第八話 怒濤を食らえ
風を切り刀を打ち払う音は
止まることなく繰り出されるのは
今度の
しかし、嬉しいと言っても。
「
「
素直に喜ぶほどの余裕は今はない。
過去の一刀斎の名を聞き知った、
その勝負は
「いやはや
「話してる余裕は、ないがな……!」
寄せては返す波のような
距離を取ろうとする由之丞を逃すことなく一定の距離を
得物が
しかし棒は打ち
加えて、その
一刀斎は相手の気配の
しかしどこからでも放てる棒と、棒を振るう由之丞が纏う気配は一刀斎に多くの可能性を
無数の打撃のうち、どれを繰り出すかの
(頭が戦いを考えるな……頭は勝つ
いかに
どれほど手数の引き出しがあったとしても、選べる選択肢は
最も意が乗せられた軌道に、一瞬でも生じる
「
身体の影に隠されていた棒が振り上げられる。――見えた!
「
一刀斎はその下段打ち上げを
「
「なにっ」
だがしかし、一刀斎の足は止められた。
由之丞は即座に手の内で棒をしごき、
「
「ぐぬっ……!!」
距離を詰め損ねた。首に放たれた
再び由之丞のギリギリ
由之丞は笑ってはいるものの
それもそのはずだ。この波のような連続攻撃をほぼ休まず繰り出して疲れないことはない。
戦いで
このまま
己もその連撃を斬り
由之丞の棒は、的確に一刀斎の急所を狙っている。打ち込まれれば即座に
ならば。だというのならば。
(こちらから、斬るしかあるまい……!)
それが前原弥五郎。否。外他一刀斎の
なにものをも斬る。ことごとくを斬り越える剣士となると、一刀斎は
迫る波濤を、寄る海流を、飲み込まんとする大渦を乗り越えろ。
大海すら飲み込むほどの
この後にも戦があるからと
「
「ッ……!」
棒を
「ぐう……!」
しかし、一刀斎の一撃は重い。剣を打ち払うことが出来ず、逆に棒は抑え込まれている。
瞬間由之丞は足を引いて紙一重で斬撃を避け、腰を低くして棒を引いた。
今までの流れるような動きに、キレが増した。
一刀斎の意識が
「
面白い! おれに見せろお前の全力を! それも全て己の内へと飲み込んでみせる。
対する由之丞は先と同じく横薙ぎ一閃、一刀斎の剣を打つ。先よりも意と力の乗った打撃は一瞬ながらその斬撃を止めてみせ、更に。
「
瞬時に棒を手の内で旋回。反対側も打ち付けてきた。
一度のみならず、二重に
だがそれでもとまらない。今度は縦に
一刀斎は上体を逸らしつつ刀を振り上げ、眼前を棒が過ぎるやいなや振り下ろす。
一方由之丞はそのまま棒の手を一周させて引きつつ
打ち合った
だがそれでも棒の連撃は、なおも止まることない。由之丞は競り合う刃の直ぐ下に手を滑らせて、すねを目掛けて
「ぐ……!」
一刀斎はすかさず足を引いた。それを見た由之丞が
恐らく次は、
次の
――ならば!
腹の底に練った意気を爆発させる。炎の芯が
小分けにした肉体を
炎となれ。相手の剣を受け
「
「
由之丞の打ち下ろしに、刹那遅れる。否、刹那、合わせた。
落とされる棒は弧を
しかし一刀斎の
「なに……!」
力強く、大きく放たれた棒の一撃は、細やかに動いた
(しまった……!)
存分に力を乗せるため、由之丞の手は、棒の端を掴んでいる。これでは、返し打てない――!
(いやっ……!)
由之丞は諦めていない。全力で棒を
「
「ごごぁっ……!!」
踏み込むと同時に、切り込んだ。
足と同時に、剣が動いた。
剣と体が、一体となった。
肩を
真冬だというのに汗が止まらない。本当に、
しかし。
「お見事!」
伏目がちの線が細い男…………この組の
「素晴らしい戦いでした、外他一刀斎。赤で勝ち残ったのは、あなたです」
そうだ。この
真の戦いは、
「では、案内しましょう。――最後の戦いの場所、
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