第23話:東京にて。

藤坂が雅輝から言われた用事で、大阪に帰っている間、映画の撮影は、一旦小休止、

と言ったところで、東京へ行ってから全く休みが無かった真琴は、自分に与えられた高級ホテルの部屋のベッドで横になって、

自分のスマホをいじって、アプリでゲームなどをしながら、ぐったりと休んでいた。

が、普段なら自分の好きなアプリゲームで、オンラインの対戦相手に勝ったら、

「よっしゃー!」と、喜ぶほどだが、対戦に勝っても、嬉しくも何とも無い。


「はぁ…。飛鳥たち、今頃大阪で何してんやろか?今日は平日やし、今頃ガッコやろな…。」


と、心の中で呟いていた。


「ん、んー…。」と、大きく伸びをし、画像ファイルの中をいろいろ見ていると、大阪で、初めて藤坂と再会した時に、通天閣の前で4人で撮った写メが出て来た。


「飛鳥、エリカさん。元気やろか?」


何をしてても、思い浮かぶのは大阪のことばかり。


「そや、今日は久々になぁんも無い日なんやっ!たまには東京見物とでも洒落こもーやないかっ!」


と、独り言を言い、ベッドから起きて、風呂場に行き、バスタブにお湯を溜める。

そして、お湯が溜まったら、部屋着を脱いで裸になり、温まったお風呂の中に入り、

少しだけ、天井を見ながらバスタブの中でボーっとしていると、思い出したことがあり、こんな独り言を言う。


「そういやここんとこ、一人エッチもしてへんかったなー…。結局カレともケンカ別れしてしもたし、長いことエッチもしとらんなー…。」


そう言うと真琴の手は自然と、自身の一番大切な部分に伸び、バスタブの中で、指が動き始め、軽く、「あん、あん。」と、喘ぎ出した。

そして、そうすること約15分。真琴は、自分の一番気持ち良い場所を強く刺激することで、大きく身体を仰け反り、ビクンビクンとなりながら、絶頂に達した。

そして、少しバスタブの中で、ぐたー、となって、「ふぅ…。」と、ため息を付いた。


「はぁ、気持ち良かったわ。でもやっぱ直接の方がえぇよな…。」と、独り言を言う。そして、バスタブの中は、ボディーソープの泡だらけだったので、プールに潜るように、身体全体を、つるん、と、バスタブの中に沈め、

30秒ほど息を止め、長い髪の毛やら身体のあちこちまですばやく洗った。

そして、お湯の中から、「ぷはぁっ!はぁ、やっぱこれが一番気持ちえぇわ!」と言い、バスタブから出て、バスローブを巻いて、狭いホテルの洗面所で身体を丹念に拭いたあと、少しだけ、お気に入りの香水を拭きかけ、大阪から持参した、毎日使ってる自分のドライヤーで、その長い髪の毛を乾かし、いつも学校へ行く時と同じ髪型にセットし、メイクはしないで、眉毛だけ少し描いて、ほぼスッピンのまま、風呂場から出て来た。


そして、部屋に戻って、大阪から持って来た普段着の中から、なるべく目立たない、地味な春物のファッションに身を包み、外出する時は、いつも身に付けてるポーチを肩から掛け、スマホと財布、そして、貴重品だけの、最小限必要な物だけを持って、ルームキーを持ち、忘れ物は無いか、再度確認し、部屋から出て、エレベーターに乗り、一階まで降り、フロントスタッフにルームキーを預け、「外出して来ます。」と伝え、真琴は一人、ホテルから出て行く。


そして、ホテルから一番近いJRの駅まで歩いて行き、山手線の切符売り場まで行く。

路線図を見上げながら、「んー、どこに行こうかな。」と、一人で考えていた。


「渋谷は何か苦手やしなー…。新宿の高島屋でも行くか…。」


と、独り言を言い、新宿までの切符を買って、改札機を通り、新宿方面の電車に乗った。


「山手線、久々やなー…。やっぱ大阪と違て電車もオシャレで綺麗やわ。」

などと、心の中で思いながら、窓の外の風景をボーっと眺めながら席で座っていると、電車はすぐに新宿駅に着いた。


新宿に着いた真琴は、南口の改札を出て、新しく改築された甲州街道の歩道を渡り、

これまた新しく出来たバスターミナル、「バスタ新宿」の前を通って、高島屋方面へと歩いていく。


高島屋に着いた真琴は、ひとまず化粧品売り場に向かい、自分の好きなブランドのコーナーへと行って、売り場で店員と話しながら、いつも自分が使ってる化粧品を説明すると、そのシリーズの新商品が最近発売されたが、いかがでしょうか?と薦められたので、試してみてもいいですか?

と聞くと、店員は、笑顔で快く受けてくれ、真琴を席に座らせ、軽くメイクする。

出来上がった自分の顔を鏡で見た真琴は、今まで使っていた古い商品より、新しいモノを気に入ったようで、店員に、この商品を下さい。と言うと、店員は、かしこまりました。と言い、

商品を丁寧に袋に詰めてくれたので、真琴は、自分のクレジットカードを出し、その商品を購入し、少しウキウキ気分で、今度はファッションフロアへと上がって行った。


ファッションフロアに着いた真琴は、「うわ~…。広っ!」と、普段利用している、難波の高島屋とは、広さも規模も何もかもが違うことにビックリし、1~2時間ほど、ファッションフロアで、うろうろしたあと、その中でも、自分お気に入りのティーンズブランドの店に入り、新着の初夏モノの洋服上下をセットで、これもクレジットで支払い、とりあえずあちこち動き回って疲れたので、レストランフロアまで上がり、少しだけ、一人でカフェでお茶をして、最後に、CDショップに寄り、自分の好きなアーティストのアルバムを一枚だけ買って、高島屋をあとにし、外に出て、木目調の、電車が走る線路が見える広々としたデッキまで出て来て、ガラス張りの壁にもたれ、しばらくの間、風に吹かれながら、ボーっと、色とりどりの電車が行き交うのを眺めていた。


そして、スマホを取り出し、時間を見ると、時計は、既に夕方になっており、西日が差し掛かっていた。


「晩ご飯、どうしよっかなー…。ホテルの食事とかロケ弁はもう飽き飽きやしなー…。」


などと、ぼそぼそと独り言を言っていると、スマホの着信音が鳴ったので、真琴が電話に出る。


「はーい、もしもーし。」

「まこか?僕や。」

「あ、浩兄、どしたん?仕事か?」

「や、そんなんちゃう。今、藤坂君大阪戻ってるやろ?」

「うん。で、お前はどうしてんかいなー、思てな、んで電話した、ちゅーわけや。」

「ありがとう。」

「で?お前いま、ドコにおるんや?」

「ドコ…、て、新宿や。」

「新宿?誰と?お前、こっちに友だちとかおったか?」

「いんや?一人で。」

「一人で?」

「うん。」

「だって、最近な、仕事仕事ばっかで疲れててんもん。ウチかてたまには休みたいわ。」

「そうか。」

「ほんで?新宿のドコで何してるんや?」

「さっきまで高島屋で、思い切りショッピング楽しんでたトコや。」

「そうか。で、いまは?」

「いま?いまは、電車がたくさん見えるデッキのトコで、電車眺めながらボーっとしとった。」

「なんや、黄昏とったんかいな。」

「ちゃうちゃう、晩ご飯、どうしよっかなー、って思てたトコや。最近毎日、ホテルの食事やロケ弁ばっかで飽き飽きしとったからな。」

「そうかそうか、まこ、お前、コッチ来て、東京タワーとか、まだ行ってないやろ?」

「東京タワーどころか、休み、今日が初めてやしな。」

「そうやわな。」

「どや、僕とあちこちドライブせぇへんか?」

「は?えぇんか?」

「えぇって、それくらい。」

「奥さんに怒られへんか?」

「何言うてんねん。アホが。」

「ま、まぁ、浩兄がいいんやったら…。で、私、どこまで行けばいいん?」

「んー、そやな、お前、いま、新宿の高島屋やろ?」

「うん。」

「僕はまだ支店やけどな、もう今日の仕事は終わったから、今から僕の車でお前を新宿まで迎えに行くし、そやな、ルミネの前辺りででも待っててくれるか?」

「分かった。」

「夕方やし、道路混んでるかもしれんから、新宿近付いたらまた電話するわな。」

「うん、ありがとう。」

「ほな、あとでな。」

「うん、あとで。」


そう言って2人は電話を切った。

そして真琴は、浩輝に言われたように、ルミネ方面へと歩いて行って、車が止められそうな場所を確認してから、浩輝が到着するまでの間、ルミネの中をブラブラしていた。


すると、30分ほどして、再び電話が鳴った。


「はーい。」

「お、まこか?僕や。」

「浩兄、今ドコ?」

「あと5分ほどでルミネ着くで。」

「分かった、外で待ってるわ。」


そして、外で待つこと約5分。真琴の前で、一台の高級日本車が停車した。


「まこ、お待たせ。はよ乗れ、信号変わる。」

「あ、う、うん。」


真琴が、今日買い物した袋を持って、浩輝の車に乗ると、その荷物を見た浩輝が一言。


「うおっ、おま、どんなけ買いもんしたんや?」

「どんなけ、って、好きなブランドの化粧品と、初夏用の上下の服、んで、アルバム一枚だけや?」

「いくらくらい使ったんや?」

「さぁー…、全部カードやったからなぁ。4~5万は使つこたんちゃうかな?」

「お前なぁー…。まぁ、お前の家も会社やってるし?お前も飛鳥や響香と同じで帝塚山のお嬢様やし、小学校の途中から読モやってるから?クレカの一枚くらいは持ってて当たり前やし、4~5万とかは普通に使うやろうけどな?

ごく普通の一般サラリーマン家庭の高校1年の小遣いって、いくらくらいか知ってるんか?」

「知らん。」

「知らん、って、お前なー。」

「まぁえぇわ。東京まで来てお前に説教するつもりは更々無いし、お前も毎日毎日、撮影で疲れてんやろ?」

「うん。」

「そんな時は、我慢せんと、使いたいだけ自分の好きなもんおたらえぇ。」

「って、そんなん言うけどな?浩兄。」

「何や?」

「今、大阪で飛鳥たちと一緒に暮らしてるエリカさんなんかやで?」

「あぁ、青島貿易の娘さんな?」

「うん、あの子なんか、ウチらよりショッピングする金額のレベルなんか全然ちゃうんやで?」

「そら、まぁ、天下の青島貿易のご令嬢様やからな?」

「エリカさんってな、めちゃアニオタやねん。」

「アニオタ…、って、あぁ、アニメオタクか。」

「うん。」

「アニオタ、て言うんや。」

「そや?でな、こっち来る前の、鈴ヶ丘最後の日な、エリカさんと2人で帰った時な、天王寺にアニメ専門ショップあるの知ってるか?」

「そんな店あるんか?」

「あるで?」

「で?」

「でな?エリカさんな、アニメのDVD-BOXとか声優さんのライブDVDとかいろいろな、7万以上使った、て、ウチに言って来たあとな、一ヶ月で、カードで5万超えたら、青島社長に怒られる、って、嘆いとったわ。」

「あははは、そんなことあったんか。ってか、アニメのDVD-BOXって、そんな高いんか?」

「そうらしいわ。」

「大変やな、オタクも。」

「そやなー。で、今はドコ向かって走ってんのん?」

「銀座や。」

「銀座?」

「そや?お前、腹減ってるやろ?」

「うん。」

「そやから、銀座で思いっきり美味しい食事、食べさしたる。」

「うわーい!」

「お前、何が好きや?」

「何、て?」

「例えば、和食とかイタリアンとか、肉とか寿司とか。」

「何でも食べるで?」

「そうか。」

「うん。」

「ほな、肉行こか。」

そして、銀座に着いた浩輝の車は、その辺のコインパーキングに駐車し、真琴は、今日買い物した荷物を車の中に残して、浩輝に付いて行った。


そして2人は、いかにも高級そうな、日本レストランの入り口で止まった。

そこで、浩輝が一言。


「ここな。僕が時々通ってる、銀座でも有名な料理店や。かなり高級やねんぞ?」

「そ、そうなん?そんな店にウチなんかが入ってええのん?」

「えぇってえぇって。ほな、入るで。」


そう言って浩輝は、店のドアをガラガラと開けると、威勢の良い声で、「へいらっしゃい!」と言う、店員の声がして、真琴がビクっと怯えた。


「お、若社長じゃありませんかっ!ご無沙汰でした。」

「やぁ、大将、しばらく。」

「おや?そちらのお嬢様は?」

「あぁ、知り合いの子で今、用事で大阪からコッチ来てるんでね。大将の店に食事でも、て思て、連れて来た、ってワケ。」

「そうでっか、おじょうちゃん、可愛いやないかっ!」

「あ、ありがとうございます。」


珍しく真琴がタジタジしている。


「ここの肉な、最高級のA5ランクの神戸牛使てるから、めちゃ美味しいねんで?」

「そ、そうなん?」

「そや?」

「大将、この子に、一番美味しい神戸牛のステーキ、食べさしたってくれるか?」

「はいよっ!」


そして、しばらくして、2人の前に、ドンっと、美味しそうなステーキ定食が出て来た。


「さぁ、まこ、食べてみぃ。」

「う、うん。ほ、ほな、頂きます。」


と言い、真琴は、フォークとナイフで、ステーキを切り、パクっと一口。

すると、口の中には、芳醇な味わいで、さりげなく味付けされた神戸牛の美味しさが広がり、思わずこんなことを言った。


「んー!浩兄、ウチ、こんな美味しい神戸牛、食べたことないわー。」

「そやろー?」


そして、店内で2時間ほどかけて、これからの撮影の話しなどもしながら、ゆっくり食事したあと、

浩輝が大将に、「今日はありがとう。」と言い、カードで清算して、2人で店を出た。


「ありがとー、浩兄っ!あんな美味しい食事、むちゃ嬉しかったわ!」

「あ、そや、飛鳥には内緒やで?」

「は?」

「僕な、あいつにもまだあの店は連れてってへんねんやからな。」

「そうやったんや。うん、分かった。ありがとう。」

「んー、今、何時や?」


と、浩輝がスマホの時計を見る。


「うお、もう10時回っとんやんけ。まこ、今夜はどうする?」

「今夜、て?」

「このままホテル帰るか?」

「え?東京タワー連れてってくれるんちゃうかったん?」

「今から行っても多分展望台の営業時間間に合わへんわ。」

「そうなんや。」

「まぁ、藤坂君が戻って来るまでは、撮影も中断やからな、まだ休みはあるし、また今度な。」

「うん、今日はありがとう。」

「ほな、ホテルまで送るからな。」

「うん。」


そう言って浩輝と真琴の2人は、車を止めていたコインパーキングまで戻り、真琴が長期滞在しているホテルまで送っていき、エントランスに着くと、ドアマンが車のドアを開けたので、

降りる前に、真琴が浩輝に向かって一言。


「浩兄、今日はありがとう。ウチ、また仕事頑張るわ。」

「おう。ほな、お休みな。」

「うん、お休みー。車、気を付けてや。」

「分かってる、って!」


そして、浩輝の車を見送った真琴は、フロントに向かい、ホテルスタッフから、自分の部屋のキーを受け取り、エレベーターで高層階にある自分の部屋まで戻って、部屋に入り、荷物を置いて、パジャマに着替えて、疲れていたのか、すぐに眠りに付いた。

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