第七話 乱戦
始まりは
「ぜぁあああああ!」
「ガァアアアアア!」
まるで
「
頭を
真っ直ぐ
一刀斎の正しい
文字通り横槍を入れてきた
正面を見れば蹴り飛ばした坊主の男は、他の男に討ち取られていた。
その討ち取った武芸者も、一刀斎には
恐らくこれが、
「
「
より
打ち合う音もより重みを増し、その感覚も短くなった。
だがしかし、一度目までは、偶然がある。
「
「
剥き出しの
しかし一刀斎は即座に刀を
ガラ空きになった鼻の
第二の
残り六人。この残った六人は、紛うことなく、実力者。
「いざ……!」
しかし残ったからといって、「
真正面、目が合ったのは足元に武芸者を転がした髭面の男。腕は太く体躯は
「
大地を駆け出し、荒れた
一直線に男へと駆け出し、同時に袈裟切りを打ち放つ。しかし剣に力が乗り切る瞬間に片手で打ちを払われて、返す刀で首を狙われた。
「
「
一刀斎は地面を踏みしめ、
だが。
「ぬぅう!」
「なにっ……!」
男が身をよじれば、鞘で横薙ぎが止められた。
「
「ちぃっ……!」
大振りに、しかし
一刀斎は咄嗟に剣を離してやり過ごすと、その場に転がっていた脱落者が握っていた剣を引ったくり至近距離で眼球目掛け投げつける!
「ぬぐっ……!」
さしもの男もその目ばかりは鍛えていない。悔しげに呻くと首をねじって
一刀斎はさっきまで己が握っていた刀を拾い直し、屈んだまま
その一瞬で、男も攻め気に戻っている。
「
「
足から足首に、足首からはぎに、はぎから膝に、膝から太ももに――――いや、まだ、《区切れる》。
肉の
そして。
(
力を打ち付けるのではなく、相手へと打ち込む。それこそ最大限、力を活かす
剛力を誇る二人の剣撃が、共に
「
「んな……!」
一刀斎の剣が、巌の男の剣を打ち弾く。一刀斎が打ち乗ったのは、男の刀の、物打ちの
そして一刀斎の剣は、男のこめかみを打ち据える!!
「ご、ぁ……!」
わずか数合いの
さて、残るは――
「おや、そっちも
「む――――」
なにを
「お前は……」
「やっぱり残ったか、
開幕前、
その足元には二人、少し離れた位置に一人、仰向けに倒れている。
「まさかお前、三人一度に」
「いいや、この二人は
そういう男が構えたのは、出逢ったときと同じ棒。
恐らく
天秤棒のように肩に掛けられた、
先の厳の如き男と比べれば体は細い。それにも関わらず、彼と
立ち向かう一刀斎は、その意の圧に構うことなく。
動じないと見るや否や、男はニタリと、にやけて鴨口を愉快な形に
「いやはや来てみるもんだな。まさか
「……俺の師を知っているのか」
「それどころか、お前自身も知ってる。――あんた、
「っ」
前原弥五郎。それは一刀斎のかつての名だ。師である
それを、知っていると言うことは。
「お前は、
「おうさ、
一刀斎がちらりと、この場の仕合を取り持つ
名乗り上げに対しなにか言いたげな様子はなく、むしろ満面の笑みを浮かべていた。……なるほど、戦も
名乗りを上げての立ち合いは、疎むことでもないと言うことか。
「……改めて名乗るぞ、江浪由之丞。
その師は言っていた。
「――流名は、
だから、己の
由之丞は聞き慣れぬ流名を聞いても動じることなく、半身になり、担いだ棒の
今まで通り、
「
まず動いたのは一刀斎。
「
袈裟――半身の胸めがけ剣を振った瞬間に、由之丞は棒を振るうとともに棒を刀のように構え直し、一刀斎の
一刀斎はサッとその一撃を
ヒュン、と風が鳴る。一刀斎の目の前から既に棒は立ち消えて、手元へと戻っていた。そして。
「
足元に棒が振るわれ、即座に
一歩踏み込んできた由之丞は手首を巧みに
「我ァアア!」
しかし一刀斎は鍔の刀を振り下ろし、
由之丞はまたも棒を
後ろに飛び退きギリギリで避けた一刀斎は、今度はこちらの番だと由之丞へと
だが。
「ぐっ……!」
「
懸けようとした真正面に、棒が差し出されていた。
その端は、一刀斎の喉を狙っている……!
「
短い
由之丞は深追いせず、二人の距離はまたもや離れた。
脇構えのような形を取った手は、棒の
一刀斎は歯噛みした。あれでは突きが来るか、あるいは袈裟打ちが飛んでくるかの予測は
文字通り、
棒を使う者は
さっき由之丞が参加して良かったと言っていたが、――全くもってその通り。
由之丞ほどの技の
その在野の武芸者達を、この熱田神社は引き寄せてくれた。
心の臓が火山のように
燃える
「竹生島流……打ち
「さあさあ来なよ一刀斎。この棒に、あんたの血と汗を吸わせてやるからよぉ!」
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