第14話 醜悪な教師たち
それからまた、4週間が過ぎた。
俺たちの事件は派手に取り上げられたが、その時にはすでにほとんど報道されず世間からも忘れられかけていた。
俺たちと死闘を演じた桜の部下たちは全員、チンピラやフリーターのようないなくなっても誰も気にしないような連中で桜や俺たちにつながるものは何も持っていなかったらしい
厚の母親の死体が発見されたことから母親が売春の斡旋をしていたことはすぐにばれ、母親は女だけでなく男を世話したこともあると顧客リストからわかり、客の中に野党の女政治家の名前もあったことから、この政治家が事件に関わっておるのではという憶測が流れ、自民党も国会で追及したが、その女政治家はレストランに行っただけだとあくまで言い張り、自分は買春もしていなければ事件とは何の関係もないと言い続けた。しかし、この女の言うことは不自然で何度も厚の母親から男を紹介してもらっていたのは明らかだった。
それ以外にも母親から女を買った相手が事件に関わっているのではと推測されたが、証拠は何もなく、まして母親から女を買った相手は外国人も多く、すでに出国したあとなので、どこにいるのかもわからず捜査は難航していた。そして、厚の血痕が見つかったが、厚がいまだに行方不明なので事件に巻き込まれ、今もどこかに監禁されているのか、それとも殺されたのかわからず、今も捜索が続いているらしかった。厚が行方不明なのは桜にかくまわれていて、警察に駆け込んだりしたら厚にとっても都合が悪いからだと俺は思った。おそらく、桜の部下がどこかにいてそいつが厚を助けて桜のところに運んだんだろう
それと、母親が持っていた聖篭町の別荘が荒らされていたという記事も載った。これは厚が桜に頼んで別荘に隠してあった2億円を俺たちに奪われないように回収したからだとすぐに分かった。
まあ、ともかく、俺は厚たちと戦った次の日、豊栄駅から淳一たちに連絡を取ったが、淳一たちは脇道を通ってうまく、東区のアジトに逃げ込んだらしかった。淳一たちは学校をよく休んでいるので今回も検問が解除されるであろう4日目までアジトに籠城するらしかった。
俺と浩香は真面目に毎日、学校に通っているので淳一たちに連絡した次の日、日曜の午後に電車で新潟駅を通って新津駅まで行き、そこからバスで浩香の家に戻った。拳銃とサブマシンガンはスポーツバックに入れて運んだが、俺と浩香を疑う人間は全くいなかった。
次の日、俺たちは何食わぬ顔で学校に登校した。学校でも派手に取り上げられたので俺たちのことは話題になっていて何人かは俺に聞いてきたが、俺は「ヤクザか犯罪組織同士の抗争じゃないかな?」と答えておいた。
それと、クラスメートの1人、横田君が浩香に淳一たちが休みなのは何でか聞いてきたので浩香は「確か私にはどこかに遊びに行くとか言ってたけど」と軽く答えておいた。
ちなみに横田君は淳一たち以外で浩香と親しく付き合っているクラスメートでどこか古典的だが、端正な顔立ちでかつての日本軍やドイツ軍にも詳しく浩香と話が合うので結構、話をしているらしかった。
彼は浩香が答えるとそれを真に受けて淳一たちはどこかで遊んでいるのだとほかのクラスメートに話していた。これは俺たちにとっても都合がいい
俺は放課後に淳一たちに連絡し、戻ってきたらどこかに遊びに行っていたことにしておけと指示した。
淳一たちは「おお、そうだな」と即答し、それから2日後に登校した時には佐渡に行っていたことにし、佐渡の土産ということで佐渡汽船で買った佐渡の名産品を持ってきた。もちろん、佐渡汽船でこれを買うときには変装し、誰だかわからなくしておいた。クラスメートたちは淳一たちの話を信じ、ありがたく土産をいただいた。
そんなことをしているうちに時間は過ぎ、俺たちは次の作戦を進めることにした。
桜と仲良くしていた教師は小野沢守弘という男で俺の中学の時の担任だった。
この男がどういう男かというと俺の中学1年からの担任で当時29歳、育ちのいい良家の青年といった感じで誰にも優しくクラスメートたちから人気もあり、ほかの教師たちからの評判も上々だった。
しかし、この男はメンへラスイーツ、脳内お花畑の小学生のいい子ちゃんみたいな考えの男でよく、命の尊さだとか平和の大切さとかを口にしていたが、言っていることはもっともらしいが言い方が小学生のような感じで中身が空っぽで俺はこれっぽっちも賛同できなかった。
それと、国語を教えていたんだが、教科書で戦争を扱ったページになるとやたら熱心に教えてそのたびに日本(それとドイツ)の悪口を熱心に語っていたので俺は特に日本の悪口を言っているときの小野沢が銃規制の奴らや環境保護の奴らと似た感じに思えてすごく嫌悪感を抱いたのを覚えている。
それと、小野沢はいじめ肯定論者で「いじめっ子にもそれなりの理由があるんだよ」とか「彼らは悪気なんてないんだよ。」と言っていじめをやる人間をいつも肯定していた。だから、俺が正人たちに低レベルな嫌がらせを受けていた時も小野沢は正人たちの肩を持って笑って見ているだけだった。
そんなこともあって俺は小野沢のことを毛嫌いしていた。そして、卒業式の時、正人たちを半殺しにしたときに正人たちを助けようと近づいてきた小野沢にも顔面を殴って顔面骨折の重傷を負わせて失神させてやった。俺は失神した小野沢を見て「ざまあ、見やがれ、幼稚なきれいごと野郎」と思った。
まあ、ともかく、俺たちは小野沢を捕らえ、尋問する作戦を決行することにした。
小野沢の居場所は淳一たちが昔の教え子を装って聞き込み、1週間で調べ上げた。
小野沢はその時、三条市の中学で教えていてその中学でも生徒や同僚からの評判は上々らしかった。
しかし、淳一と彩夏がカップルを装って小野沢を尾行するとあることが分かった。
小野沢は実はロリコンで三条の街中で高校生や中学生に声をかけていて、何人かは住んでいるアパートに連れ込んでいた。
淳一と彩夏からそれを聞いて浩香はすぐに小野沢を罠にかける作戦を思いついた。なのですぐに小野沢を仕留めるための準備をすることにした。
それと、同時並行で厚と組んで浩香を苦しめていた早出幸子と井出千恵の抹殺作戦も決行することにした。
本当は張本勝吾も一緒に始末してやりたかったんだが、中学を卒業してからどこかへ引っ越したらしく、友達を装って行き先を調べたが、勝吾の居場所は分からなかった。だから、まず、幸子と千恵の抹殺を優先することにしたんだ。
俺たちは小学校の教え子に成りすまして2人の行方を追った。
幸子は西蒲区、千恵は中央区の小学校に勤めていて、幸子は西区のアパートで息子と2人暮らしで息子は今、23歳だが、いわゆるニートで働きもせず、家でゲームをしたり、フィギアを買いに行ったりしているらしい。しかし、幸子は息子を溺愛しているらしく何も言わずに甘やかしているらしかった。
ちなみに幸子はすでに50代だからか恋愛に興味は全くなく、休みの日に友達とお茶を飲んだり、買い物にいくだけだが、息子はかわいい恋人が欲しいといつも思っているらしかった。
一方、千恵は30代半ばだが、いまだに独身らしく、千恵はいつも金曜の夜に仕事のあと、バーに寄って1人で遅くまで飲んでいるらしかった。
俺と浩香は2人の行動パターンから作戦を練り上げた。そして、厚たちと戦って4週間が過ぎたころ、俺たちは作戦を決行することにした。
その日は日曜日で浩香はいつも通り、濃い青色で飾りとかは一切ついていないものの、かなりかわいらしいデザインの服とミニスカートを着ていた。
さすがにいくら工夫してかわいく見えるようにしているとはいえ、いつものシンプルな服では地味さが出てしまうと思って新しく買ったんだ。浩香は試着して俺たちに「どう?」と聞いてきたが、俺はもちろん、淳一たち(特に哲磨)もすごく似合っていると思った。
浩香はその服装で燕三条駅で小野沢を待っていた。
浩香が待ち始めて10分ほどすると小野沢が爽やかな笑顔で現れた。
「お待たせ、絹子ちゃん、今日は楽しくやろうね。」
小野沢の口調は紳士的だったが、どこか職業的な感じがして浩香は少女を誘うときにこんなしゃべり方をしているのではと思った。
しかし、浩香はもちろん、顔に出さず、恋愛について奥手な少女を演じながら言った。
「はい、守弘さん、わ、私、男の人と一緒に遊ぶのは初めてなんです。よろしくお願いします。」
「うん、僕に任せてよ。」
小野沢は浩香を誘って停めてある車、白のホンダ・Nボックスに乗り込んだ。
「じゃあ、行くよ。」
「はい」
小野沢はNボックスを発進させた。そのあとを俺は上越市で手に入れてきた銀色のホンダ・レジェンドで追跡した。浩香は小野沢に行きたい場所をいい、小野沢は上機嫌で車を走らせた。
一方、淳一たちは幸子の息子、由紀夫と千恵をそれぞれ、万代シティバスセンターと長岡駅で待っていた。
彩夏は中央区のメロンブックスで由紀夫に出会い万代シティバスセンターで由紀夫を待っていた。由紀夫はニートらしくだぶだぶのパーカーと色あせたジーパンというだらしのない恰好で登場し、ニヤけた気色悪い笑いを浮かべていて彩夏は「ふん、クズニート、誰があんたなんかと」と罵っていたが、もちろん、顔には出さずに「由紀夫さん、待ってましたよ。」とあふれるような笑顔で答えた。
「うん、来たよ。愛美ちゃん、俺、デートは初めてなんだけど、絶対、君に楽しんでもらうよ。」
由紀夫は自信満々な表情で言い切った。
「そうですか、じゃあ、お願いしますね。」
「うん、もちろん」
2人は歩き出した。そのあとを淳一は通行人を装って追っていった。
そして、哲磨は長岡駅で千恵を待っていた。
「ごめん、健一君」
千恵は学級委員長のような気真面目そうな恰好で現れた。
手にはエルメスのバックを持っていて、哲磨はすぐにそのバックが浩香を転倒させたときに厚から渡されたものだと気付いて「そんなもののために浩香を」とすさまじい怒りがこみ上げてくるのが分かった。しかし、今、千恵を攻撃するのはあらゆる意味でマズいので哲磨はなんとか怒りを抑えて緊張した表情の千恵に「待ってたぜ、今日は俺に任せろ」と言って「え、ええ、お願い」とぎこちない表情になっている千恵を誘って長岡の街に繰り出した。そのあとを拓斗は長岡駅で買ったアイスを食べながらついていった。
淳一たちは俺と浩香が事前に調べて練り上げたデートコースを千恵たちと周った。俺は由紀夫と千恵が好きそうな場所を選び、監視カメラがついていない場所やついていても死角となる場所を調べ上げてあったので淳一たちはカメラに映ることなく千恵たちを案内することができた。
そして、夜、中央区と長岡市の小さなレストランで食事をした後、彩夏は由紀夫、哲磨は千恵に家に来ないかい?と言って誘いをかけた。2人はあっさりと誘いに乗り、淳一たちは新潟市秋葉区、かつては新津市と呼ばれていた地域で俺が見つけておいた空き家に千恵たちを案内した。
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