第106話  戦雲、近づく

 



「ガイアケロン様。このアベルを最も危険な役目にお使いください」


 もはや生き方を誤魔化すことはできないという思いがアベルの心に渦巻く。

 ガイアケロンの秘めた願望。

 汚泥のような怨念。

 積み重なった憎しみ。


 王道国の王を殺そうなどという、危険どころではない望み……。

 極めつけに悲惨な死と直結していると言っていい。

 だが、そんなことに賭けてみたい。

 賭けなくてはならなかった。


 アベルは思う。

 やろうと決心すれば、この世界で安穏とした生活を送るのは、それほど難しくない。

 戦争と無関係の地域は探せばある。

 そこで治療魔法を生活の糧にすれば食うには困らない。

 

 愛せるかどうかは別にすれば、女性も手に入るだろう。

 特技があって、金もある。

 前世からしてみれば考えられないような恵まれた人生。


 しかし、状況やちょっとした才能に甘えて生きてはならないという気持ちが噴き出て来る。

 もはや運命に出会ってしまった。

 イースと次いでガイアケロンという……。


 坂道を転がり落ちるようなものだった。

 行き着くところまで辿り着かねば、止まることが出来ない。


 かといって自信は全くない。

 国家間戦争や王族という巨大な力を前にして、自分一人に何ができると言うのか。

 だが、そんなことは問題ではなかった。

 小賢しい計算などする気にもならない。

 欲望のまま突き進むしかなかった。


 カチェはガイアケロンに思わぬ願いをしたアベルを驚きとともに見る。

 その横顔は、僅かな緊張と突き抜けた強い意志が漲っていた。

 アベルが敵地に潜入をしたのはガイアケロン王子と何らかの交渉をするためなのだろう。


 それは分かるが、命懸けの危険な任務を乞うまでする必要はあるだろうか。

 カチェはアベルの様子に言い知れない危うさを感じる。

 たまに見せる自暴自棄な、自分の命を石ころのように扱う態度とかぶって見えた。


 ガイアケロンとハーディアはアベルの表情に偽りがないことを感じる。

 ますますアベルという人間に興味が湧いてきた。

 秘密交渉のことが父王に露見すれば、死罪になると覚悟するべきだった。

 だが、証拠がなければ皇帝国の謀略だと言い逃れは出来る。

 密使のアベルは当人自体が生ける証拠である。

 これからは運命共同体と言えた……。


 アベルは情熱を帯びた真摯な視線をしている。

 依頼すれば躊躇わず死地に飛び込む男の目だった。

 ガイアケロンはどうやらこのアベルという青年に賭けてみるしかないと納得した。


「アベル。では、最初の頼みは……一緒に食事をしよう。上手い料理と酒があれば会話も弾む。しかも、美しいお嬢さんまでいるぞ」


 王子は陽気に笑った。

 誰の心も明るくさせる大らかな気配。

 スターシャは、主のそんな様子を見てこれは本気でアベルを仲間扱いしているのだと感じた。


 城の二階にある食堂で午餐は行われることになった。

 アベルの他にカチェ、ワルト、それにシャーレも呼ばれる。

 シャーレはアベルの姿を見つけて喜び以上に安心したようだった。

 彼女の瞳に安堵の気配が表れている。


「アベル! 帰ってきたの!」

「うん。ついさっきだよ」

「また、危ないことしてきたのかと思って心配した。ハーディア様に作った安眠薬を自分でも飲んだぐらいよ」

「ははは。せっかく調薬したのに自分で使っていては仕方ないね」

「誰のせいだと思っているの……」


 シャーレはアベルが何やら不穏なことに携わっているのを感じていた。

 どういう目的でポルトまで来たのかは知らないが、敵と呼ばれている人たちの懐に飛び込むのはどう考えても普通ではなかった。


 シャーレにとって国家というのは大きすぎるもので、住んでいる場所が違うだけで戦争をするなど意味が分からなかった。

 政治や領土問題は庶民から遠く離れた事案であり、そんなことよりもどこかで薬師として健全に生活できれば良いという気持ちばかりがあった。

 そして、アベルもそうであってくれたらと心から願う……。


「彼女は腕のいい薬師です。私の不眠は和らぎました」


 ハーディアは満足げに薬を評価している。

 どうやらシャーレは上手く働いたらしい。


 食事にはオーツェルやスターシャ、クリュテという名の治療魔術師の女性も招かれたので、それなりに賑やかになる。

 ガイアケロンとハーディアが上座に座っていて、アベルは相対する主賓席だった。

 アベルの右にはカチェが座ったが、なぜか左隣にはスターシャが着座していた。

 彼女が強引に座ったのである。


 その席に座るつもりだったシャーレは一瞬、不満そうな顔をしたが慌てて取り繕った。

 シャーレはまた凄い女の人が現れたものだと驚愕する。


 スターシャという女性は肌を露出した丈の短い上下を着て、豊満な肉体が惜しげもなく晒している。

 しかも、かなりの美人……。

 なんというか気圧されるばかりだ。


 席に着くと、まずは葡萄酒で乾杯。

 すぐに湯気の立つ料理が運ばれてきた。

 質素なテーブルの上に焼いた羊肉やパンが並べられていく。

 大皿に山盛りとなった料理を各人が好きなだけ取って食べる形式だった。

 緊張のいらない、くだけた会食。


 スターシャは席に着くなり葡萄酒をがぶ飲みしだして、そればかりでなくアベルにも同じ速度で飲むように要求してきた。

 仕方ないから付き合ってやるとする。

 ガイアケロンが楽しそうに笑顔で聞いてきた。


「なんだ。アベル。すっかり仲が良いじゃないか」

「いやぁ。一方的にやっつけられていますよ。何発も殴られています」

「ガイ様。しばらくアベルの面倒を見ます。なかなかものです、こいつ」

「……や、やめてほしいなぁ」

「なんだと! 何が不満なんだよ? もう怪しむのは止めてやるけれど、アベルはどこか危ない感じがするぜ。見張っておかないとな」

「……」


 どうやら女の勘というものに引っ掛かったらしい。

 理屈を超えた感性が本質を突いてくることがある。

 アベルは反論しないでおくことにする。


 やがてオーツェルという名の、軍師の位置付けだという男も会話に加わってきた。


「こちら紫のお嬢さんは大変な教養の持ち主です。最上級の教育を惜しげもなく受けて来たに違いありません。文法学、修辞学、算術、音楽、歴史に詳しいばかりでなく天文学にまで知識がありました。ガイアケロン様。何者なんですか。彼女は?」

「そういえば我もアベルの連れだとしか知らないな」


 皆の注目が紫水晶のような瞳を持つ美しい少女に注がれた。

 カチェは少し迷った。

 本当のことは話さない方がいいだろうが身分を偽るのは好きではないし、下手に嘘をつくと信頼関係が作れなくなると考える。


「わたくしは、カチェと申します。アベルの親戚です」


 この短い答えでアベルの素性を知るガイアケロンとハーディアはカチェがどうした者なのか理解した。

 ハイワンド家に連なる人物だと。

 ガイアケロンは配下たちに説明をする。


「その二人は大事な者だ。素性は我々だけが知っている。今はそれでよい」


 オーツェルは静かに頷いた。

 主が話さないことを聞き出すようなまねはしない。

 アベルは話題を変えるつもりでハーディアに聞いた。


「それにしてもシャーレの薬が効いて安心しました。でも、新参者の調合したものよく口に入れていただけましたね」

「王族は薬にも詳しいものです。一応の知識があります。それに作っているところを私とクリュテで見させていただきました。怪しいところはありませんでしたし、念のため毒味に飲ませて一日様子を観察してから使用しました」


 和やかな雰囲気で会話が進む。

 物価の値段だとか中央平原の開拓地に入植者が増えているとか、日常会話とも政治とも言えるような話題が多い。

 ガイアケロンは部下との壁をなるべく無くそうとしているのが感じられた。

 統率は大事だが、威圧だけで人は良く動かない。


 オーツェルという少し痩せた学者風の男はカチェへの興味が尽きないらしい。

 しきりに話しかけていた。

 学問的な話題が中心で、カチェから的確な答えがあるたびに感心したり喜んだりしている。


 カチェも彼に質問をする。

 その受け答えや態度からオーツェルという名の男は、やはり非常に教養のある人物なのが窺い知れた。

 性格も落ち着いていることから武人ではなく、まさに参謀的な印象をアベルは持つ。


 やや酔い気味のスターシャは剣術や戦いについてアベルに聞いてきた。

 これまでどうした敵と戦ってきたのか。

 どうやって勝つか、逃げるときはどうするのか……。

 隠さずに突っ込んだ受け答えをしていると、自然に仲間みたいな感じがしてくるものだった。




~~~~~~~~~~~~~




 昼食が終わった後、ガイアケロンらは城から出かけることになる。

 アベルは付いて来てほしいと頼まれるまま、彼らと共になった。


 アベルだけではなくカチェ、ワルトまで側近のように扱われる。

 ガイアケロンとハーディアは城で三十騎ほどの隊を編成すると、ポルトの街を通過して郊外に出た。


「アベル。これから俺の軍団幹部を紹介しておく。その方が何かと動きやすいだろうからな。これから会わせるのは将軍ドミティウスに猟騎兵を率いるナルバヤルだ」


 普通なら面会するのも難しい将軍に引き合わせるということは特別な事だった。

 丘陵地帯では千騎を超える騎兵の姿が見えた。

 ガイアケロンが猟騎兵と言い表すところの軽装騎兵が戦列を作り、離散し、再び素早く集結する運動を繰り返している。


 ほぼ統一された武装をしていて胸甲、足回りは鉄で作られ、庇の付いた鉄兜も装備している。

 百騎ごとに旗があって、冑に羽飾りを付けている者が百人長らしい。

 武器は手槍、剣、弓のようだった。

 

 アベルは訓練を注視する。

 興味深い点を発見した。

 百人長らしい人物の他にも士官が複数いるようだ。

 だから百人を一人の現場指揮官だけが率いるとは限らない。

 副官が臨機応変に隊を分けて数十人を指揮をしていた。


 実際のところ混乱極まる最前線において百人もの部下を一人で指揮下に置くのは、かなり困難といえた。

 優秀な現場指揮官が複数いる組織は強力な印象がある。

 

 ガイアケロンが近づいていくと一騎、素晴らしい速度で接近してきた。


「あれがナルバヤルです」


 そうオーツェルが教えてくれた。

 アベルは彼を一目見て北方草原出身だろうと感じる。

 馬具に騎馬氏族の雰囲気が現れていた。

 伸び気味の茶褐色の髪。

 野生動物のように鋭い目つきは、やや吊り上がっていた。

 

 年齢は三十代後半ほどの男性で、髭の生えない体質らしい。

 日焼けした顔は精悍そのものだった。

 耳に緑石の飾りを付けている。

 

「ガイ様。ご用事か」

「ナルバヤル。紹介しておく男がいる。アベル・レイだ。憶えておいてくれ」


 ナルバヤルの冷静な視線がアベルの顔を見てくる。

 彼の顔には何らの感情もない。


「初めまして。ナルバヤル様。僕はアベルです。あの、貴方は北方草原の人ではないですか」

「……そうだ。俺、草原のシボ部族。俺たち、ガイ様が草原に来た時、王気ありと感じた。シボ族だけじゃない。他にもたくさんの人間がついて行きたいと思った。それ以来、みんなガイ様の家来だ」

「ユーリアン氏族のことは知っていますか。僕、そこのウルラウやルゴジン、ナフタという人たちと友達です。あと、他にもスターキ部族のルスタールとか」


 ナルバヤルが初めて顔に表情を浮かべた。

 驚きと、僅かな喜び。


「ユーリアン。名前だけ知っている。草原の南の方に住んでいる氏族だ。スターキは俺たちの親戚。ルスタールか。一度だけ会ったことある。向こうはまだ子供だったが」

「頬に大きな切れ込みを入れていて……」

「そうだ。顔に聖なる痕跡を入れる。それスターキの習慣」

「ところで軍団には草原氏族の人が何人ぐらいいるのですか」

「三千人ぐらいだ。騎兵は全部で六千。だから全員が草原氏族の者というわけではない。残りは方々から集めた者たち」


 ナルバヤルは朴訥で剽悍な人物だった。

 あまり喋らない。

 草原氏族にはよくいる感じの男だ。

 馬で移動することを何よりも愛する人間に思える。


 ガイアケロンたちはアベルが北方草原に行ったことがあると聞き、驚いていた。

 飛行魔道具で東の果てに移動したことは隠している。

 あまりにも突飛な事態なので説明するのが厄介だったし、任務とは関係が薄いのであえて伏せていた。


 次に歩兵の戦列に接近していく。

 三千人ぐらいが戦列の形成と展開の訓練をしていた。

 小高い丘の上に将旗が翻っている。

 

 旗の下で出迎えたのは、灰色の髭が顔一面に生えた中年。

 頑固そうな親爺だ。

 黒鉄の鎧を装着して、背はあまり高くない。

 しかし、岩のような存在感がある。


「彼がドミティウス。歩兵や弓兵を任せられる将軍だ」


 アベルは下馬して挨拶をした。


「始めまして。僕はアベルと申します。いま、ガイアケロン様のもとで任務を頂戴しています」

「おう。頼むぞ!」


 ずっしりと迫力ある声質だった。

 茶色の瞳をした眼光は鋭く、武人の威風に満ちていた。

 一万人を越える軍勢を指揮するに足り得る男に見えた。


 ドミティウスの隣には、やはり中年男性の将がいた。

 背の高さはアベルと同じぐらいで、皮の軽装鎧をしている。

 不思議とこちらはあまり武人らしさを感じない。

 なんとなく技術者の気配があった。


「彼は工兵将軍を務めているヤルカーンだ」

「工兵というと仮設橋を作ったりするような兵科ですか」

「橋も作るが、何でも作る」

「専門の工兵部隊がいるのは珍しいです。皇帝国にも似たような役割はありますが、大工とか呼ばれていて……失礼ですけれどあまり大切にされていません。兵士というよりは雇いの職工集団の位置付けですね」

「ああ、それが普通だな。だが我の軍団において工兵は欠かせない重要な部隊だ。ずっと以前から編成したい部隊だったのだが人材と資金の問題で成らなかった。やっと最近、充実してきた……」


 その日、ガイアケロンは夕方近くまで訓練を視察し、あるいは兵士の中に分け入って指示していた。

 百人長だけではなくて、最下級の従卒にも気さくに話しかけたりしている。

 そうして直接、現場の情報を集めているようだ。


 アベルはその様子に優れた指導者の資質を感じる。

 だいたい動きの悪い組織というのは幹部の風通しが悪く、人や情報の遣り取りが鈍い。

 最高指揮者は個室に閉じこもって都合よく纏められた書類だけを読んで、末端の人間と顔を合わせもしない……。

 そういった雰囲気はガイアケロンの周りに全く無かった。


 アベルは訓練の様子を見せてもらい、薄暮のなかポルトに戻る。

 もはや城下の宿屋を利用することは無い。

 城内の部屋を貸し与えられたからだ。


 これは連絡のためでもあるが、同時にアベルを監視する意味がある。

 アベルは寝台と机のみの質素な部屋で横になった。

 興奮して眠気は無い。

 カチェは隣の部屋にいるはずだ。

 いつものとおりワルトは扉の前で番をしてくれている。


――これから、やらなければならない事が多いな。


 アベルは方針を考える。

 まず、本来の任務。

 密使としての仕事をやり遂げなくてはならない。

 テオ皇子とガイアケロンを引き合わせる。

 秘密同盟が成立するように全力を尽くさなくてはならない。


 そして、来るベき日に備える。

 ガイアケロンが狙う命懸けの反逆。

 助けてやらなくては……。


 自分とそっくりの魂を持つ男なのだから。

 アベルは浅い眠りについた。




 ~~~~~




 翌日、尾行されていないことを確認してアベルは城を出る。

 ポルトの街に潜伏しているバース公爵の細作と連絡をつけるためだった。

 旅立つ前、ダンヒルから旧ハイワンド領に送り込んだ者たちの名前と居場所を教えてもらった。


 復興中の商店街の外れで、その男は小物屋を営んでいる。

 アベルは他に客がいないことを認めてから話しかけた。

 取り決め通りの符牒を口にすれば、男は黙って頷く。

 店の中に入った。

 そこで道具を借りて小さな紙片に文字を書き込む。


 目標が交渉に応じるということ。

 二者会談を望んでいるのでなるべく早く機会を設けたい。

 場所と方法を提案してほしいと……。

 その他、ディド・ズマの動向なども書き添える。


 もし手紙が奪われても証拠とならないように具体的な人名などは書かなかったが、最後にアベルからと署名しておいた。

 手紙を受け取った男は細い紙縒りにして、麻で作られた服にそれを編み込んだ。

 実に巧妙な技術で、至近距離で見ても全く隠されているのが分からない。


 これを連絡員が皇帝国へと送ることになる。

 戦線を超えるところは難しいだろうが抜け穴はあるものだ。

 それに商人などは独自のルートを持っているだろうから、そうしたものを利用するのも手段だろう。

 選ばれた健脚の者ならば帝都まで三十日程度で届くかもしれない。

 検問の問題はあるが、バース公爵の政治力と金さえあればどうとでもなるに違いなかった。


「じゃあ。頼んだぞ」

「……」


 男は完全に無言を貫いた。

 今日は初回だったのでアベルは様子を観察したが、これからは店先で受け渡しをするだけの関係になるだろう。

 再び、しつこいほど尾行されていないことを確認しながら城へ戻る。


 ポルトの城は部隊の行き来が頻繁だった。

 最前線に張り付けられている部隊は重労働なので、ときどき交代して休ませなくてはならない。

 そうした入れ替えの移動がある。

 それに遥か遠く、王道国からガイアケロンの勇名に惹かれて兵士を志望して訪れて来るような者もいた。


 今日のような手紙の遣り取りを続けることになるだろうかとアベルは考える。

 もどかしいほど時間と手間がかかるうえ、戦時下でもある。

 状況が激変して、交渉どころではなくなる恐れすらあった。


 取り合えずアベルはこれからもガイアケロンの側に居させてもらえるように頼むことにした。

 せめて、そうでもしなければ緊急事態に対処できなくなってしまう。


 居城に戻り、ガイアケロンに会わせてほしいと彼の執事に頼めば速やかに手を打ってもらえた。

 ほとんど待たない内に執務室に通される。


 兄妹は机に座り、何か書類仕事をしていた。

 広いが簡素な部屋だった。

 貴族の文房具というと華美華麗な装飾を施されているものだが、机から道具に至るまで庶民のものと変わりない。

 よって、なんというか王族の執務室という感じが少しもしない。

 これだと貧乏と思われ、軽侮されかねないほどだ。

 貴族はそうした名誉に拘るのが普通だから、なんだか奇異に見えてしまうのだった。


「そのぅ……。なんとも質実な政務の御姿ですね」

「素直に貧相と言っても良いぞ。アベル」

「はあ。率直に言わせてもらいますと、そこらの商人よりも……お道具が見劣りするといいますか……」

「なんだ。用事というのは象嵌の施された筆でも売りつけるつもりか。すまないが金はないのだ」


 ガイアケロンは鷹揚に笑っていた。

 ハーディアは黙って仕事を続けている。

 実際のところ文鎮や書見台のために費やす金貨などありはしなかった。


 流入する難民とも移民希望者とも言えるような人々への施し。

 恐ろしいほどの資金を必要とする軍団。

 様々な工作費用。

 収入は金庫を素早く素通りして、あちこちへ消えていく。


「失礼しました。本題に戻ります……。ガイアケロン様。ハーディア様。方法は明かせませんが皇帝国へ連絡を試みました。後は回答待ちとなります。もうじき秋祭りの季節ですが……返事は冬か、遅ければ春かもしれません」

「うむ。分かった」

「それで……、これから僕のことはなるべくお傍に仕えさせてもらえませんか。いつでも何でもやるつもりです。一応、大規模合戦、籠城戦、遭遇戦、城攻め……あとは医者の経験がありますから」

「おお。素晴らしいじゃないか。我が副官に相応しい経歴だ。だが、申し訳ないが当方は資金に困窮していてな。見ての通りの貧しさよ。よって給金は払えないが、寝床と食事は保証しよう」

「後払いで結構です……」

「ははは。こいつは頼もしいじゃないか。なぁ、ハーディア」


 兄から会話を振られたハーディアは書類仕事を続けつつも笑ってみせた。


「テオ皇子との会見についてはバース公爵様にも動いていただきます。あの方ならきっと実現できるはずです」

「……戦争において時局は激しく動く。上手く行くと良いがな」

「僕もそれが心配なのです」

「最後はなるようになるさ」


 ガイアケロンは明るく笑うが、そこには突き抜けた諦めも含まれていた。

 無理なことは無理として、望んでいたようにならなければ次に注力する態度らしい。

 ただ、アベルは今やガイアケロンの内心を理解している。


 後継者争いに引けを取らず戦い続け、隙があれば父親を殺すなど……至難の挑戦だった。

 だからこそ有利になる材料を欲していた。

 テオ皇子の優先的に他の王族を攻撃する約束は、数少ない賭けるに値する要素だ……。


「我らは正午から城を離れる。シラーズという王子がここへ来訪するので、出迎えねばならない。側仕えのアベルにも付いて来てもらうぞ」

「以前、少し教えていただきましたね。もしかしたらシラーズ王子がリキメル王子の後任になるかもしれないと」

「彼が我の元を訪れる目的は分からぬが、いくらかの軍勢を引き連れているそうだから……戦って手柄を上げたいと願っているのだと思う」

「ということは、皇帝国に攻め込むことになりますか」

「西に隣接するリモン公爵領の守りは固い。小勢で攻め取れるものではない。もし、その気なら引き止めるつもりだ」


 早くも雲行きが怪しくなってきたとアベルは感じる。

 戦争中なのだから当たり前とも言えたが……。

 

 兄妹は急いで事務を終えると、すぐに席を立ち一休みもせずに出かける準備を始めた。

 アベルはカチェのことを思い出す。

 置いていくと後が怖いので声を掛けておく。

 もちろん喜んで付いてきた。

 




 ガイアケロンとハーディアはポルトの郊外に軍陣を形成する。

 異母弟のシラーズ王子を儀礼と威容で歓迎するつもりだった。

 会ったことの無い王族など、充分すぎるほど警戒するべき相手だ。


 到着は予定よりも遅れていて、もう二日も本来の日程を過ぎている。

 接待役のオーツェルからの報告では、シラーズ側が準備に手間どっているということだった。

 しかし、とうとう今日の正午ごろ、確実に来着する。


 ガイアケロンは約四千人の陣容で待つ。

 念のため、もっと大規模な軍で出迎えるということも考えたが最前線から大部隊を引き抜きたくはなかった。

 街道に土煙が立っている。

 軍列が近づいて来た。

 先触れの騎馬武者が単騎、駆けて来る。


 典礼通りの遣り取りをして、シラーズ王子の軍列が接近するのを許した。

 やってくる軍勢は歩兵一万。騎兵五百といったところだ。

 さらに後方からは荷物を運ぶ人足たちが、ばらけた列を作っていた。

 

 ガイアケロンが調べさせたところによるとシラーズ王子の年齢は十九歳。

 これまで離れた地で暮らしていたため王統にも加えられていなかったらしい。

 しかし、大商人ラカ・シェファが後見人となって王宮に賄賂工作をした結果、正式に王子に加えられた。

 ラカ・シェファは高利貸しと交易で巨万の富を得た人物だった。

 よくある構図と言えた。

 同じように祭り上げられて、やがて消えていった王族をガイアケロンは何人も見てきた。


 シラーズ王子も気になるのだが、それより同行者の方が問題だった。

 目付け役としてヒエラルク・ヘイカトンが来ると言う。

 ヒエラルクは異名「剣聖」と呼ばれるほどの剣豪。

 そして、父王イズファヤートの腹心でもある。


 ヒエラルクに反逆の意図など僅かも気取られてはならない。

 疑われることを回避するために手を尽くさねばならないと考えれば、実に神経を使う遣り取りになるだろう。

 いずれにしても来訪の好ましい人物ではなかった。


 四名ほどの集団が近づいてくる。

 全員、騎馬に乗ってきた。

 中でも一人、特別に目立つ人物が居る。

 遠目からでも眩く輝く白鋼の鎧が見えた。

 緋色のマントが靡いている。

 白馬に乗るその男は毛氈の絨毯の手前で下馬し、ガイアケロンのもとへ歩いて近寄る。


 落ち着いた色彩をした黄褐色の長髪。

 やや色白で、冷たいほどの鋭い相貌をした美青年だった。

 青い瞳が怜悧に輝いていた。

 口元は作り笑いと分かる形で固められている。


 ガイアケロンは彼がシラーズ王子かと思う。

 父親に似た顔をしているが、それよりも長兄イエルリングの面影に近い気がした。

 原則として王族同士は頭を下げない。

 継承権の順位を設定していないので上下関係ではないからだった。


「ガイアケロン兄上。ハーディア姉上。お初にお目にかかります」


 典雅な仕種で挨拶をするシラーズ王子。

 兄妹は微笑みで迎え入れた。


「英雄、戦姫と讃えられるお二方の前に王子として参上することがシラーズの夢でございました」


 ハーディアが涼やかな声で答える。

 今日は武装をしていない。

 相手を表面上、なごやかに歓迎して気持ちを緩めようという意図があった。

 純白の貫頭衣に首飾りをした姿は麗しいばかりだ。


「これまで一度たりとも会ったことが無く、縁の薄い我らですが同じく王族。境遇にも似たるところがありましょう。ゆるりと滞在してください」

「姉上。噂にたがわぬ美しさ。もっと早く出会っていればと悔やまれまする」


 満更、お世辞のようにも思えない態度でシラーズはそう返答した。

 シラーズの背後に控えている者たちの内、四十歳ほどの中肉中背の男がラカ・シェファのようだ。

 愛想に溢れた実に商人らしい、ふくよかな笑みを浮かべていた。

 一見、穏やかだがどこまでも計算ずくの表情だった。

 眼の下には隈が濃い。

 隠していても高利貸しなど営む欲深い心が透けて見える男だった。

 跪いて挨拶をしてくる。


「わたくしめはラカ・シェファと申します。王都にて手広く商いを営んでおります。商神のご加護あり富者になりましたが、この幸運を王道国のために使うべきと悟った次第。奇縁あってシラーズ王子様の支援をさせていただけるようになりました。今後とも、よろしく願います」


 ガイアケロンは鷹揚に頷いた。

 誇りを華々しく飾る材料として、金、地位、名誉が絶対に必要だと考える男は多い。

 一角でも欠けていれば恥とするなら、それは不完全な男であるという烙印を自ら押し当てることになる。


 武人は名誉を持っていても、それ以外は所持していない場合がほとんどだ。

 単なる貴族には地位があっても他はない。

 商人は金が余れば、他のものは手に入らないかと探る……。

 人は既に持っているものには飽きて、すぐに足りていないものを見つけ出し、手に入れるために狂奔する。

 ラカ・シェファという男もまた金に飽き足らず、彷徨っていた。


 同行者の中に思わぬ人物がいた。

 濃紺のローブを羽織った魔術師。

 サレム・モーガンだった。

 年齢は三十半ばほどだろうか。

 ゆったりとしたローブのせいで体格はよく分からない。

 身長はハーディアよりも少し高いぐらいだった。

 彼は魔学門閥の英才で強力な魔法を駆使すると言われているが、普段は王の警護や魔術の研鑽をしている。

 最前線に出ることは珍しい。

 彼は軽く会釈をして、ご機嫌麗しく幸いとだけ儀礼的に述べた後は沈黙した。


 最後に挨拶してきたのが剣聖ヒエラルクだった。

 薄い唇に不敵な笑みを浮かべた齢二十八歳の男。

 ガイアケロンよりも僅かばかり背は低い。しかし、一点の隙もなく鍛え抜かれた肉体だった。

 鉄線を束ねたような強靭な手足をしている。


 濃褐色の瞳は野心に輝いている。

 あえて危険に飛び込み、名誉と地位を手にしてきた男だ。

 数え切れないほどの人を斬り、あらゆる困難を乗り越え、剣一振りで全てを手に入れつつある。

 自信がないはずがない。

 怖いものなど何もないという雰囲気が自然と発散されていた。


 今のヒエラルクは剣技、体力、知見、そうしたものが絶頂に達しているとも言える。

 褐色の髪を短く刈っているため、額が良く見えた。

 青筋が不気味に浮きだっている。


「一年ぶりか。久しいな、ヒエラルク。父王のご機嫌はよろしいか。ついこの前も黄金で飾られた貢物や戦利品を届けさせた。気に入って頂けたか心配しておる」

「大王様が一番喜ばれる捧げものは勝利でございます。近ごろ、進撃が滞っていると聞き及びました。英雄ガイアケロン様らしゅうないことと、このヒエラルク驚いております」

「戦は簡単なことではない。必ず勝てるところまで持っていくには時間がいる」

「シラーズ様は実に覇気に満ちておりますぞ。道中では幾度か稽古をいたしました。まさに、これから伸びる方だと確信しております。目付け役としてはシラーズ様と協力してこのまま戦いに臨んでいただきたい」


 簡単に言ったものだが、つまりは合戦に及べという、限りなく命令に近い要求だった。

 目付け役とは王直属の役職である。

 そうした立場を有しているヒエラルクの提案を理由なく断ることはできない……。


 ただし、父王イズファヤートはあくまで勝利だけを欲しているのであって、細かい指令まではしてこない。

 いちいち指示がなければ動けないような無能は、とっくに消えてきた。


 よって王族たちには、こと戦争と占領統治に関してはかなり自由裁量が認められている。

 それは、ただ勝利することによってもたらされる権限だ。

 負ければ全て無になる。


「勝てない戦をして父王様に恥をかかせるつもりは我にはないぞ」


 ガイアケロンは悠然とした笑みを消して一転、無表情にヒエラルクへ言う。

 人を震え上がらせるに十分な迫力があった。

 しかし、ヒエラルクは逆に笑みを大きくさせた。薄い唇が真横に拡大していく。


「御心配はもっともなれども大王様の手足である王族様の使命は、何はともあれ、まずは戦うことでありましょう。勝つか負けるか、後方で思案していては何も始まりません。ここはシラーズ様の飛躍に力を貸してはもらえませぬか。これほど将器のあるお方が燻ぶっているのは戦士として忍びないのです。合戦となれば、あとはシラーズ様が才覚のまま動かれることでしょう。目付け役としてはそれを拝見したくもあります」


 ガイアケロンは考える。

 明らかにヒエラルクは戦闘を望んでいた。

 シラーズを格好の材料にしていた。

 父王イズファヤートから指示されているということもあるが、それよりヒエラルク本人が戦を楽しみたいという欲望を抑えられないとも感じる。

 剣一振りで成り上がったヒエラルクとは、もともとこうして方々の戦闘に参加しては勇名を馳せた男だ。


 シラーズやラカ・シェファも飢えた犬のように顔をギラつかせている。

 戦争で功名を遂げるために遥々と最前線まで来たのだ。むしろ当然の態度だった。

 ガイアケロンは説得できないだろうと半ば諦めつつも、秘中の秘である作戦を説明することにした。


「今、戦わないことには理由がある。隣接するリモン公爵領の守りは固い。特に迂回できないポロフ原野へ攻め込むならば圧倒的なほどの兵力が必須。しかし、それほどの力は我にはない。よって……偽装後退を仕掛けて敵を誘い込み、勝つ計略を立てていた。ここは我の考えに従ってくれないか」

「……敵が誘い込みに乗るのは何時頃になりましょうか」

「分からぬ」


 ヒエラルクはつまらなそうな顔で首を傾げる。


「では、こうしましょう。やはりここまで出征したからにはシラーズ様にポロフ原野まで出陣していただきます。敵とはどうしたものか目鼻で感じていただく。皇帝国が触発されて誘き出されたのなら、ガイアケロン様がかねてよりのご計画のままにすればよい。遠路はるばる辿り着いたシラーズ様をこのまま捨て置かれては、目付けとして容認できません」

「ただ戦いたいのならば他に戦線はあるぞ」


 これにはシラーズが尽かさず言葉を継いで来た。


「私は英雄と讃えられるガイアケロン兄上とハーディア姉上と共に戦うのが夢でした。この機会を逃すつもりはありません」

「……」


 ガイアケロンはシラーズの顔を眺める。

 つい先ほど会ったばかりの弟。

 どんな男なのか分からない。

 しかし、面構えだけを見るならイエルリングと同様の図太さと冷静さを兼ね備えているようにも思える。


 どうしてここで共に戦いたいと強硬に主張して譲らないのか……、その理由は英雄と呼ばれる兄から何かを学ぶつもりでいるのかもしれない。

 それに、やはり激しく勝利を欲しているとも感じる。

 武で出世しようと決心した人間の勝利への執念は、狂気といってよかった。

 黙り込んで思案しているガイアケロンにヒエラルクが重ねて語りかける。


「失礼ながら……シラーズ様のここまでの頼みを断るようでしたら、不本意でありますが大王様へは戦意の陰りを報告せねばなりませぬが」


 ヒエラルクの最終提案は、あくまでも戦端を開かせようというものだった。

 決め手がない時は動かない方が良いというのがガイアケロンの本音なのだが、しかし、承諾すると決めた。


 シラーズの狙いはともかくとして、ここはヒエラルクの懐柔が重要だった。

 王直属の男の信頼は大きい。

 断れば心証を悪くし過ぎる。

 もし父王にガイアケロンは怠惰か戦闘忌避の気配があるなどと報告されたら……非常に危険だ。

 これまで重ねた勝利と献上品によって築き上げた功績は一瞬で崩壊してしまう。

 取り返しがつかないかもしれない。


「目付殿とシラーズ王子がそうとまで言うのなら、このガイアケロン、むろん協力はする……。しかし、ヒエラルク殿。戦意うんぬんとは聞き捨てられないな。このガイアケロン、全軍の先頭となって敵へ突入したこと数知れず。そういえばヒエラルク殿と戦塵の最中に馬を並べたことはなかった。我の戦意とやらを目に焼き付けてもらうため共に突撃してくれるであろうな」


 ヒエラルクは眼を輝かせて満面の笑みを浮かべた。

 本望叶ったりという様子……。



 会見はそれで終わった。

 次いで歓迎の宴へと移る。

 ここからはハーディアが活躍する場であった。

 特にヒエラルクをこの上もなく優遇し、あらゆる美食と酒、それに女を与える準備ができている。


 ハーディアは思い切り艶やかな衣装に着替える。

 襞のあしらわれた白絹の服は肩から胸元にかけて肌が大きく出ている。

 滑らかで健康的な肉体の放つ色香は匂い立つようであった。


 そうした様子のハーディアは端正な薔薇色の唇に微笑みを湛えて、ヒエラルクの杯へ自ら葡萄酒を注いでやりもした。

 戦姫と畏敬され、芸術品のような美貌を持ったハーディアからそこまで持て成されて喜ばない男などいはしなかった。


 ガイアケロンはヒエラルクの精悍で鍛え抜かれた剣士の表情に、驕慢の色が浮かんだのを見逃さない。

 その眼には動物的な欲求が現れている。


 剣豪の中には精神を安定させるために女色を断つ者もいるらしいのだが、ヒエラルクはそういう男ではなかった。

 女官たちに合図して、ヒエラルクの相手をさせることにした。

 肉付きや性格は異なるものの、いずれも魅力的な妙齢の女性が十人ほど呼ばれる。

 もちろん、その体を使って客たちを悦ばせるためすぐ傍に侍った。

 

 ラカ・シェファの喜びようは特に大きかった。

 もともと女好きであったようだ。

 好色な笑みを浮かべて隣に座る女官の太腿を撫でまわしている。

 しかし、意外にもシラーズはやや不快そうな表情をしていた。

 女性に指一本触れようともしない。

 潔癖の性格なのか、女に興味が無いか……。

 酒と女は男の性格を露呈させるものだった。


 美酒を湯水のように蕩尽しつつ宴は進む。

 音曲が始まると、薄着の女官たちは妖艶な舞いを披露した。

 体を回転させるたびに裾は浮き上がり、しなやかな足が晒される。


 ラカ・シェファは脂ぎった表情で舞いを見つめているが、シラーズは白けたように冷たい視線を投げていた。

 ヒエラルクは享楽の甘美な味わいに耽り、笑っている。

 サレム・モーガンは酒が飲めないという理由を述べて、早々に中座してしまった。

 やがて陽は傾き、薄暮が訪れても宴は続けられた……。

 

 様々な欲望が絡み合い、戦争は激しく燃え上がっていく。

 ガイアケロンとハーディアは穏やかな笑みの裏で牙を研いでいた。 






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