第7話 クラスメート
次の日、授業が終わった後、俺は南区、浩香は加茂市で作戦を実行した。
浩香は俺が借りておいたアパートで髪を後ろで結って普段と髪型を変えて加茂市の公立高校の制服に着替えて校舎から出てきた正人と芽以を尾行していた。
正人と芽以は笑いながら今日はどんなことをして遊ぶか相談していた。正人の叔母は金曜の夜から日曜の夕方まで家にいない。だから、正人は叔母の家に仲間を連れ込んでいた。
「芽以、今日は郁恵たちが来る。久々に騒ごうぜ」
「そうね。卒業式以来、会ってなかったから久しぶりね。」
その日は正人と芽以、郁恵と一善、誠二が正人のところに集まることになっていた。正人たちを一気に仕留められるため、この日に作戦を決行することにしたんだ。
「ああ、卒業式といえばカモの野郎はどうなったんだ。」
「カモ?ああ、鴨下聖夜のことね。あいつ、普段は私たちのサンドバックにされてたのに卒業式の時、突然、暴れ出したわよね。それで正人は殴られて鼻を骨折するし、私はお腹を蹴られて吐きまくるし、もう最悪だったわ」
「ああ、全くだ。クソ、カモのくせして生意気なんだよ。カモはカモらしく鴨鍋にでもなりやがれってんだ。」
「ええ、そうよ。あ、それより、カモじゃなくて私、かわいい女の子を思いっきりいじめてあげたいのよね。」
芽以がイヤらしい表情で言った。
「うん?かわいい女の子?」
正人もスケベ親父みたいな顔つきになって聞いた。
「ええ、そうよ。聖夜はそれこそカモをいじめてるようであまりやりがいがなかったけど、聖夜みたいな男じゃなくてそういう女の子だったらやりがいもあるし、楽しいかなって思ったのよ。その子の恥ずかしい写真とかを取っておけば泣き寝入りするしかないし、私たちがずっと好き放題できるでしょ」
「おお、そうか、芽以も考えるね。そういえば、おばちゃんがうちに秘密の部屋を作っててさ、その部屋は地下室で完全防音になってんだよ。まあ、おばちゃんが昔、ちょっと、マニアックなことにはまっててそれをやるために作ったらしいんだけどな。そういう子を捕まえたら、その部屋に連れ込んでやってみよう」
「そう、正人の叔母さんもやるわね。」
2人は笑いながら加茂駅に向かった。浩香は2人の会話を聞きながら2人に唾棄を覚えていた。しかし、浩香はそれを表情に出さず、周りに誰もいないことを確かめてから後ろから2人に声をかけた。
「あの、すみません」
浩香は明るい表情で親しげに声をかけた。
浩香を見た2人は「おお」と感嘆の声を出した。
「おお、かわいい」
「そうよ。この子よ。こういう子、カモじゃなくて」
2人は浩香を見てイヤらしいことを考えながら小声で話していたが、浩香にはもちろん、聞こえていた。しかし、何も知らないふりをしてこう続ける。
「あの、いいでしょうか、私、最近、加茂市に引っ越してきたものでまだ、友達がいなくて1人で歩いてたんですけど、さっきからおふたりの話が聞こえてきて今日は友達と遊ばれると知りまして、よかったら私も仲間に入れてもらえたらと思って声をかけたんです。ダメですか?私みたいな女じゃ」
浩香は悲しげに話し終えた。
「いや、君みたいな子は大歓迎だよ。」
「ええ、いいわ、人数は多いほうがいいし、一緒に行きましょう」
2人は声は親しげだが、顔にはイヤらしさを浮かべながら言った。
浩香はもちろん、2人のイヤらしい顔に嫌悪感を抱いたが、もちろん、それは顔には出さずにこう答えた。
「本当ですか、ありがとうございます。あの、私、小柳絹子といいます。よろしくお願いします。」
浩香は偽名を使い笑顔で答えた。
「絹子ちゃんだね。じゃあ、行こう、俺の家に集まることになってる。秋葉区だよ。」
「はい」
浩香は正人に連れられて歩き出した。そのとき、ワザとバランスを崩して転倒した。
「きゃっ!」
浩香は悲鳴を上げて派手に転んだが、上手く手を着いたのでケガはもちろんなかった。しかし、浩香はその時もスカートをかなり短くしていたのでスカートがめくれて浩香の下着と臀部が丸見えになった。
「おお」
正人と芽以は浩香の丸見えになった下着と大きくて形のいい尻にくぎ付けになった。2人ともだらしのない顔になっていた。
「いたた、すみません。転んじゃいました。あれ?どうされました?」
ちなみにこれも浩香の演技でワザと2人に下着と臀部を見せつけたんだが、その時、気づいたふりをして恥ずかしそうにスカートを戻した。
「きゃ、きゃあ、すみません。お見苦しいものをあの見ちゃいましたよね。お願いです。見なかったことにしてください。」
浩香は顔を真っ赤にしながら哀願した。
「ああ、安心して俺、考え事してて何も見てなかったから」
「ええ、私もスマホをいじってたから見てないわ、安心して」
2人はそう答えたが、ウソをついているのは一目瞭然だった。しかし、当然、浩香は信じたふりをしてこう答えた。
「そうですか、よかったです。じゃあ」
「ああ、ついてきて」
2人は浩香を連れて歩き出した。
一方、俺は長岡市で手に入れてきた濃い青色のトヨタ・プレミオに乗って南区の「しろね大凧と歴史の館」、浩香いわく通称「凧会館」の駐車所で由紀子を待っていた。
俺は知的な眼鏡をかけた真面目な大学生といった格好で待っていた。由紀子とは高校からの下校中に大学の学生ということで出会った。俺は知的で誠実な好青年を演じたから由紀子は頭が悪いこともあってすぐに落とすことができた。そして、その日、デートということで由紀子をここにおびき出したんだ。
しばらくすると、由紀子がやってきた。
「ごめんなさい。待ちましたああ?」
由紀子はかなりかわいらしい高そうな服を着てメイクをして現れたが、由紀子の化粧は下手で顔立ちもカッパみたいだから全く似合ってなかった。
しかし、俺は笑顔でこう答えた。
「やあ、今日はきれいだね。由紀子さん。今日は楽しくやりましょう」
「はい、輝也さん」
由紀子は嬉しそうにプレミオに乗り込んだ。
ちなみに俺は由紀子には中村輝也と名乗っている。持ってきた偽造免許証や車検証も同じ名前だ。
俺は由紀子を乗せるとすぐにプレミオを発進させ、ドライブということで西蒲区に向かった。
西蒲区は南区の隣だから都合がいい、俺は事前に調べて監視カメラなどがないか調べつくしてあった。
俺は由紀子と西蒲区中を回りながら時間が過ぎるのを待った。
そして、夜の十時を過ぎたあたりで南区の由紀子の家に戻ることにした。
由紀子の家は毎週、金曜には両親が出かけて由紀子1人になっている。だから、俺は由紀子の家まで行って由紀子を吐かせるとともに何か手がかりがないか探すことにしたんだ。
俺は両親にバレるとマズいからという理由で由紀子の家から少し離れた畑の近くにプレミオを停め、由紀子の家まで歩いて向かった。
由紀子の両親は結構裕福らしく家は新しくて大きかった。由紀子は得意げに「ここが私の家です。」といった。俺は「おお、ここが」と明るく答え、由紀子についていくと家の近くに来た時
「おお、由紀子」
という声がしてそこに俺と同年代くらいの四人組が現れた。
「ああ、正憲たち、元気?」
その4人組は俺にも誰か分かった。その4人は浩香の昔のクラスメートだった大田正憲、丸中由美子、野田孝、林田良太だった。
この4人は由紀子と小学生の頃から仲が良かったクラスメートたちで高校になってからも時々会っていた。
この4人がどういうやつらかというと正憲は背が低く小太りのどこかのお坊ちゃま風の男で由美子は背が高く髪が短いスポーツ選手風の女、孝はやせて額が出たネズミのような顔つきの男、良太は髪が長めのオランウータンみたいな顔つきの男で4人とも明るく陽気そうだが、小学生がそのまま成長したような幼稚さがにじみ出ていた。
ちなみにこの4人も浩香に嫌がらせをして浩香を苦しめていて、嫌がらせは保育園の時から続いていたこともあり、浩香は厚ほどではないが由紀子を含め、五人全員に憎しみを抱いていた。
まあ、ともかく、4人が何をしに来たのか考えていると、正憲が口を開いた。
「ああ、俺たちは元気だ。俺たち、今日は白根の街中で遊んでたんだけど、今日は由紀子の父ちゃんと母ちゃんがいないらしいから由紀子の家で遊ぼうかと思ってきたんだ。」
「うん、明日は休みでしょ」
「ああ、朝まで騒ごうぜ」
「おう、それより、由紀子、そこにいるかっこいい人はだれなんだ」
良太が俺を見て聞いた。
「ああ、この人は中村輝也さん。私の彼氏よ。どうかしら」
由紀子は得意げに言った。
「おお、由紀子の初めまして」
「私たち、由紀子と中学の同級生だったんです。」
「今日は由紀子と遊ぼうと思ってきました。」
「ええ、輝也さんも一緒に」
正憲たちは俺を誘ってきた。
「はい、皆さんは由紀子さんの昔のクラスメートでしたか、はい、僕は最近、由紀子さんと出会いましてお付き合いさせてもらってます。今日はドライブをして由紀子さんの家にお邪魔しようと思ってきました。みなさんもですか、じゃあ、僕もご一緒に」
俺は明るく答えた。
「じゃあ、輝也さん、入って」
「はい」
俺は由紀子たちに連れられて由紀子の家に入っていった。
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