第24話:千春が帰ったあと。

先ほどまで飛鳥の家に居た千春は、飛鳥に送られて、上町線の姫松停留所まで戻り、

天王寺駅前行きの電車が来るのを待っていた。

そこで、飛鳥が一言。


「ねぇ、先輩?」

「ん?何?」

「朝って、いつも何時頃天王寺に着く地下鉄でガッコ来てるんですか?」

「あぁ、えと、だいたい、8時前に天王寺には着いてるよ。」

「そしたら、明日はたまには私とガッコまで行きませんか?」

「え?あぁ、うん、いいよ?」」

「じゃあ、東三国の駅出る時、朝、メール下さいね。」

「うん、分かったよ。」


と、話していると、天王寺駅前行きの電車が到着し、2人の前でドアが開いたので、

千春はその電車に乗って、飛鳥の方を向き、笑顔で一言。


「じゃあまた明日、天王寺でね。」

「はい!気を付けてくださいね。」

「うん、飛鳥ちゃんも。」


そこへ、運転手から車内アナウンス。


「扉を閉めます。」


「じゃ、また明日。」


そう言い終わると、運転手はドアを閉め、千春は笑顔で飛鳥に手を振り、

飛鳥は、その電車が見えなくなるまで見送っていた。


そして、見えなくなってから、さっき2人で歩いて来たいつもの家までの細い路地を歩いて帰り、玄関のドアを開け、

「ただいまー。」と、元気な声で入って行くと、翠とエリカが笑顔で出迎えてくれた。


玄関で、飛鳥は、今日あったことを、エリカに報告しようと思い、こう切り出した。


「ねぇ、エリカさん?」

「なぁに?飛鳥ちゃん。」

「ちょっと、私の部屋に来てもらえます?」

「えぇ、良いわよ?」

「じゃ、行きましょう。」

「あ、お嬢様方、ご夕食は…。」

「あー、うん、私の部屋でエリカさんと一緒に食べるから。」

「かしこまりました、では、すぐにお持ち致します。」


そう言うと翠は、準備していた夕食を2人分、飛鳥の部屋に持っていった。


そして、部屋では、飛鳥がメイデイの音楽を流しながら、エリカと食事をしていた。


「で、お話しって、なぁに?飛鳥ちゃん。」

「あぁ、はい、その…。」

「なぁに?もったいぶるわね…。何かいいこと、あったんでしょう?」

「は、はい。あ、あの、その、エリカさんって、藤坂さんが男性経験初めての相手、でしたよね?」


と言う、飛鳥の大胆質問に、食べかけていた食事を喉に詰まらせ、むせてしまい、

自分の胸を軽くトントンと叩きながら、ケホっ、ケホっ、と、咳をし、

口の中に入っていた食事を、一気にゴクンと飲み干した。


「ふぅ、はぁ~…。あ、飛鳥ちゃん!!い、いきなり何を言い出すのよ!!

ビックリしてお食事喉に詰まらせてしまったじゃない、もーう…。ふぅ…、ちょ、ちょっと、待ってくれる?お茶飲ませて?」

「あ、は、はい、ごめんなさい。」

「そ、そうだけど、それがどうかしたの?」

「男の人と初めてエッチした時って、どんな感じでした?」

「どんな、って…。んー…、一言じゃ言い表せないわ?そんなの、人それぞれ違うでしょうし。」

「そっかー。」

「まさか、飛鳥ちゃん、今日さっきまで鷹梨君居たけど、まさか、処女卒業したんじゃ…。」

「や、まっさかー。そんな、お父様の逆鱗に触れるようなこと、出来ないですし、

そんなことしたら私、この家から勘当されて家を出なきゃいけないじゃないですかっ!!」

「そ、それはそうよね…。じゃあ、キスくらいは、したんでしょう?」

「キスですか?はい、しました。」

「どうだった?2回目のキスは?」

「はい、初めて神戸でした時より、ものすっごく気持ち良かったです!!」

「良かったわねー。で、キスだけ?」

「い、いえ、そ、その、私、あまりにそのキスが気持ち良かったものだから、私、自分の手で、

その、その、その…きゃー、恥ずかしくて言えないです~!!」

「なぁによ、そこまで言っておいて!!さてはエッチの手前まではしたんでしょう?」

「は、はい。私、気が付いたら先輩の手を持って、私、自分で、先輩の手を誘導して私の胸、揉ませてました。」


と言う、またも飛鳥の大胆発言に、エリカはその小さな手に持っていたスプーンを、思わず床に落とし、「へ?」と言い、ボーっと、飛鳥の方を見つめ、そのままフリーズしてしまった。


「ちょ、え、エリカさん!スプーン!スプーン落としましたよ?!」


と、飛鳥が言い、エリカのスプーンを拾い、ティッシュで拭いて、テーブルの上に戻し、エリカを見ると、エリカはまだ固まっていたので、エリカの肩を揺さぶり、


「エリカさん、ねぇっ!!てば!!」


と言う、飛鳥の言葉に、ハっと我に返った。そして、「えーー??!!」と、大声で驚いた。


「あ、飛鳥ちゃん、自分から鷹梨君に、自分の胸、揉ませちゃったの?」

「は、はい。」

「な、何かあなた、最近変わって来たわね、初めてスタバで会った頃より…。」

「そ、そうかな。」

「はぁー…、今ここに、真琴さんと響香さんの2人が居て、その話しを聞いてたら、

2人も多分私と同じようにフリーズするわよ、きっと。」

「そかな。」

「えぇ。特に幼馴染の響香さんは、誰よりも驚くと思うわよ?」

「はぁ…。」

「恋の力って、凄いわねー…。」

「ね、ねぇ。触らせたのって、胸だけよね?」

「は?そ、そうですけど?」

「まさか、女の子の一番大切な場所は、触らせてないわよね?」

「も、もちろんですよ。」

「あ、で、でも。」

「でも、どうしたの?」

「先輩のズボンが、凄く膨らんでました。」

「そりゃーそうでしょう!!男性はみなそうだもの。」

「藤坂さんも、ですか?」

「当たり前じゃない!!って言うか、神戸でのデートのあとから、飛鳥ちゃんって、何だか変わって来たわねー…。響香さん風に言えば、"大人の階段を一歩一歩上ってる"って、トコかしら?」

「ですか?」

「そうだよー。」

「あのあとも何か約束とかしたんでしょ?」

「あのあと?」

「停留所に送ってった時。」

「あぁー…、さすが、鋭いですね。はい、明日の朝、天王寺駅で待ち合わせて一緒にガッコ行きましょう、って言いました。」

「凄-いっ!!そこまで言えるようになったんだ!!おめでとう、飛鳥ちゃん!!」

「いや、あは、あははは。どうもです。」


そして2人は、千春の話題もちきりで食事を済ませ、それぞれ、食べ終えたトレーを下の食堂まで持って行き、翠に、「ごちそうさま。」と言い、再び飛鳥の部屋に戻った。


「そっか、そんな約束したんなら、明日は私、飛鳥ちゃんと一緒には学校、行けないわね。」

「えぇー?わ、私一人で行け、と?」

「そりゃそーでしょうに。そんな、デートの邪魔するほど野暮じゃないわよ、私も。」

「ほ、ほな、エリカさんはどうするんですか?」

「私?私は、そうね、たまには響香さんとでも行きましょうか?」

「え?響香ちゃん、ですか?あの子、ガッコ違いますよ?

それに、天王寺駅前の一つ手前の阿倍野駅で降りちゃいますけど…。」

「うん、それでもいいの。」

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えますね。ありがとう、エリカさん。」

「いいえー。じゃあ私、まだ今日の課題とか全然ですし、自分の部屋に戻るわね。」

「はーい、お休みなさーい。」


そして、エリカは、自分の部屋に戻って行った。


エリカが自分の部屋に戻ってからしばらく経って、飛鳥は、響香に電話していた。


「あ、もしもし?響香ちゃん?私、飛鳥。」

「どしたんや?こんなおそぉに。珍しいやんか。」

「あんな?明日の朝のことやけどな、私な、ちょい用事あってな、早よ家出なアカンのよ。」

「そうなんや、珍しいな。」

「でな、エリカさん、朝一人になるから、家に迎えに来たってくれへんか?」

「かまへんで?」

「で、響香ちゃん、阿倍野駅で降りるやろ?」

「そらな。ガッコ、谷町線乗り換えなアカンからな。」

「うん、そやからな、阿倍野駅まででえぇから、エリカさんと一緒に通学したって?」

「うん、分かったわ。」

「そのあとの話しは、エリカさんのスマホに直接かけて、本人から聞いてくれるか?」

「分かった分かった。」

「ほな、私、今夜はこれでな。エリカさんも今、家におるから。」

「ほいほい。」

「ほななー。」

「はいよー。」


そう言って、飛鳥は電話を切った。

そして、電話を切った飛鳥は、残ってた課題をこなし、明日に備えて、

今夜は早々と寝てしまった。

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