第13話 スターリンの逆襲
「く」
俺は何とか攻撃をかわしすぐに近くの木の陰に隠れ、浩香たちも厚の家の中に隠れて攻撃をかわした。しかし、厚は
「助けてくれ」
と叫びながら逃げ出していった。
「おい、待て」
俺は叫んだが、厚はものすごい勢いで走り去っていった。厚が逃げ出すとすぐにフルオートの銃撃が再開された。使われているのはすべてサブマシンガンで6丁が使われていると判断した。
俺はP232を腰に差すとベレッタ92FSを取り出した。敵が銃声を派手に立てた以上、サイレンサー付きの銃を使う必要はないし、P232は撃ち合いには向かない
閃光で敵の位置が俺にはすぐに分かった。やつらの腕はフルオートで撃っていることもあってか破滅的な悪さで弾は俺たちとは全く関係のない方向に飛んで行った。俺はやつらが弾を撃ち尽くしたときに一気に攻撃をかけることにし、木の陰に隠れながら待った。浩香たちも俺と同じらしく、やつらが発砲を続けている間は攻撃を控えた。
やつらの攻撃は2分もたたないうちに終わり、弾切れになったやつらは慌てて弾倉を取り換えようとした。
俺はそのすきを見逃さなかった。すぐに木の陰から出てベレッタ92FSを敵めがけて発砲した。
浩香もその時、物陰から身を乗り出してブルーノCZ75を素早く発砲した。淳一たちも浩香に続いて発砲した。
「ぐぎゃああ」
俺たちの攻撃は正確で敵は次々と被弾し、倒れていった。俺は弾倉を付け替えて慎重に忍び寄ると男が4人、女が2人その場に倒れていた。
浩香もCZ75を構えながらすぐに駆け寄ってきて、淳一たちもすぐに駆け付けた。
「やったわね。聖夜、さっき、撃たれたけど大丈夫?」
浩香が心配そうに聞いた。
「ああ、大丈夫だ。被害はない。それより、早く退散するぞ、こいつらが派手に銃声を立てたからパトカーが飛んでくる。」
「そうだな。さっさと退散しようぜ、それより、こいつらのマシンガンをいただいとこう」
淳一が言った。
「そうね。私はこれよ。桐山も映画だとこれを使ってたし」
浩香は最初にリーダー格らしい一番年上の男が持っていた銃を選んだ。
その銃はイスラエル製のウージー9ミリサブマシンガンだった。この銃はイスラエルが1950年代に開発した世界的に知られている高性能なサブマシンガンで重量があるもののそのせいかフルオートで撃っても反動が少なく精度が高いまさに名銃だ。浩香が言うとおり、「バトルロワイアル」でも登場し、桐山も映画で使っていた。原作だと桐山が使ったのはイングラムM10なんだが、俺はこっちの方が様になってると思う
「ああ、そうだな。桐山の映画での愛銃がそれだ。俺はこれにしよう」
俺は長身の筋肉質の女が持っていた銃を手に取った。
その銃はドイツ製ヘッケラー&コッホMP5でドイツが完成させた反動も少なく精度が非常に高いサブマシンガンでドイツはもちろん、日本、いや世界中で使用されている。ちなみに俺が手に入れたのはサイレンサー内蔵型のSDモデルでストックのないSD4モデルだった。
「俺はこれにするぜ」
淳一はゴリラのような顔つきの小柄な男が持っていた銃を手に言った。
その銃はオーストリア製ステアーTMPでこの銃はステアー社がMP5に対抗して作り出したサブマシンガンで残念だが、MP5の牙城を崩すことはできなかったが、MP5より小型で扱いやすく安価でかなりの高性能な銃だ。ステアー社が作り出した名作の一つだと俺は思う。今もスイスで製造が続けられているらしい
「淳一はそれね。じゃあ、私はこれ」
彩夏は二流のマラソン選手のような女が持っていた銃を手に取った。
その銃はチェコのブルーノ社製Vz61スコーピオンだった。Vz61は32ACP弾を使用する超小型のサブマシンガンだ。冷戦時には東側の共産主義国家で製造が行われていたらしい。俺は小型で軽量だから非常に取り扱いがいいサブマシンガンだと思っている。
「俺はこれにするよ。」
拓斗はキツネのような顔つきの眼鏡をかけた男が持っていた銃を選んだ。
その銃はイタリア製ベレッタM12Rだった。この銃はベレッタが完成させたサブマシンガンでイタリアで使われてきた銃だ。俺も写真で何度も見たが、さすがベレッタの製品と思うほど、様になっていて魅力的に思えた。
「よし、じゃあ、俺はこれか」
哲磨は最後に残ったジャガイモ顔の男が持っていた旧式の銃を選んだ。
その銃はアメリカ製、M3サブマシンガン、通称グリースガンで45ACP弾を使用し、第二次世界大戦中に開発されたが21世紀になってもフィリピンで現役で使用され続けているまさに名銃だ。有名なトンプソンサブマシンガン、通称トミーガンより、安価に作れて精度も高い。だから、21世紀になっても現役なんだろうな
話はそれたが、淳一たちがサブマシンガンを選ぶと俺たちはすぐにその場から退散することにした。さっさと逃げないと面倒なことになると思ったし、厚がまだ近くに隠れているかもしれないと思ったんだ。厚は負傷しているから遠くには行っていないはずだ。
「よし、厚はまだ遠くへは逃げていないはずだ。それに母親が父親を事故に見せかけて殺したことをばらされたらヤバいから警察に行くはずはあるまい。探すぞ」
俺はMP5を手に言った。
「ええ、そうね。厚の奴見てなさい」
浩香もウージーを構えながら言った。
俺たちが厚の家から離れて辺りを見回したその時だった。
突然、フルオートの射撃が聞こえてきた。
俺はすぐに叫んだ。
「伏せろ」
「きゃあ」
「うわ」
「いやあ」
「わああ」
「く」
俺たちは準備期間に練習していたこともあり、何とか攻撃をかわした。俺は地面に伏せながら桜が援軍を出動させたのだと直感した。敵は何人もいるらしく少なくとも10人はいるらしかった。
「隠れろ、反撃だ。」
俺は物陰に隠れながらMP5を銃声がした方に向けてフルオートで発砲していた。
俺がサブマシンガンを撃ったのはこの時が初めてでうまく当たるか自信がなかったが、俺は腕力があるためかMP5を正確にコントロールし、敵に弾を命中させることができた。
敵は絶叫を上げ、倒れた。俺が射撃を開始すると浩香たちも攻撃を開始し、淳一たちは浩香からサブマシンガンをフルオートで撃つと反動で命中率が悪くなると聞いていたのでセミオートで発砲していたが、浩香はフルオートでウージー9ミリサブマシンガンを発砲していた。
浩香もサブマシンガンを撃ったのは初めてだったんだが、俺と同じで狙いは正確でたちまち一人を撃ち仕留めた。ウージーは3キロと重量があり、反動はフルオートで撃っても少ない方だ。だから、うまくコントロールすることができたんだろう
淳一たちも始めはセミオートだったが、コツをつかむとすぐにフルオートに変えて射撃を開始した。一方、敵はフルオートで初めから撃っていたが、俺たちと違って腕は非常に悪く全く関係のないところに弾が飛んでいくありさまで俺たちには当然、当たらなかった。
俺たちは攻撃をかわしながら敵を仕留めていき、10人目が倒れた時、敵の攻撃は止んだ。敵は全滅したらしい
「よし、敵は全滅した。早く脱出だ。パトカーが飛んでくる。」
「ええ、そうね。早くいきましょう」
「おう」
俺たちは隠れていた場所から出て車を停めてある場所に向かうことにした。
しかし、そのとき、銃声がして俺は腹を撃たれて倒れた。
「ぐあ」
俺は倒れたが、その時俺は308ウインチェスターも防げる一番強度の高い防弾チョッキを着ていたため、弾は貫通しなかった。俺は銃声がした方に発砲しながらなんとか隠れ、銃声がした方を見ると新手の7人がアサルトライフルを手にこっちに来るのが分かった。7人は男4人と女3人で先頭の女がリーダーらしく、この女を見て俺は誰かすぐに分かった。
「由歩」
そう、その女は俺が由紀子たちと戦った時に襲ってきたロシア人とのハーフである尾長由歩だった。由歩はロシア製AK47カラシニコフを手にしていた。
由歩の攻撃は正確で俺もうかつには攻撃を仕掛けられそうになかった。由歩の部下たちもアサルトライフルを持っていて由歩と違って腕は良くないがフルオートで撃ちまくっていたので付け入るスキがなかった。それでも浩香たちは由歩たちに発砲し、何発かは当てていたが敵はびくともしなかった。どうやら、由歩たちは防弾チョッキを着ているらしい
「まずいぞ、どうするんだ。」
「ええ、あいつらライフルを持ってるわよ。」
何とか攻撃を避けて俺の近くに来た淳一と彩夏が聞いた。
「ああ、サブマシンガンじゃアサルトライフル相手に荷が重い、何とかしないとだな。」
俺は考え、その時、ある作戦を思いついた。
「聖夜、私、いいこと思いついたわ、力を貸してくれる?」
浩香も何とかやってくると、持ってきたナップザックからS&WM29を取り出して言った。
俺は浩香の考えが読めたのですぐにこう答えた。
「ああ、いいぜ、淳一、彩夏、奴らを引きつけてくれ」
俺は足に差しておいたモーゼルHSCを引き抜きながら言った。
「おお、任せろよ」
「ええ」
2人はウインクした。
俺はMP5を彩夏に渡し、モーゼルHSCを手に奴らの背後に周るべく、飛び出した。浩香もS&WM29を手に姿勢を低くしながら奴らの背後に向かった。
淳一たちは俺たちが飛び出すと由歩たちに発砲し始めた。由歩たちは淳一たちの方にアサルトライフルを乱射する。しかし、俺と浩香に気付いていないようだった。
俺は奴らの左、浩香は右から背後に周り、射程圏内に音もなく接近した。
「くたばれ」
「死になさい」
俺はモーゼルHSCを奴らの頭、浩香は背中にS&WM29を発砲した。
「ぐぎゃああ」
奴らは次々と被弾し、倒れた。奴らの防弾チョッキは通常の拳銃弾しか防げないタイプで44マグナム弾を防ぐことはできなかったんだ。だから、44マグナム弾を受け、絶叫しながら3人が崩れ落ち、俺も頭を撃ちぬいて3人を即死させた。俺は由歩も狙ったが、ほかの奴らより、前に出ていたためか、由歩の頭を撃ちぬくことはできず、弾は奴の左腕に当たった。
由歩は絶叫し、AK47を落としたが、傷に負けず、右手で拳銃、トカレフのようだった。を抜くと俺の方に発砲してきた。
「ぐ」
弾は俺の胸に当たり、俺はよろめいた。しかし、俺はさらに由歩に発砲、由歩の腹に1発撃ち込んだ。
由歩はよろめき、形勢不利とみて逃げ出して言った。
「チクショウ、待ちなさい」
浩香はS&WM29に弾を装填しなおし、由歩に発砲したが、由歩には当たらず、由歩は姿をくらましてしまった。
「クソ、逃がしたわ」
浩香は悔しそうに俺に駆け寄った。
「ああ、やはり、奴は手ごわいな。それより、早く脱出だ。パトカーが来るぞ」
俺はモーゼルHSCに補弾しながら言った。
「ああ、そうだな。早く逃げよう」
哲磨がウージーを手に駆けつけて言った。浩香も哲磨に渡していたらしい
「ええ、そうね。早く逃げましょう」
俺たちは車を停めてある場所に走った。その前に俺は由歩の部下たちの死体を探って免許証と財布を奪っていた。後で身元を調べるのに役立つ。
それと、部下たちの持っていたアサルトライフルは中国の95式と81式、韓国のK1とK2で俺たちは中国や韓国製には興味がないのでもちろん、放棄した。
由歩が使っていたのは俺はロシア製の本物のAK47だと俺は思っていたんだが、よく見ると、本物ではなく中国製のコピーである56式だと分かった。ということは由歩が持っていたトカレフのような銃も本物ではなくノリンコT54だったのではとその時、思った。
あと、部下たちは拳銃も予備の武器として持っていてそのうち、1人はブラジル製のタウルス44Bリボルバー、1人はルーマニア製のクジール74を持っていて、タウルス44Bは44マグナム弾を使用するのでS&WM29に実包を転用できるし、クジール74は32ACP弾を使用するのでモーゼルHSCに実包を転用できる。だから、俺はその2丁の拳銃を予備の弾ごと回収し、持っていくことにした。
俺たちが車に向かう途中でパトカーのサイレンが近づいてきて厚の家の近くに停まるのが分かった。しかし、その時には俺たちは競馬場の近くに停めた車の近くまで来ていた。
俺たちが乗ってきたのは黒の日産・ティアナと白のホンダ・アコードで俺が長岡市と三条市で手に入れてきたものだった。俺と浩香がティアナ、淳一たちはアコードに乗り込み、すぐに発進させた。
俺は万一の事態に備え、逃げこむためのアジトを用意しておいた。俺は豊栄駅の近くで見つけて借りておいた古びた洋風の家に向かい、淳一たちは東区の空港近くの借家に向かった。
俺は途中で検問が敷かれていると判断していたので豊栄に向かう途中の裏道で弾痕の空いた服を念のため用意してきた別なものに変え、服装から怪しまれないおようにした。服は持ってきたナップザックの中に隠し、サブマシンガンは座席の下に隠し、俺はベレッタ、浩香はCZ75を腰に差し、万一の時はすぐに使えるようにした。
俺がティアナを走らせているとパトカーのサイレンが絶えず聞こえてきた。俺たちと桜の部下たちとの戦いの件で大混乱になっているんだろう
俺たちはアジトに向かう途中に検問にあった。
しかし、俺たちは検問にあった時にどう対応するか何度も練習していたので自然な表情でうまく対応できた。
俺たちは大学生のカップルで遊んできた帰りということにした。
俺はもちろん、浩香も真面目な学生を演じたので対応した警官は免許証を確認すると特に不審に思わずあっさり、通した。
「ふう、意外と簡単だったわね。見た目や印象で判断しちゃダメよ。」
浩香はウインクしながら言った。
「ああ、全くだ。」
俺は浩香の意見に同意しながら答えた。みんなも人を見た目や印象で判断してはいけないぜ
俺は可能な限り、脇道を選んで車を進めたため、豊栄のアジトに検問にも会わずにたどり着くことができた。
俺たちはサブマシンガンを始め、見らえたらマズイものをすぐにアジトの中に入れ、念のため、ナンバープレートと車検証も別なものに変えておいた。
そのあと、俺たちはリビングに入ってようやく一息ついた。
「これで一安心ね。それより、聖夜、由歩に撃たれたけど、大丈夫」
浩香は心配そうに聞いた。
「ああ、貫通はしてない、AK47、いや、56式か、ライフル弾を受けた場所は内臓をやられたかもしれないが」
俺は服と防弾チョッキを脱ぐと撃たれた箇所を調べた。
防弾チョッキは弾が貫通するのを防ぐことはできるが、被弾の際の衝撃を防ぐことはできない。だから、被弾の際の衝撃で肋骨が折れたり、内臓が損傷することもあるんだ。
俺の場合も被弾した個所は内出血が起きていた。しかし、骨は折れていないようだし、内臓も傷まないようで大したことはないようだった。
「どうやら、問題なさそうだ。軽い手当で大丈夫だろう」
「そう、よかったわ、待ってて」
浩香は応急セットを持ってくると湿布薬と塗り薬で俺の手当てをしてくれた。
浩香の手当てはなかなか上手で応急手当のやり方を小学生の時、調べていてそれが役に立ったと話してくれた。
そのあと、俺はテレビをつけた。
テレビでは俺たちと桜の部下たちの戦いのことが派手に取り上げられていた。俺たちのこれまでの事件とつながりがあるとすでに推測されていてすでに専門家やコメンテーターが勝手な憶測を述べていた。
「これまた、派手に取り上げられてるわね。」
浩香がブランデーをグラスに注ぎながら言った。
「ああ、全くだ。しばらくは動けない。しかし、桜はどこにいるんだ。」
俺はブランデーを口に入れながら考えた。そのとき、厚と組んで浩香を苦しめていた早出幸子と井出千恵のことを思いだした。この2人は厚とつるんでいた。ということは
そのとき、俺はあることを思い出した。桜にはかなり親しくしていた教師がいたんだ。そいつなら今も桜の居場所を知っているかもしれないとな
「どうしたのよ。」
浩香がサラミを口に入れながら聞いた。
「思い出したんだ。実は桜と仲良くしていた教師がいたんだ。そいつを締め上げれば桜の居場所が分かるかもしれない」
「本当!、どういうやつなの?」
「ああ、桜と仲良くしていたのは」
俺は浩香に教師のことを教えた。浩香はそれを聞いてすぐに作戦を考え、俺に話してくれた。
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