第155話 頼もしき使者
微笑む叔父のウォルターは落ち着いた声で語りかけてくる。
「お元気そうでよかった。カチェ様」
「ウォルター様……!」
叔父のウォルターは片膝を付き、手を伸ばしてカチェの掌を手に取ると正式な貴族礼をしてきた。
「カチェ様。何とかして連絡をつけようとしていた矢先でした」
「叔父上様。立ってください。わたくしに臣下の礼は不要ですよ」
「俺はバース公爵様に仕えるハイワンド家の騎士なので、これだけは譲れません。とにかく遠路遥々の再会なって、正直ほっとしているところです」
膝を上げたウォルターは、困難に満ち満ちていただろう王道国までの旅を感じさせない軽妙な態度だ。
「とりあえず事情の説明をしましょうか。おっと、俺の相棒も紹介しておきます。といってもご存じでしょうけれど」
廊下の先で誰かが来ないか警戒していた男が近づいてくる。
その者もまた、カチェにとって縁のある人物であった。
「貴方は騎士ダンテ・アークですね」
「ご機嫌麗しく幸いです。カチェ・ハイワンド様」
イースの祖父であるダンテは四十歳ほどの人間族に見えるが、魔人氏族との混血ゆえの容姿にすぎず、実際にはもっと年上のはずだった。
端整な姿に怜悧で落ち着いた印象はイースと似ている。
褐色の髪、ほんの僅かに赤色を感じさせる瞳。
長くハイワンド家に仕えているらしいが、ほとんどを城外の活動で過ごしてきた彼を知る者は少ない。
二人を部屋に招く。
格の高い部屋なので椅子や円卓も備えられている。
「おっと。ワルトも元気そうだな。ここに誰か来るとしたらアベルだと思っていたんだが」
「ご主人様が捕まっているんだっち」
「アベルが?」
さっそくカチェは詳しい説明を始める。
ガイアケロン王子の請願とアベル自身の戦功により、最重要の目標であるイズファヤート王との謁見に漕ぎつけることができた。
ところが、王の要求によりアベルは奴隷の身分に落とされ、その後の状況すら不明確であると。
ウォルターは静かに話を聞いているだけで何も語らず、最後に頷いた。
「まずはガイアケロン王子と面会がしたいのです。可能でしょうか」
「断られるはずがありません」
「アベルについては焦らず行きましょう」
「そんな……一刻も早く助けませんと」
「何だかカチェ様の方が追い詰められているみたいですな」
「わたくしが付いていながら、この有様……。後悔しても切りがありません」
「殺されるようなことにはなりませんよ。あいつは機転が利くから、何とでもなるでしょう」
ウォルターという人は、どんなときにも陽性の雰囲気を失わないのだなとカチェは感じる。
息子が王道国の王宮に囚われているにも関わらず、普段と態度が変わらない。
それと同時に、酷く憂鬱で苛ついた気分に漬かっていた自分に気が付く。
気持ちを入れ替えようと思った。
「お二人はどうやってここまで来たのですか」
「亜人界と中央平原を経由して、国境では役人に賄賂を掴ませました。俺はもともと冒険者でしたから旅には慣れています。それにダンテは潜入工作に熟達しているので、どうにか乗り越えました。まぁ、何度かは盗賊みたいな連中と斬り合いになりましたけれど」
「ここまで来た要件とは」
「もちろん任務の支援ですよ。アベルはともかくカチェ様まで使者になっていると聞き、驚きました」
「我々のやっていることをご存じで?」
「バース公爵様から子細まで全て説明されています」
「……ウォルター様。まだ幼子がいるというのに、こんな危険な任務をやらせてしまうとは」
あの可愛い従姉妹のツァラを思い出すとカチェは心苦しく、いたたまれなかった。
するとウォルターは口元に気遣いと余裕を感じさせる笑みを浮かべた。
「やらされているわけじゃありません。こいつは俺が望んで引き受けた仕事なんです。アベルが……息子が命懸けで和平のために働いていると聞いて後方でのんびりしているわけにはいきません。
何て言うのかな……人生の宿命、という気がしているわけです。それにバース公爵様は本気でカチェ様とアベルを心配していました。それで俺に頼んできたのです」
「頼み……? 命令ではなくてですか」
「二人が密使となっているが、支援に向かわせるに相応しい者はお前ぐらいだと。でも、選ぶ自由はありました」
「これほど頼もしいお味方もありません。助けに来てくださるとは感謝の極みです。とは言えツァラを思うと心苦しくあります。まだ父親が必要な年齢でありましょう」
「いや。ツァラのことですがねぇ……」
ウォルターは思案深げな表情をしている。
「親の欲目を差し引いても、あの子は神童かもしれない」
「神童……」
「だいたいアベルからして子供離れした、かなり変わった子でしたけれど。ツァラはその点、性格で言うとまったく子供らしいんですが、魔術に関しては天才としかいいようがなくてね。
剣の方は俺とアイラが教えていれば良かったんですが……魔術は教えた分だけ全て身につけちまって。もう教えられることが無いのです」
「え……。ウォルター様の魔術を全てですか。治癒魔術までも?」
カチェは信じがたい気持ちであったがウォルターは力強く頷いた。
「俺にしたって平民の暮らしをしていたら教育なんか受けられなかった。ハイワンド騎士団に飛び込んで様々な助けがあったから、剣や魔術を身につけることが出来た。それでツァラのために家庭教師を招くか魔学門閥で修練させようかと考えたのですが、それは簡単なことではないでしょう」
「はい。紹介や信用、費用など。あげればきりがありません。でも、アベルのように従者として所属させるのは乱暴すぎるというか、せめてわたくしと同じように学ばせてあげたいものです」
「その問題です。帝都には世界有数の門閥があり、有能な教育者もいる。どうせ学ばせるなら絶対に一流の教育を受けさせたい。しかし、俺の財力や名前だけでは難しいと悩んでいたらバース公爵様が支援をしてくれることになりましてね。
手厚い援助に教師たち、どちらも申し分なく……俺は断ることなど出来ませんでした」
カチェの知るバース公爵は無意味に人を助けるような人物ではなかったように思う。
支援と言っても、それは結局のところ身内に対する処遇なのではないか。
だとすると将来的にはツァラをレイ家からハイワンド家に組み込む意思がある、ということになる。
「ツァラをいずれ、貴族にするということですか」
「本人が十六歳になったら選ばせます。どういう生き方をするか……」
自分のように道を選べればよいが、その前に大きな試練があるかもしれないとカチェは感じた。
しかし、口には出さない。
ウォルターの親心に干渉したくなかった。
その後、さらに話し込む。
驚いたのはロペスとモーンケが共に結婚した、ということである。
祝賀会のあと、二人には多くの有力貴族から婚姻が申し込まれた。
テオ皇子と慎重に相談を繰り返し、派閥の禍根とならないよう交渉を重ねた結果、相応しい家格の令嬢と結ばれ、既に妻は妊娠しているという。
さる高貴な令嬢が、あの二人の兄と家庭を持つというのは、いったいどういう事なのだろうかと想像してみる。
武術や戦闘にしか興味のない、武骨そのもののロペス。
女と金が大好きで見栄っ張り、何につけても捻くれていたモーンケ。
二人の会話と言えば、どこに尻の大きな女がいたから遊ぼうとか、あの野郎の頭をカチ割ってやるだとか、そんな内容ばかり。
しかも、口だけでなくて大抵は現実になった。
カチェは眉根を寄せて溜息を吐いた。
正直なところ、あまり幸福になれるとは思えない。
どんな女性が妻となったのか分からないので、断定はできないが……。
そうして子供が生まれたら、とうとう自分も叔母になるわけだ。
何とも奇妙な感じがした。
ちなみにカチェとアベルにも同様の打診が、まこと多数に及び、断るのに大変苦労したそうである。
主に交渉を担当した家令ケイファードは心労で倒れる寸前だったらしい。
様々な事情を語るウォルターはいつでも明るい男性なのであるが、急に珍しく辛そうな表情をする。
「実はカチェ様にとって最良とも思える縁談があったそうなのです」
「縁談……」
「ですが任務のためにそれもならず。今まさに適齢期の貴方が望めばどのような婚姻も思うがまま叶ったことでしょう。なんとまあ、大変な犠牲を払っているものだ」
「わたくしは何も犠牲になどしていませんよ。むしろ得ているものばかりです」
「……いやはや、健気な心意気! しかし心が痛みます」
ふと、カチェの心に狡賢い考えが生まれた。
これは思ってもみない状況ではないか。
「……そうですね。ウォルター様に言われてみれば確かに懸念はあるかもしれません。適齢期が過ぎてしまったら、どうしましょう」
「いやいや、カチェ様でしたら悲観的になることなどありません。自信を持ってください」
「そうは仰られても、一度不安を抱いてしまえば切りがありません。どうか、わたくしを安心させてくださいませ」
「いやぁ、これは参ったな。どうすればいいのだろう」
「素敵な方が、わたくしを貰ってくれると保証があれば心配も無くなるというもの」
ウォルターは腕を組み、思案している。
「誰でもいいってわけじゃないですからねぇ。……そいつはかなり難しいことですな。適当な人物に心当たりがありません」
「ありません? いいえ、おとうさま……じゃなかった。ウォルター様には心当たりがあると存じます」
「ううん? 騎士団には色々と男はおりますがねぇ。家格や人物でカチェ様に相応しい男は思い当たりませんな」
結局、ウォルターからは、いざとなれば最高の相手を探してみせる、などという台詞と宥めるような優しい言葉があるのみであった。
「……なるほど。ウォルター様。それでしたら、しかるべき時に必ず協力していただきます。約束ですからね」
ウォルターはカチェの鋭い眼光と迫力に思わず気圧される。
これはもし反故にすれば、大変なことになる約束であるのが今更理解できた。
もはや断ることなど出来ようはずもなく……。
「も、もちろんです。きっと平和な世の中が来て、皇帝国に戻れることになりましょう。その時には、俺が出来るだけのことはします」
カチェは深く頷いた。
協力の言質は取った。
今日はこれで良しとしよう……。
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ハーディアは少数の供を連れて王城を目指していた。
謁見ではないので王宮までは行かない。
内務大臣らと闘技大会などについて計画を詰める予定だ。
今日は珍しく兄とは別行動である。
それというのも要件がいよいよ膨大な量となり、手分けして事に当たらなくてはならない状態であった。
王都に帰還してから、あまりにも心を搔き乱す出来事ばかりの日々。
誰にも言えないがハーディアの心はアベルへと激しく傾斜していた。
何がどうなろうとも叶わぬ恋心だ。
よりにもよって、絶対に愛が実らぬ相手を好きになってしまうとは。
しかも、こんな大切な時期と場所において。
我ながら自分は正気ではないのかもと疑ってしまう。
今は自分の心を余計なことへ割いていられる状況ではない。
そんな事は分かり切っているというのに……。
兄と誓い合った。
人生の宿命と対決するのだと。
いよいよ機会が巡ってくるかもしれないのだ。
あの
このままでは、皇帝国との激しい戦争で自分や兄は無論のこと、民までもが磨り潰すように酷使され、いずれ力尽きるだろう。
殺さなくては……。
外苑から外宮へ入ろうというところで、狭い通路が人でいっぱいになっていた。
百人ほどの列があり、その多くは荷物を運ぶ奴隷たちである。
数十名の戦士もいて、槍などを手にしていた。
姿かたちなどから藩国の者ではないかと感じる。
原因は分からないが混乱が起こっている。
ハーディアは馬を操り、先へ進むと、白刃を掲げた男がいる。
戦闘かと思い注視してみると、どうもそうではなかった。
簡素な麻服を着た奴隷が数人、地面に跪いている。
どうやら詫び言を述べているようだ。
剣を手にした男が怒声を上げて、それから剣を振った。
鈍い音。
血が飛び散る。
どうも腕に劣る男だったようだ。
刃筋を外したため鎖骨で剣が滑って致命傷に至らない。
酷い悲鳴、奴隷たちは命乞いを喚いていた。
ハーディアは溜息を吐いてから馬を飛び降りた。
「お待ちなさい! こんなところで処断に及ぶとは何事ですか」
戦場でも凛と響くハーディアの声には強い効果があった。
その場にいる者たちが一斉に顔を向けて来た。
血の滴る剣を手にした男もだ。
その男は頭に金冠を被っていた。
緋色の長衣。手にした剣は一見して豪華な造り。
宝石の嵌った柄に、象嵌の鞘。
間違いなく最上等の持ち物であり、かなり裕福な貴族でしか所有していないはず。
顔に見覚えは無い。二十代だろうか。
眼が血走り、視線に険阻な雰囲気があった。
血色は悪く、病気か、もしかすると酒色にでも溺れているのかもしれない。
嫌な顔だった。
軽薄で、身分を頼りに威張るしか能の無さそうな者だ。
「そこな女。この私を制止したからには、お前がこの奴婢たちに代わりて償いをするのだな」
「何があったのですか」
「イズファヤート王への贈物を載せた輿を転ばせたのだ」
「贈物はどうなったのです。壊れましたか」
「輿が傷ついた」
「それは運ぶ道具です。問題は品物のはずです」
「壊れたかどうかは関係ない。万が一にも、髪の毛ほどの傷すら作らぬように運ばなければならない」
「しかし、奴隷たちを殺しては運ぶ者がいなくなります」
「ふん。いらぬ心配ぞ。余には大勢の士卒がおるのだ。代わり運ばせる。さぁ、それより問いに答えてみろ。どうやって奴隷に代わり……。ん? なんだ、女。よく見れば大層美しいではないか。いや、驚いたな! 早く名乗れ」
「まずはご自分から身分を明かされては、いかがですか。もし貴方が真に尊貴なる御方でしたら、私は直ぐに跪き、詫びさせていただきます」
男は嫌味な視線を向けつつ口角を上げ、大仰な身振りをして名乗る。
まるで勝利を確信したかのような表情。
「我が血を語らば、マカダン藩国の藩王ヤヴァナ・マカダンが長男継嗣である。名はプラセム。まさか王道国の北に栄え、王国最大の藩国として世に知られるマカダンを知らないはずはないな。藩王の血族に無礼な物言いとあって、厳罰は免れぬものと思えよ」
「私の名はハーディア。称号は王女。イズファヤート王の次女です」
「……えっ?」
プラセムと名乗る藩王の長男は、口を半開きにしたまま固まってしまった。
「偉大であるのはイズファヤート王のみ。王女程度ではご存じないのも無理なき事にて。貴方の無礼は特に赦してあげます。さて、このようなところで騒がれては私が王宮へ行けません。よって奴隷たちの身柄は私が引き受けます。贈り物は士卒に運ばせるということですので、不便はございませんね」
「ほ、本物と言う証拠が……」
「身分を偽れば重罪。ましてや王女などと嘘を申せば、どうなることか説明するまでもありません。どうぞ勝手に疑っていればよろしい」
ハーディアは、あと僅かで処分されるところだった四人の奴隷に声を掛ける。
彼らはどうやら助けられたと分かり、救い主を拝むように見つめてきた。
「お前たちは今から私のものです。安心なさい」
斬りつけられた怪我人は手当てをさせて、それから再び馬に乗ると門に向かって駆け出す。
思わぬ時間を使ってしまった。
先触れの使者を派遣しておいたので門は難なく通過できた。
主な目的は有力貴族のヤザン・グラシャートに会うこと。
彼は内務大臣を務めている。
外宮に大臣執務室があるので、そこで重職を受け持つ複数の貴族たちや、さらには王直属の官僚などと打ち合わせがある。
主な議題は大闘技大会。
勝利の祝賀を兼ねた、祭りである。
主催はイズファヤート大王みずから。
この重要すぎるほどの国家行事に失敗など許されるはずがない。
王道国にいる全ての貴族と役人は、何もかもを投げ打って大会を成功させなくてはならない。
兄ガイアケロンとは、ある意見の一致を見ていた。
闘技大会では父王の来駕がある。
警戒が極端に厳しい王宮から、その外へ出てくるのだ。
確実に……。
もしかすると最高の、そして、もう二度とない機会かもしれない。
出来るだけ多くの情報を集め、罠を張るのだ。
今度は武器を取り上げられたとしても、対処できるように手を打つ。
そして、運命が巡ってきたその時こそ……。
ハーディアは思う。
生き残れるなどという甘い期待は捨てなくてはならない。
叛乱を起こせば、間違いなく自分は殺されるだろう。
少女の時から幾度となく見てきた夢のように、無数の刃で自分の肉体は切り裂かれるのだ。
だが、恐れもしない。怯みもしない。
考えてみれば、父王を殺せば自動的にアベルを助けることにもなる。
彼は解放されるだろう。
そうだ……。
悲惨な宿命の結末ばかりを感じていたが、一つの大きな喜びがあるではないか。
ハーディアは人知れず、密かな満足感から微笑んでいた。
その日、王道国の大貴族ヤザン・グラシャートやパリオ・タリムナガルといった政務の
やってきたハーディア王女は戦姫と謳われているが、清々しく爽やかな様子は、まるで血生臭い戦場を感じさせない。
王道国に比類なき美しさとまで呼ばれることが、少しも誇張ではないことを改めて理解した。
「それでは由緒ある貴族の皆さま、有能な官吏たちよ。最も偉大な王たる我が父のために、祝賀の大会を必ずや素晴らしいものにいたしましょう」
ハーディアは普段参画しない王道国の政務中枢において、まずは見の態度を取っていたが、闘技大会の内容には戦慄を覚えるしかなかった。
臣民の不満を和らげるため三日間に渡って催される大会では処刑や、殺戮に等しい見世物が目白押しであった。
また、イズファヤート王の機嫌を取ろうとする貴族たちが、競うように派手で目立つ提案を持ち出してくる。
結果的に過激さは増すばかりであった。
同席しているナビド儀典執行官が言う。
「ハーディア王女ならびにガイアケロン王子におかれては、王道国の正義を執行する働きを期待していると、大王様は仰せになられております」
「すでに謁見の際、闘技大会に参加せよとのお言葉は頂戴しております。ですが、具体的には何をするのか……」
「舞台の準備は進めてございます。魔獣との戦いにて」
「馬の競争や演武など、いくらでもあるでしょうに。わざわざ魔獣との勝負ですか」
「王のご意向でございます。他にも虜囚としました皇帝国のジブナル・オードランなども魔獣どもと戦わせる予定です」
ハーディアは絶句した。
以前の合戦で捕らえた彼は皇帝国公爵家の郎党で、極めて高位の人物である。
たしか公爵の弟だったはずだ。
例えば味方が捕虜になった時の交換など、使い道に困ることなどない。
それを見世物の材料にしようというのだ。
皇帝国を憎む民衆には、さぞかし愉快なものとなろう。
だが、しかるべき貴族に侮辱を与えたとあれば、皇帝国はさらに怒りを募らせるに違いない。
ますます戦争の炎が激しくなるよう松明を投げ込むようなものだった。
勝利の大闘技大会は、過去に例を見ない異常なものとなる予感がした。
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