第5話 夜襲
俺が胸騒ぎがして目を覚ましたのは夜の1時を過ぎた時だった。
外で何かの気配がして俺は誰かが忍び寄っているのだと思い、すぐに枕元に置いてあったベレッタ92FSを取り出すと浩香を起こした。
「う、うん?どうしたの?」
浩香は眠そうな声で聞いた。
「起きるんだ。誰かが忍び寄ってる。」
「本当」
浩香はそれを聞くとすぐに目を覚まし、枕元に置いてあった服を素早くつけてCZ75を手にした。
俺は布団を丸めてダミーを作り、浩香がかぶっていた布団をかぶせてまるで人が眠っているかのように細工した。
それから俺たちは客室の隣の仏間に隠れた。客室の電気は消してあるが、俺は夜でも目が利くし、浩香も夜中に昆虫採集をやっていたからか夜でも視界が利くだから暗くても大丈夫なんだ。
俺たちが仏間に隠れてすぐ、玄関で合鍵でカギを開ける音がして人影が2つ入ってきた。
2人組は小型のペンライトで照らしながら客室に入ってきた。2人組は10代半ばから後半くらいで1人はかなり太った背の低い色黒の黒豚みたいな男でもう1人はやせたフランケンシュタインみたいな顔つきの男だった。
俺は2人組が誰かすぐに分かった。その2人は浩香の小学校の時のクラスメートで隆司とつるんでいた浜岡謙と伊藤伸太だったんだ。この2人は隆司と一緒になって浩香をいじめていて謙は浩香のスカートをめくったり、時にはパンツを脱がせたりとセクハラか強制わいせつまがいのことをやっていて伸太は浩香がやってもいないことを吹聴して悪い噂を立てまくったり、隆司と一緒に浩香を脅したりしていたらしい。
入ってきたのが謙と伸太の2人だと気づいて浩香も鋭い目つきになっていた。2人のことは厚ほどではないが許せないんだ。
俺はジェスチャーで合図を送り、2人の背後に回り込むことにした。
2人はどうやら拳銃をもっているらしく俺が仕掛けたダミーを浩香が眠っているものと勘違いしてダミーに近づいていた。
「ふふ、悪く思うなよ。」
「ああ、仕方ないだろ」
2人はダミーに向かってイヤらしい顔つきで言うと、手にしていた拳銃を構えた。しかし、その時に俺たちは2人の背後に回り込んでいた。
「動くな」
「動くんじゃないわよ」
俺たちはドスの利いた鋭い声でそう言いながら2人に銃口を突き付けた。
「ひいい」
「な、なに」
2人は驚愕のあまり言葉を失った。俺はさらにこう続けた。
「よし、大人しくしろ、まず、銃を捨てろ下手な真似をしたら一発だぞ」
「は、はい」
2人は恐怖でガタガタ震えながら拳銃を捨てた。そのあと俺はすぐに二人を殴りつけて失神させ、二人の拳銃を回収した。
謙の拳銃はドイツ製ワルサーPPK、伸太の拳銃は同じくドイツ製のシグザウエルP232で2丁ともサイレンサー付きでワルサーPPKは380ACPバージョンだった。
「これは「バトルロワイアル」で桐山が手に入れた銃ね。私はこれをもらうわ、いいでしょ」
浩香はワルサーPPKを手に言った。
「ああ、そうだな。俺はこれにする。」
俺はシグザウエルP232を手に言った。ちなみにシグザウエルP232も380ACP弾を使用する。ワルサーPPKと弾薬が同じだから、都合がいい。
俺はさらに予備の弾倉と弾薬サックに入った380ACP弾、財布などを回収すると2人の尾てい骨を蹴って意識を戻した。
焦点があってくると2人は俺を見て恐怖の色を浮かべ、同時に浩香を見て驚愕の表情になった。
「ひいい、や、やめてくれ、撃たないでくれ、あ、あんた誰だ」
「ひ、浩香、ど、どうしてそこにいるんだ。」
驚愕する2人を尻目に俺はこう答えた。
「俺?俺は浩香の男だ。お前らとつるんでた隆司が殺されたのは知ってると思うが、奴を殺したのは俺だ。奴は仲間と一緒に浩香を殺そうとしてただから、殺した。お前らも今日、浩香を殺しに来たんだよな。お前らも隆司のあとを追わせてやるぜ」
俺はシグザウエルP232を2人に向けた。
「ひい、やめてくれ、何でもするから」
謙は呻いた。
「そう、じゃあ、あんたたちは誰に雇われたのよ。」
浩香もワルサーPPKを向けながら言った。
「お、女の子だよ。俺たちと同い年くらいの名前は」
「染井吉野だろ」
俺は即答した。
「そ、そうだ。染井吉野ちゃんだ。彼女に浩香を殺してきてくれって頼まれたんだ。吉野ちゃんの話だと隆司たちが浩香を鳥を撃ち殺してた犯人に仕立て上げてヤクザに殺されたように見せかける予定だったんだけど、隆司たちが誰かに殺されたと知って驚いてた。鳥を撃ち殺してたのは隆司たちだったってバレたから浩香のせいにできなくなったけど、どさくさに紛れて浩香を殺すことにしたらしくて隆司から俺たちのことを聞いてたから俺たちに浩香を殺すように頼んだんだ。俺たちの拳銃は吉野ちゃんが用意してくれた。何かアメリカに住んでる韓国人と中国人から手に入れたとか、俺たちは浩香を撃ち殺して強盗の仕業に見せかけるつもりだった。」
謙は必死の表情で話し終えた。
「なるほど、やっぱり、私を殺す気だったのね。ろくでもないわね。だけど、何でその吉野って女は私を殺そうとするのよ。私はその女に会ったこともないのよ。それに鳥を隆司たちに撃たせまくってたのは何でなの?」
「いや、詳しいことは分からねえ、俺たちはただ、お前を鳥を撃ち殺してた犯人に仕立て上げるのに失敗したけど、ヤバい女だから始末しといてくれって言われただけだ。お前を始末することは隆司から聞いてたけど、お前が吉野ちゃんにひどいことをしようとしてるんで吉野ちゃんが身を守るためにお前を殺そうとしたのかと思ってた。仕方ないだろ、吉野ちゃんは明るくてかわいい子だし、そんなことお前みたいな暗くて地味な女じゃ誰だって吉野ちゃんを信じちまうよ。それに吉野ちゃんは太っ腹だ。隆司たちには五千万払うって言ってたけど、俺と謙には三千万くれるって言ってくれたんだ。それじゃ吉野ちゃんの味方をするしかないだろ?」
伸太も言い訳がましく答えた。
「何よそれ」
浩香は2人の話を聞いて怒り狂っていた。俺も2人、そして吉野には唾棄を覚えた。浩香が一体何をしたっていうんだ?
しかし、俺は聞きたいことがあったので怒りを押し殺してこう聞いた。
「なるほどね。お前らが浩香を殺そうとした理由はよくわかった。ところでその吉野っていう女だが、この女か?」
俺はコピーして持ってきておいた桜の写真を2人に見せた。すると、2人はすぐにこう答えた。
「おお、そうだ。そうだよ。この人が吉野ちゃん」
「あ、ああ、この子だ。」
2人の表情には不自然なところがなく本当のことを言っているように見えた。やはり、桜が染井吉野だったのか
「そうか、よくわかった。実はこの女は俺の知り合いでね。隆司から特徴を聞いてこの女と似てるなって思ったから、まさかと思って持ってたんだ。よくわかったよ。」
「そ、そうだったんですか、あんた、いえ、あなたの知り合いで、あ、あの、俺たちはこれ以上、何も知りません。命だけは助けてくれませんか、俺たちは吉野ちゃんに頼まれただけなんです。悪いのは吉野ちゃんです。彼女を殺してください。」
「そ、そうすっよ。悪いのは吉野です。知り合いならいつでも会えますよね。なぶり殺しにしてやってください。俺たちは利用されただけです。」
2人は悪いのは吉野、つまり桜で自分たちは悪くないというような口調で言った。
俺、そして浩香はもちろん、2人を生かしておく気は全くなかった。しかし、桜を仕留めるために2人を利用しようと考え、こう答えた。
「ああ、そうだな。お前らは使われてただけだ。許してやる。ところで吉野の連絡先とかはわかるのか?」
「ええ、分かります。吉野ちゃんに浩香を殺したら電話するように言われてまして番号は教えてもらいました。番号は俺の携帯の中です。」
「よし、これだな。」
俺は謙の携帯を見た。そこには吉野ちゃんという名前があった。
「よし、電話しろ、浩香を上手く片付けたってな。言っておくが、おかしな真似はするなよ。お前らから手に入れたこの拳銃はサイレンサー付きだ。」
俺はシグザウエルP232を手に言った。
「ええ、分かりました。」
謙は桜に電話を掛けた。
「はい、謙君?どうだった?」
電話からは明るく人懐こい感じの若い女の声が聞こえてきた。その声を聞いて染井吉野が尾崎桜だと完全に分かった。
「はい、謙です。作戦は成功です。簡単でした。」
謙は不自然に思われないように明るく答えた。
「そう、じゃあ、お礼を払うから白根の加茂に近い信濃川の河川敷で待ってて、場所は・・・」
桜は謙に金の受け渡し場所を指定し、午前3時に行くと答えた。
「はい、待ってます。それじゃあ」
「ええ」
電話は切れた。
「よし、今から出発だ。お前らは何で来たんだ。」
「俺たちは車で来ました。三条市でパクった車で吉野ちゃんからアドバイスされたんで、車の運転は意外と簡単でしたよ。近くの神社の近くに置いてあります。」
「お宮様ね。分かったわ、じゃあ、行くわよ。」
浩香は即答した。
俺たちは必要なものを持つと謙と伸太を拳銃で脅しながら車が停めてある場所に向かった。
2人が車を停めておいたのは浩香がお宮様と呼んでいる小さな神社の脇道で人気もなく誰も気づかないような場所だった。
2人が三条市で拝借してきた車は濃い青色のスバル・レガシィだった。俺は助手席、浩香は助手席側の後部座席に乗り、謙に運転させ、目的地に向かった。夜中だからか俺たち以外に車は通っておらず、俺ができるだけ、人目を避けて運転させたからか特に誰にも見られることなく目的の河川敷に着いた。
河川敷には果樹園が近くにあるほかは特に何もなく人気はなかった。
俺は果樹園の近くに車を停めさせると謙と伸太を連れて歩かせた。
しばらく行くと俺はこう言った。
「よし、ここでいい。これで見逃してやる。ただ、しばらく眠っててもらうぞ、うつ伏せになれ」
「は、はい、わかりました。お手柔らかに」
「はい、お手柔らかに」
2人は地面に這いつくばってうつ伏せになった。
その瞬間、俺はシグザウエルP232から発砲し、延髄に撃ち込んで2人を即死させた。
「ふん、いい気味ね。もっと苦しめてやりたかったけど」
浩香は謙と伸太の死体を見ながら少し残念そうに言った。
「仕方ない。桜を待とう、奴に地獄の苦しみを味わわせてやればいい」
「ええ、そうね。」
俺たちは謙と伸太の死体を川の近くに持っていくと近くの木の陰に隠れた。
しばらくすると加茂市の方から2台の車、赤のマツダ・デミオと白のホンダ・フィットが現れ、河川敷に入ってくると中から五人組が現れた。
内訳は男2人と女3人で男2人と女2人は18~19歳くらいで女1人は16~17歳くらいだった。その女が誰か俺にはすぐに分かった。
「桜」
そう、その女は尾崎桜だった。その時の桜はやたら楽しそうな表情をしていたが、心の底で誰かをあざ笑っているかのようなイヤらしさがあり、俺は桜に生理的嫌悪感を抱いた。
桜に従っている4人も真面目そうな恰好をしていたが、顔には愚かさやイヤらしさがにじみ出ていてチンピラかゴロツキみたいな印象で俺にはろくでもない奴だとすぐに分かった。
「謙君、伸太君、どこ?私よ。」
桜は謙と伸太を呼んだが2人とも死んでいるのでもちろん、返事はない
「桜さん。あの2人まだ来てないんですよ。気長に待ちましょう」
ボストンバックを持った眼鏡をかけた小太りの男が言った。
「ええ、そうね。夜はまだ長いわ、それにしても隆司君たちを殺したのはどこのどいつかしら?」
「さあ、どこかの異常者じゃないですか?世の中にはおかしな奴が多いですし」
「ええ、そうすっよ。犯人に仕立て上げようとしてた女、確か浩香でしたっけ、そいつも異常者じゃないですか、そいつの同類がやったんでしょう」
「ええ、そうです。そういえば、桜さんの昔のクラスメートだった鴨下とかいう男もそうですよね。そいつもろくでなしだったんですよね。もしかして、その男の仕業なんて」
「あはは、そうね。だけど、そんなはずはないわ、浩香みたいな女は誰かを殺そうとしても返り討ちにあうのが落ちよ。それに聖夜はそんな大それたことはできないわ、こいつはみんなから「カモ」とか言われてバカにされてたけど、カモと同じでひたすら逃げまどって最後にはカモ鍋にでもされるのが落ちな男よ。卒業式の時は大暴れしたらしいけど、それまではみんなからやられたい放題だったのよ。カモのくせに生意気なのよ。」
「はは、そうでしたね。それに引き換え、桜さんは「さくらちゃん」ってかわいい感じで呼ばれててみんなから慕われてたんですよね。さすがですよ。カモとサクラじゃ天と地の差です。鴨下とかいう男は身の程を知るべきです。」
「ふふ、そうね。」
桜たちは下品な笑いを浮かべながら俺と浩香をバカにした。桜たちの話を聞きながら俺は桜にすさまじい殺意が込み上げてくるのが分かった。それは浩香もそうで彼女も怒りに震えながら拳銃の引き金を引きたくて仕方がないようだった。
「クソ、ふざけやがってカモをなめるなよ。やるぞ」
俺は浩香にささやいた。
「ええ、私は返り討ちにあわないんだから」
俺と浩香は拳銃を向け、素早く4発ずつを発砲した。
俺はボストンバックを持っていた小太りの男ともう1人の髪を黒くしたギャル風の女の頭と左胸を打ち抜き、2人を即死させた。
浩香もやせたハイエナみたいな男とジャガイモ顔の筋肉質の女の頭と首筋を打ち抜き2人を始末した。
4人が倒れると桜はしばらく呆然としていたがすぐに恐怖で喚きだし、突然、走りだし始めた。
桜はスカートに差していた拳銃を抜いてでたらめに発砲しようとしたが、俺は桜の拳銃を撃ちぬいた。
「きゃあ」
桜は拳銃が撃ち飛ばされた反動でバランスを崩して転んでしまった。
俺はP232に補弾し、持ってきておいた仮面をつけると浩香に
「じゃあ、行ってくる。」
といって飛び出した。
「行ってらっしゃい。」
浩香もワルサーPPKに補弾しながら言った。
俺が近づくと桜は銃を打ち抜かれた衝撃で手首を痛めたらしく右手を押さえながら呻いていた。
俺が近づくと桜は気配に気づいて俺の方を向いた。
「ひいい、あ、あんた誰よ。」
桜は恐怖で震え始めた。俺は仮面をつけていたので俺だということに桜は気づいていないようだった。だから、俺は他人のふりをしてこう言った。
「俺?俺は鴨川健次、よろしく、言っとくがお前の部下の隆司とかいう男を殺したのは俺だ。それでお前が殺そうとしてた浩香って子を見張ってたら謙とかいうデブと伸太とかいうフランケンが彼女を殺そうとしてることに気づいてね。2人を締め上げてお前に電話させたんだ。お前の部下にはさっさと死んでもらったが、お前は楽には死なせてやらないぜ、なぶり殺しにしてやる。」
俺はP232を桜に向けた。ちなみに俺が鴨川健次と名乗ったのは「非情の標的」の浅岡の弟の健次の名前をもらうことにしたからだ。健次は小説の中でカモの研究をしていたから俺の名前をもじって鴨川健次にしたというわけだ。桜もソメイヨシノと桜の名前を使ったから俺も名前にカモを入れることにしたんだ。
「ひい、や、やめて何でもするわ、そこのボストンバックに三千万入ってるわ、それをあげるから許して」
桜は手を合わせた。
「金はもらおう、しかし、それだけじゃダメだ。いくつか答えてもらおう。お前が隆司たちに新潟県で鳥を殺させていたのは何故なんだ?それに浩香って子を犯人に仕立て上げようとした理由は何だ?あと、作戦が失敗したのにそれでも彼女を殺そうとしたのは何故なんだ?」
俺は拳銃を向けながら言った。すると、桜は開き直った表情で答えた。
「何でって、カモやタカを撃ち殺してたのは自然を守るためよ。それに浩香はろくでもない女よ。そんな女を犯人に仕立て上げて殺したところで何の問題もないわ、だから、浩香を殺すことにしたわけ」
桜は「何か問題でも?」と言いたげな表情で話し終えた。
「何?自然を守るためだと、どうして鳥を撃ち殺すことが自然を守ることにつながるんだ。それに浩香って子は別に悪い人間には見えなかった。彼女が何をしたっていうんだ。」
俺は桜が浩香を殺そうとしていた動機の異常さに驚愕しながら聞いた。それに何で鳥を撃ち殺して自然を守ったことになるんだ?
すると、桜は偉そうな態度でこう答えた。
「ふん、あんたには分からないでしょうね。自然を守るのは大変なのよ。カモやタカを撃ち殺してたのは仕方のないことなの、分かる?それにあんたはあの女のヤバさに気づいてないのよ。隆司君からあの女のことを聞いて絶対殺さないとって思ったわ、あんたには絶対分からないでしょうけど、もしかして、あの女に惚れちゃったの?あんた?どうかしてるわ、あの女のどこがいいんだか」
桜は最後は浩香をあざ笑うかのような口調で言った。
俺は桜のイヤらしい口調に唾棄を覚えた。すぐに始末してやる。
「ああ、そうだ。俺は彼女を魅力的な少女だと思った。お前には分からないだろうけどな。お前が彼女を殺そうとした理由はよくわかったよ。お前をこれから始末してやる。」
俺は桜に銃口を向けた。
「ひい、ま、待って」
桜は恐怖で失禁した。しかし、その時だった。
突然、フルオートの銃声が聞こえ、俺は反射的に身を伏せて攻撃をかわし、脇に転がりながらよけた。その時、桜は必死の表情で逃げ出した。
「助けてええ」
桜が走り出すと銃声がやみ、そのすきに俺は浩香が隠れている木とは別の木の陰に身を伏せた。
俺が隠れると車のエンジン音が聞こえ、車が走り去るのが分かった。その時、さらにフルオートの銃声がこだました。
「クソ、逃がしたか」
俺は桜が逃げ出したことに歯ぎしりしたが、フルオートの銃声が続いたので地面に身を伏せながら必死で攻撃をしのいだ。どうやら3丁が使われているらしく、敵が使っているのはサブマシンガンではなくアサルトライフルらしい。
俺はシグザウエルP232を右手に持ち替え、左手でベレッタ92FSを抜いた。この銃声ではサイレンサー付きの銃を使う意味はもうない
俺は銃声が止んだ時に一気に攻撃を仕掛けようと思い、攻撃が止むのを待った。そして、1分くらいで銃声が止んだとたん、俺は木陰から飛び出してベレッタ92FSを銃声がした位置に発砲した。
「ぐぎゃああ」
俺の攻撃は見事命中し、1人が絶叫するのが分かった。しかし、残り2人が弾倉を交換して再びアサルトライフルをフルオートで乱射してきた。
「クソ」
俺は浩香が隠れていた木の陰に逃げ込んだ。浩香はそこにいなかった。どこかに逃げたのか
敵はアサルトライフルを俺が隠れている木の方に発砲してきた。弾丸は木を貫通したが、俺は身を伏せて攻撃をかわした。弾丸が尽きたら俺は再び攻撃をかけようとベレッタを構えた。しかし、その時、銃声がして敵が悲鳴を上げるのが聞こえた。
「く、クソ、どこだ。」
アサルトライフルの銃声はやみ、1人が狼狽する声が聞こえた。
俺はチャンスだと直感し、木の陰から出て視界に捉えた人影にベレッタから弾丸を撃ち込んだ。
「ぎゃああ」
そいつは絶叫し、倒れた。すると、敵の後ろの茂みから浩香が出てきた。
「ふう、やったわね。奴ら、聖夜に気を取られてたみたいだからそのすきに後ろに回り込んでやったわ、上手くいったわね。」
浩香はCZ75を手に笑顔で言った。
「ああ、ありがとう、それより、さっさと脱出だ。銃声がしたからパトカーが来る」
「ええ、そうね。」
俺たちはすぐに脱出することにした。
俺は桜の部下の死体から弾薬や財布を奪い取り、桜の部下の小太りの男、名前は免許証から青山義夫だと分かった。青山が持ってきたボストンバックに詰め込み、俺たちとつながりがありそうなものがないか調べるとすぐにスバル・レガシィに乗って脱出した。
俺は土手沿いの道を通ってまず、三条市の方角に逃げた。その途中、後方でパトカーのサイレンが聞こえた。銃声を聞いて警察が駆け付けたんだろう
俺たちは三条市で車を乗り換え、8号線を通って南区でさらに車を乗り換え、最後は徒歩で浩香の家にたどり着いた。
浩香の家に戻った時にはすでに夜が明けていた。
「ふう、何とかなったわね。だけど、桜に逃げられちゃったわ」
浩香はボストンバックに入っていた三千万を数えながら言った。金はすべて中古の紙幣で通しナンバーではないから使っても足がつくことはないだろう
「ああ、全くだ。それに桜が逃げ出したということは、まだあきらめずに浩香を殺そうとするはずだ。何とかしないとな。」
「ええ、あ、そういえば、桜に仲のいい友達はいなかったの?」
「友達か、ああ、いたぞ、それがどうかしたのか?」
「ええ、仲のいい友達なら今、どこに住んでるか知ってるかもしれないと思ったの、だから、そいつを当たれば何か分かるかなって思って」
「そうか、そうだな。奴らは知ってるかもしれない。厚と同じように締めあげてやろう」
「ええ、そうね。」
俺たちは新しい作戦を練ることにした。
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