した。
「うわああ」
4人は被弾し、そのまま倒れた。全員、首や頭に被弾し、すでに死んでいた。
「よし、やったな。」
淳一の指示で4人は隠れていた場所から出た。
「ああ、こいつらのライフルをいただいていこう。戦利品としてな」
哲磨が言った。
「ああ、じゃあ、俺はこれにする。」
淳一はリーダー格の筋肉質の男が持っていた銃を手に言った。
そのライフルはアメリカ製のM1ライフルだった。このライフルはアメリカが第2次世界大戦中に使用した3006スプリングフィールドを使用するセミオートライフルで日本でもかつては弾倉をオリジナルの8発から5発に制限したものが狩猟用として普通に販売されていた。今では許可が下りにくくなったらしいが、俺は別に所持許可を出しても問題ないと思う、5発に制限したM1ライフルはほかのライフルと全く同じなんだから
「淳一はそれね。私はこれよ。」
彩夏は目が細い平目顔の偉そうな感じの女が持っていた銃にした。
そのライフルはM1ライフルと同じくアメリカが第2次世界大戦中に使用したM1カービンで三十連発弾倉がついていた。このライフルに使用される30カービン弾は威力は低いものの反動が少ないため、撃ちやすく、この銃の民生品である日本の豊和工業が作りだしたホーワM300カービンは長い間、狩猟用として非常に人気があった。第2次世界大戦の時の日本軍も鹵獲したM1カービンを好んで使用していたらしい。今も5発に制限したものが日本でも購入できる。豊和工業もM300カービンを再生産してくれるといいんだがな。
「俺はこれにするね。」
拓斗はラフな格好の活発そうな男が持っていた銃を手に取った。
そのライフルはウインチェスターM94、西部劇でよく出てくるレバー式のライフルだ。アメリカのウインチェスター社の代表的な銃だ。30―3030ウインチェスターを使用する。30―30ウインチェスター弾はニホンジカやニホンイノシシのような本州に生息している大型動物に適した口径らしい。重さも軽めだから傾斜が多い本州の猟場に適している。俺は散弾銃より、このライフルやM1カービンを大物猟に使った方がいいと思うんだがな
「淳一たちは決まったな。俺はこれだな。」
哲磨は最後に残った茶髪の不良風の男が持っていた銃を選んだ。
そのライフルはアメリカ製、レミントンM7600、レミントンM870と同じスライド式のライフルだ。アメリカだとスライド式の散弾銃が人気だからライフルにもスライド式をということで作られたらしい。哲磨が手に入れたのは308ウインチェスターバージョンだった。このライフルは比較的安価で販売されていてボルト式より素早く操作できるから俺は本州の猟場ではボルト式よりいいと思ってる。まあ、散弾銃と違ってライフルでスライド式を使う人は少ないけどな
まあ、ともかく、淳一たちはライフルを手に入れ、予備の弾や財布なども奪うとすぐに空き家を出た。その時、銃声が聞こえた。
「伏せろ」
「うお」
「いや」
「わあ」
哲磨がすぐに気づいて4人は伏せ、何とか攻撃をかわした。見ると、前方にショットガンを乱射している敵が5人いた。しかし、連中はバックショットではなくスラッグ弾を使用しているらしく12ゲージスラッグ弾の反動を持て余し気味で腕も悪く全く、淳一たちには当たらなかった。
敵が上手く攻撃を仕掛けられないのを見て淳一たちはすぐに脇に逃げ、ライフルを5人に向け、発砲した。
「うぎゃああ」
敵は淳一たちの攻撃で次々と倒れた。4人が倒れた時、最後の1人がかなわないとみて逃げ出そうとした。
「逃がすか」
哲磨がすぐさま、スライドを操作し、M7600から弾丸を発射した。
「ぎゃああ」
そいつは足を撃たれ、そのまま倒れた。淳一たちはさらに発砲、そいつをハチの巣にして始末した。
「よし、さっさと脱出だ。」
4人はすぐに逃げ、淳一と彩夏がギャラン、拓斗と哲磨はフーガに乗り込み、すぐに車を発進させた。
4人が逃げ出すとすぐにパトカーのサイレンが聞こえてきた。今回も危ういところだった。
淳一たちはライフルを後ろの席に置き、いつでも使えるようにしておいた。検問を避けるため、大きな道を避けて脇道を通り、南区まで逃げた。
南区に入るとトランクにライフルを移し、検問が行われている橋を通った。
淳一たちは遊びに行った帰りの大学生ということで難なく検問を通過することができた。哲磨は見た目が悪人にしか見えないので不審がられたが、担当の警官が女だったからか、拓斗が爽やかな笑顔で話し、哲磨も紳士的な口調ですらすらと話すとすぐに検問を通した。
検問を通過すると4人、特に淳一と彩夏は胸をなでおろした。
淳一たちと哲磨たちはそれぞれ違う場所で車を停め、指紋を消した後、奴らがライフルを運ぶのに使ったゴルフバックやギターケースにライフルを入れ、誰にも見られないように注意しながら浩香の家に着いたのだった。
家に着いたのは淳一たちが先で哲磨たちはそれから、20分ほどたってから家に着いた。
「何とか、無事に終わったな。桜の居場所は分からなかったが、収穫はあった。ほとぼりが冷めたら田上町を探してみようぜ」
淳一が言った。
「ええ、そうね。ライフルも手に入ったんだし、桜の部下たちがアサルトライフルを持ち出してきても負ける気がしないわ、あいつら、例外なく腕が悪いし」
彩夏が浩香に頼んで買ってきてもらったビールを冷蔵庫から出してきて言った。
「うん、そうだね。俺たちが負けるわけないよ。桜も見つけ出して絶対、倒そう」
「ああ、当然だ。」
哲磨がサラミとブルーチーズ、スモークサーモンを切りながら言った。
それから淳一たちはビールで乾杯した。1本目は一気に飲み干し、2本目も飲み終えた時、彩夏が
「そういえば、私たちのことがテレビでやってるはずよ。つけてよ」
「うん」
拓斗がスモークサーモンを食べながらテレビをつけた。
テレビでは淳一たちのことが派手に取り上げられていた。秋葉区では検問が敷かれて大混乱になっているらしかった。
「大混乱みたいね。まあ、すぐに収まるでしょうけど」
彩夏が3本目のビールを飲みほしながら言った。
「ああ、そうだ。1週間くらいだ。みんなが大騒ぎするのはな」
淳一もサラミを食べながらうなづく
その時だった。別のニュースが入った。三条市で銃撃戦があり、多数の死者が出たというニュースだった。
「これって」
「ああ、聖夜たちがやったのか」
4人はすぐに気づいた。
その通り、その三条市での銃撃戦は俺と浩香によるものだ。俺たちが何をしていたか話そう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます